インタビュイー:株式会社ACROVE 代表取締役 / 社長執行役員CEO 荒井俊亮様株式会社ACROVE(2020年に株式会社アノマから商号変更)は2018年の創業から現在まで、「流通」を軸にCX事業(EC売上最大化支援事業)とECロールアップ事業で飛躍的な成長を遂げている。CX事業は累計で約200社の企業の支援を行っており、2022年に開始したECロールアップ事業では、家電・リラックスグッズ・美容家電・カーパーツ・ECサイト構築会社・保険保証サービス事業といった幅広い領域でのM&Aを推進。2年で16件のM&Aを実現し、連結従業員数も約240名と、その勢いは留まるところを知らない。代表取締役の荒井氏は学生時代に当社を創業。プロテインのEC販売事業を開始し、約1年で年間売上5,000万超のブランドに成長させた。その後、コロナ禍を機に『社会的価値の大きな事業をやり、100年以上遺る企業を創る』と決意。全てのビジネスの肝でもある「流通」に軸足を置き、EC事業に着目。EC売上最大化支援である現在のCX事業(コマーストランスフォーメーション事業)を開始したという。100年の単位で遥か先を見据え、広い視野と高い視座からビジネスを突き詰める荒井氏に、過去から未来までの話を聞いた。学生時代のプロテイン販売から、現在のACROVEの姿に至るまで「100年以上続く企業」を目標として見据え、躍進を続けている株式会社ACROVE。日本と世界、歴史から未来へ。常に広い視野を保つ荒井氏だが、創業当初は「趣味の延長」に近い感覚だったと語る。荒井氏:最初は「プロテインの製造・EC販売を始めてみようかな」くらいの、趣味の延長で始めましたね。というのも、元々、陸上駅伝をやっていたので、自分や仲間が欲しいと思うものを作って販売したら喜んでくれるかなと感じました。その前にも、個人事業でメディアだとか、人と人を繋ぐようなビジネスだとか、ECとかいろいろやっていました。そういう経験もあって、あまり事業を創るっていうことにはそこまで抵抗感も心理的ハードルも高くなかったのかなと振り返れば思います。当時は、そこまで逆算してサービスを作るという考えもなく、純粋に良いと思えるものを世の中に提供しようという、そのくらいの気持ちでした。プロテインの製造・EC販売は順調に成長し、初年度で5,000万円の売上を達成したという。学生起業初年度としては満足してしまいそうな状況で、荒井氏の考えに変化をもたらしたのは、コロナ禍に沈んだ社会で覚えた焦燥感だったという。 荒井氏:それまでは、好きなこと・やりたいことをずっとやっていたのですが、そればかりやっていてよいのか?という疑問は自分の中にありました。コロナウイルスの蔓延が広がったタイミングで、自分の今後の人生を見つめなおした時に、「自分は社会の役に立ってないんじゃないか?何者でもない人間なんじゃないか?」と思えてきたのです。世界中の皆がこんなに困っているときに、自分は何の役にも立つことが出来ない。考えると、世界的・日本的な危機のような事象は10年に1回、30年に1回のようなペースで発生している。これから、100歳ぐらいまでは平均年齢が上がると言われている中で、残りの人生の中でも少なくとも4・5回はまたこういうのが来るわけじゃないですか。 そのときに、ずっと何も出来ない側でいいのか?傍観するだけは嫌だなっていうのはありました。誰のためにもなれず、無力感にさいなまれるのは嫌だなと思いました。せっかく生まれたなら、誰かのためになりたいと言ったら大げさかもしれないですが、そんな社会的意義のある組織・サービスを作りたいと感じました。事業規模の拡大を見据えた、「流通を獲る」という意識組織の成長、事業規模の拡大を決意した荒井氏がまず意識したのは、「流通を獲る」ことだったという。そして、「流通」という土台を作ることは、あくまでも今後の成長のための必要要素の一つに過ぎないのだと荒井氏は語る。 荒井氏:個人事業から組織の事業として拡大していくにあたって、最初に意識したことは「流通を獲る」ということです。販売も含めた流通網を極めたらどんな事業をやっても上手くいくと思います。販売というものが軸にあれば、どんな事業を行うとしてもある程度は、安定的に拡大することは出来る。どんな領域にも広げていける。規模を大きくするためには、流通・販売をビジネスの真ん中に置くっていうことは結構大事だと思っています。ソフトバンクさんや光通信さんといった、日本を代表する企業さんもそうだと思いますが、ビジネスの軸にあるのは流通・販売だと思います。例えば、ソフトバンクさんも元々は、ソフトウェアを仕入れて売るっていう卸の販売を行っていた。携帯キャリアとして回線を販売する、スマートフォンを仕入れて売るという、基本的には販売業を軸に置いているじゃないですか。傘下の Yahoo!もプラットフォームがあるので、それをを活用して全体が更に伸びる事業を買収している。