インタビュイー:リーフラス株式会社 代表取締役 伊藤清隆 様社会課題をスポーツにより解決する―その熱い想いから2001年に創業されたのがリーフラス株式会社だ。現在は「スポーツ事業」と「ソーシャル事業」の2事業で構成されており、スポーツ事業では、主にスポーツスクールを核とした複数のサービスを展開している。一方ソーシャル事業では、部活動の地域展開を支える部活動支援事業、発達に特性のある子どもの支援を中心とする放課後等デイサービス「LEIF」事業、さらに地域スポーツ施設を活用した地域共動事業に注力している。威圧的な指導や過度な競争とは一線を画し、認めて、褒めて育てる指導法を徹底。スポーツを通して「非認知能力」(=人間力)を育む独自の指導方針が、保護者様と子どもたちの共感を呼び、創業以来、右肩上がりの成長を続けている。後編では、代表取締役の伊藤清隆氏になぜ「怒らない」指導方針を打ち出した理由、創業したきっかけ、そして自身の経営哲学を語っていただいた。ゼロからの挑戦―「非認知能力」を育てる「サッカースクール」創業物語学習塾からの独立。資金がない中で、「非認知能力」を育てるという未踏の領域に挑戦した創業初期。なぜサッカースクールだったのか、その理由とは。伊藤代表:リーフラスを創業する前、小学生、中学生向けの学習塾を運営する会社で15年ほど働いていました。塾講師や営業、支社長を経験しました。その経験から、塾で子どもたちに学力をつけさせることはできても、人間的な成長を促すことはできないと感じていました。それで”人間力“(=「非認知能力」)を身につけられるような指導をしたいと思い、同じ会社にいた6人と独立しました。それで始めたのがサッカースクールです。6人で何をしようかと考えた時、子ども相手だったらサッカーがいいんじゃないかという意見がでたのです。現実的な話をすると、資金がありませんでした。サッカーは、空き地とボールがあればできる一番お金のかからないスポーツです。手探りでのスタートでしたが、徐々に方向性が決まっていきました。私自身、子ども時代のスポーツ経験の中で、今では見直されつつあるような厳しい指導や一方的な叱責に触れてきた世代です。だからこそ、「子どもたちを委縮させるような関わり方ではなく、認めて、褒めて、励まし勇気づける関わり方をしたい」という想いは当初から強くありました。その前提に基づき、試行錯誤する中で子どもがどんどん成長していくことを体感していったのです。新しい形態のスポーツスクールとなると、集客が難しいのではと考えてしまうが、リーフラスの場合はどうだったのか。伊藤代表:私たちは、サッカースクールを福岡の愛宕浜に第1号店を出したのですが、校門の前でチラシを配りながら子どもたちに声をかけると、100人ほどが集まりました。びっくりしましたね。こんなに社会的ニーズが高いのだと、私たち自身が驚いたんです。その時配ったチラシには「平日のみ、保護者様のお手伝いなしで子どもたちの挨拶、礼儀、リーダーシップを育てます」と書いていました。子どもも社員も「自分ごと」で育つ―“人”を中心にした仕組みづくり社員からの意見を積極的に取り入れたり、子どもの自己評価・保護者様の視点・指導者の観察を組み合わせて「非認知能力」を可視化する独自システム「みらぼ」の導入にも取り組んでいる。伊藤代表:2006年にベースボールスクールを始めたのですが、これは社員の発想です。当社の特徴の1つに、社員がやりたいと言ったことをやるというのがあります。そうして13ブランドまで増えました。マネジメント力のある人が責任者になって、企画して立ち上げることもありますが、基本は現場発信です。最近はチアダンスや卓球にまで広がりを見せています。積極的な社員が多い印象だが、どのような人たちがリーフラスの社員として採用されているのだろうか。伊藤代表:近年では毎年、当社のスポーツスクール会員だった新入社員が複数名、当社に入社するようになりました。もちろん元会員だからという理由では採用はしていませんが、結果的にそうなっています。当社は、野球がうまいから、プロ選手だったからという理由で採用することはありません。元プロの選手でも不採用にすることがあります。採用基準は人物重視。この人が子どもの前に立った時、子どもから好かれるかどうか。それしかありません。子どもは大人よりも人を見抜く力を持っています。スクールはたくさんありますから、配置された先生が嫌だったら子どもたちはやめていきます。ですから、技量がいくら優れていてもダメなのです。ただ、面接だけでは分からないので、体験入社もしてもらいますし、入社後は徹底的に研修を行います。当社は終身雇用ですが実力主義です。同じ年齢でも、会員300名を受け持つ人と60名しか受け持っていない人では、給与に差があります。給与に差はつきますが、それをフォローするフェアな仕組みを設けています。一人ひとりに明確な目標設定を行い、成果を上げるためのメソッドも共有しているので、努力次第で誰でも成果を上げることができます。スポーツ業界は一般的に年収が低いため、離職率も高く、不人気業界です。当社はその常識を変えようとしています。当社は雇用形態から違います。