インタビューイー:土地家屋調査士法人COLORS 代表 中村章吾様COLORS・中村代表のインタビュー記事は前後編の2回に分けてお届けします。2010年に創業された土地家屋調査士法人COLORSは、土地/不動産の場所や形状、用途といった物理的状況を調査・測量して、図面作成や不動産表示に関する登記申請支援などを手がけている。長年、国の委託業務をはじめ多くの戸籍調査や相続調査に携わる中で、代表社員である中村章吾氏は、よりスムーズに相続手続きを行えるサービスの必要性を感じ、自ら『らくらく相続図』を立ち上げた。これは、戸籍謄本をOCRで読み込み独自ロジックによる解読で、「法定相続情報一覧図」の作成まで行う戸籍解析システムだ。『らくらく相続図』の導入実績は同業者を中心に着実に積み上がり、金融業界や大手企業への導入提案も進んでいる。新規事業「らくらく相続図」の立ち上げまでに至った背景を伺った前編に続いて、後編は「らくらく相続図」を通して得ることができた成果や、中村代表の実体験を踏まえた新規事業の立ち上げに必要な考え方について話を聞いた。新規事業から広がる挑戦の幅と社内の活気弁護士や司法書士をはじめとした士業の方を中心に、「らくらく相続図」の利用は広まっていった。また、リコーグループである株式会社PFUとの共創をはじめとした認知拡大の戦略を展開することで、金融機関など様々な業界への提案機会を得ることができたと中村代表は語る。中村代表:初めは、私の知人が多い弁護士や司法書士など隣接業者の方に「らくらく相続図」を紹介しておりました。その後、戸籍謄本を人の手で解析しているその他の業界、特に金融機関様にも「らくらく相続図」の認知拡大を図れたらと考えました。そのためまずサービスLPの作成や、DX展に出展するなど自社で実施できる様々な戦略を展開しました。加えて、たとえば官公庁や銀行などとお取引があるPFU様のような協業企業様からのご紹介や、当社のプロダクトを高く評価いただき代理販売を行ってくださる企業様との業務提携などで、当社だけでは接点が持てなかった金融機関様、大手企業様へ提案の機会がいただけております。金融機関様からは、やはり課題をお持ちでいらっしゃったため、大変な驚きとともに、好評を得ることができました。現在は、金融機関様をクライアントに持つBPO関連の企業様と積極的に商談を行っており、実際にプロジェクトを立ち上げるなど新しい共創に向けて画策をしております。サービスの認知向上や事業拡大の他にも、新規事業「らくらく相続図」は社内の活性化にも繋がったと中村代表は振り返る。中村代表:新規事業に挑戦したことで社内メンバーのモチベーションがとても高まったと感じております。サービスを日々アップデートする中で、お客様からのポジティブな反応が徐々に増えたり、必要としてくださるお客様の数がどんどん拡大していったり、そんな瞬間が味わえるというのがメンバーのやりがいに繋がっていますね。また、どのようなサービス訴求の仕方がいいのか考えプレゼン資料を何回も見直すといった日々の改善努力がお客様に伝わって評価が得られる、そんな経験もチーム全体にとって非常に貴重なものとなっています。本業とは異なるITサービスを通して、お客様が反応してくれる、喜んでいただけることをメンバーは新鮮に感じてくれていて、入社時からは想像していなかった業務に私と一緒に楽しみながら挑戦してくれている状況です。あとは有難いことに、「新しいことに取り組んでいる企業」とご認識いただいた上で当社の求人募集に応募してくださる方が増加しております。同業他社と比較すると、会社の規模や事業内容は大差ないかもしれません。しかし、経営者としては、その他の面で「ユニークな取り組みをしている」と差別化を図れていると思います。新規事業の立ち上げに必要な考え方リリース後の現在も、顧客からのフィードバックをもとに積極的な改善や新機能の追加を行い、導入実績も着実に積み上がっている「らくらく相続図」。新規事業の立ち上げから、現在の導入提案までに意識していたことを中村代表に伺った。中村代表:イノベーションを起こす際に、我々のような後発の企業が市場に打って出るためには「世の中にないもの」という点を強く意識する必要があると感じます。まだ誰も手を付けていないニッチなビジネス領域は未だに存在するはずで、そこを探っていくことで、我々専門家ならではの発見が可能であり、新しい価値を創造できる、と「らくらく相続図」の立ち上げを通して実感しております。また、イノベーションを起こすために必要なこととして、何かと何かの掛け合わせを起点に挑戦していくことが非常に重要ではないでしょうか。そのため、私自身も色々なスタートアップ企業の成功事例やプロジェクトを大変参考にしながら情報収集を行っている状況です。最後に、中村代表の実体験を踏まえて、新規事業の立ち上げを検討されている方へのアドバイスをいただいた。中村代表:「お金を稼ごう」と考えるのではなく、「本当に人の役に立つものを作ろう」という想いの方が事業は上手く進みやすいです。自身の欲のために新規事業に取り組むと、問題が生じる度に「これは儲からないな」「しんどいな」というネガティブな感情に引っ張られてしまうため、良いサービスは生まれないと感じています。弊社の「らくらく相続図」の立ち上げ経緯を突き詰めると、業界特有の課題であるにも関わらずずっと有効な手段がなかったことに対して、何とかしたいという想いで生まれたものなので、弊社のチャレンジが新規事業の立ち上げを検討している方にとって参考になれば幸いです。また、このような取り組むべき領域を発見するためには、日々の生活で本当は不便だけどその状態に慣れてしまっている、または仕方がないと諦めてしまっているところを違う角度で見つめ直すことが大切ですね。例えば、東京駅でタクシーへ乗車しようと思うとかなり並んでますよね。この状況を見た時に、自分と同じ方面の行き先の方をアプリのようなシステムで募って相乗りすれば、後列も少なくなるし、料金も折半できるのではないか、とちょっと想像し事業に転換できないか頭を巡らせる。そんな思考トレーニングの習慣を身につけると新規事業のタネが発見できるかもしれませんね。インタビュー後記専門家だからこそ気づくことができた業界特有の課題に対して、「解決策がないなら自社で創ればいい」という中村代表の熱い想いを強く感じることができたインタビューでした。相続の際に名義変更が行われないなどの理由で誰が所有者なのか分からない土地の面積は、九州全土よりも広いと言われています。防災対策の妨げや治安悪化といった社会問題に繋がる所有者不明土地を解消すべく、政府は2024年4月から施行される不動産名義の変更義務化に続いて不動産登記制度の新ルールを打ち出しており、「らくらく相続図」もその一翼を担うサービスとして今後より一層注目されていきそうです。