自社のプラットフォームを活かせるからこそ、検索で上に来て何が売れるかを追求できる。流通プラットフォーマーとして、流通網を自社で持てているということが重要だと思っています。しかし、私たちがいきなりAmazonさんや楽天さん、Yahoo!さんのような、国民の皆が使っているプラットフォームを今から後発で作るのは難易度が高いので、まずはEコマースの周辺領域からやっていこうというイメージです。 ACROVEを支えるCX事業とECロールアップ事業の二本柱ACROVEの軸として顕著に数字を伸ばしてきたCX事業。その背景には、「コロナ禍」という特殊な状況を見逃さず、属人化されがちだったEC支援の領域を組織として行った先見がある。そして、流通のプロフェッショナル集団としてのスキルと経験を活かして様々な分野の会社を仲間として、事業を伸ばしていくECロールアップ事業。それぞれの事業に対する思いや考え方を伺った。 荒井氏:CX事業を始めた時、ECサイトの各分野を取り扱う企業はありました。例えば、ソフトウェア制作を行う会社、あるいはコンサルティング支援を行う会社。どこの企業も、社員数としても、5人とか10人とかの少人数でやっていて、あくまでも個々のお取引先の特定の課題に絞って深く支援しているようなイメージでした。または、月5万円等の低価格でコンシェルジュのように何でも電話やメールでライトにご相談を受けるような支援体制も多いです。当時は、オンラインでの面談が行えなかったので、現場に深く入り込むか、電話・メールでライトにお手伝いするかの2択だったのだと思います。そのため、一気通貫でサポートするような会社はいなかったです。それが、コロナウイルスによってオンライン面談ツールが一気に日本全国へ普及したことで、CX事業の領域の可能性が一気に伸びました。物理的な距離のある地方の事業者さまであっても現状や課題を正確に把握しやすくなりました。その結果、ご支援の精度もあがり、弊社の事業も一気に伸びました。当時、100名以上の規模で、お客様のECのお悩みを一気通貫でご支援する形態や、個々の会社様だけでなくてEC業界全体を推進するという企業がいなかったので、弊社が早くその波に乗ることが出来たと感じております。弊社のお客様は、都心部だけでなく地方の会社様も半数を占め、業界も多岐に渡っているのはそういった背景があります。首都圏と地方にバランス良くクライアントを抱え、多岐に渡る業界に向けてEC支援を行っているACROVE。安定的な収益性を確保できている現状であっても、EC支援のマーケットだけでは満足しないと荒井氏は語る。2022年にはECロールアップ事業をスタートさせ、こちらも目覚ましい速度で成長を続けている。 荒井氏:ECの領域だけに絞って事業を伸ばしていこうと思っても、どうしても限界はあります。EC支援という分野だけでは、マーケットは巨大とは言えないので、自分たちのバランスシートをもっと活用して違うビジネスをやらないといけないなと思っていたのがコロナによる混乱が落ち着き始めた2022年頃です。その頃、EC市場における事業承継の必要性が高まってきていました。というのも、インターネット関連企業が日本国内で一気に増えた2000年頃にEC事業を始めた方々が当時30歳前後と考えると、現在55歳前後を迎えています。今後の長期的な事業戦略を考える際に、事業承継やM&Aという選択肢も挙がってきていたのです。また、スタートアップへの資金調達環境も良くなってきていました。また、そこで、弊社のCX事業で磨いてきたEC運用スキル、蓄積されたECデータ用いて受け継いだ事業の価値を向上する現在のECロールアップ事業をこのタイミングで開始していきました。 ECロールアップ事業を始めるまでは、自社ブランドはプロテインのみであった。そこから2年で16件のM&Aを実現し、連結従業員数も約240名と、その勢いは留まるところを知らない。家電やベビー&キッズ用品、リラックスグッズ、カーパーツ、ECサイト構築事業、保険保証サービス事業、直近では顧問サービスととにかく幅広い商材を扱っているが、そのどれでも自社で磨いてきたスキルは活かせるという。今後は、その領域をさらに拡大していくと荒井氏は語る。 荒井氏:直近は引き続き、ECを軸に、小売り事業者さまへ価値貢献が高いサービス拡充と質の向上を目指していきます。現状、想定していたスケジュール感で領域を拡大してこれているので、第一目標までは近づいてきたと考えています。将来的には、ECモールの運営やエンタメ、人材という領域にも拡大していきたいです。 前編では、これまでのACROVEが歩んできた道のりと、現在の事業内容と構想を中心にお話を聞いた。後編では、荒井氏がACROVEに描く企業の在り方。そして、「100年以上続く大企業」に向けて、今後のACROVEが歩む道のりの具体的な展望について伺っていく。