契約社員ではなく、正社員として終身雇用し、年収もこの業界ではトップクラスです。これからも上げていくつもりで、社員には「5年以内に、平均年収を2倍にすること」を目指しています。これができるのは、成長余地のある大きな市場があるからです。他のスポーツクラブや体操教室のほとんどは学生アルバイトが指導しています。人件費が安く抑えられるので一見効率的で儲かりそうに思えますが、長期的には必ず限界が来ます。本物の指導力がなければ、いずれお客様に見抜かれてしまうでしょう。リーフラスは、独自の指導だけにとどまらず、専門家と組んで新たなシステムを開発している。それはどのようなものなのか。伊藤代表:当社はスポーツ心理学の専門家と「非認知能力」を可視化するシステム「みらぼ」を開発しました。これは大きな差別化要因です。このシステムの特徴は、子どもの自己評価と保護者様による他者評価の両方を測定できることです。子ども、保護者様2つの視点から「非認知能力」を評価することで、認識の違いを見える化するものです。例えば、子どもは根拠のない自信を持つものです。これは素晴らしい特性ですが、子どもが自分自身を「みらぼ」で評価して、高いスコアがでたとしても、保護者様の評価は、それほどでもないといった乖離が数値で分かるのです。この乖離をポジティブに捉えると、保護者様にとっては「この子は実際にはできていないけれど、『できる』と思う自信を持っているんだ」という新しい発見につながります。一方、子どもにとっては「自分ではできていると思ったけれど、パパ・ママから見ると違うんだ」という気づきが生まれ、自分を客観視するメタ認知能力の向上につながります。さらに、指導員がその情報を把握することで、三者間のコミュニケーションツールとしても機能します。「保護者様はお子さんをこう見ていて、お子さん自身はこう感じている。私たちはこう評価している」といった具合に、それぞれの視点を共有できるのです。これにより、保護者様・子ども・指導員が同じ方向を向いて、明確な目標設定のもとで「非認知能力」の向上に取り組むことができます。私たちのスクールは勝つことを目的としたスクールではないので、こういったことができるのです。例えば、一般的なスクールでは、キャプテンは人格者で技量が高く、リーダーシップのある子がやります。しかし、当社では普段はそうした資質を見せない子にも、あえてキャプテンを体験させます。そうすると、リーダーシップが身についてくるのです。こうした体験をさせてあげることが、子どもたちの成長にとって非常に重要だと考えています。「社員によし、相手によし」―社員が輝ける組織こそ、会社が成長する土台経営者として掲げる「社員の幸福が会社を成長させる」という信念。転勤も配属も本人の意思を尊重し、「活躍のフィールドは会社が用意する」というスタンスが、4,000名超の組織を動かす。 伊藤代表:私は、人を酷使して利益を上げる経営は間違っていると考えています。当社の理念の中に「自分に良し、相手に良し」がありますが、創業時に「自分=社員に良し」の会社にしようと決めました。「社員に良し」とは何か。それは「社員の公私における幸福の実現」と定義しています。仕事だけが充実していても不十分ですし、プライベートだけが楽しくても意味がありません。仕事もプライベートも、両方が充実してこそ本当の幸福だと考えています。まだ完璧にできているとは言えませんが、そうした想いを持ち続けることが重要です。そして、何よりも社員を大切にするということ。これが当社の最大の強みだと思っています。私は「社員の成長と会社の成長は一体である」と考えています。社員の成長なくして、会社の成長はありません。当社は人材が全てですから、社員を第一に考えることは経営の基本です。具体的な取り組みの例を挙げると、転勤は本人の希望を最優先します。「ここに行け」ではなく、「行きたい人に行ってもらう」のが当社のやり方です。ポジションも同様で、社員の希望を聞いて、技量が合えば担当してもらいます。なぜこのようなやり方をしているのか。それは、自分から手を上げたことには、必ず責任を持って取り組むからです。「このポジションにつきたい」「ここでやりたい」と自ら希望した場合、それは完全に自分ごと化されます。だからこそ、難しい壁にぶつかっても諦めずに成長していくのです。そのために、社員が活躍できるフィールドを用意するようにしています。インタビュー後記取材を通して感じたのは、リーフラス株式会社が掲げる「教育としてのスポーツ」の力と、伊藤清隆代表の人に向き合う姿勢の一貫性です。スポーツというフィールドを通して、子どもたちの“できた”を増やし、「非認知能力」を育てるという取り組みは、単なるスポーツスクール運営の枠を超え、社会の土台づくりに直結する営みだと感じました。また「社員に良し、相手に良し」という理念に込められた、“人”を中心に置く経営哲学は、これからの時代の企業の在り方を示しているように思います。事業の成長と社員の幸福が両輪であるという考え方を貫きながら、今後どのように歩みを進めていくのか。リーフラス株式会社のこれからに、ますます期待が高まります。