インタビュイー:株式会社エーディエフ 代表取締役 島本敏様「お客様の“あったらいいな”を形にし、世界を“あっ”と驚かせる。」そんなビジョンを掲げ、1999年に誕生したのが株式会社エーディエフである。大阪に本社を構える当社は、アルミを使った製品のオーダーメイド専門メーカーである。「クリーンルーム」・「物流機器」・「オーダーメイド」の三つの事業を軸に成長を遂げてきた。「お客様への寄り添い」×「提案力」を武器にオンリーワンのアルミ製品を生み出し続けるエーディエフは、物流・メディカルなど業界を問わず、また、国内・国外を問わず、多種多様なお客様を虜にしている。今回は、株式会社エーディエフの代表取締役・島本敏代表に、創業時のエピソードやエーディエフの製品についてお話を伺った。1.5代目社長として紡いできた株式会社エーディエフ22歳の若さで株式会社エーディエフの社長に就任した島本代表。まずは創業当時の背景について伺った。島本代表:私の父はもともと会社を経営していたんですが、私が高校3年生の頃、メーカーを志す道半ばで会社を倒産させてしまいました。父はそのとき、一時は自ら命を絶つことも考えたそうです。ですがある日、私に「お前が会社を経営するなら、メーカーを創ろうと思う」と言って、設立してくれたのが今のエーディエフです。創業は父、そこからの経営は私が担ってきたので、父は私のことを1.5代目だと思ってくれていました。この会社は、誰かに求められて始めたわけではなく、父と私、親子の夢から生まれたものでしたが、「世の中にあったほうがいいモノをつくる」「世界を“あっ”と驚かせるモノをつくる」という思いを持ち、利益よりも使命を大切にしながら、四半世紀にわたって経営を続けてきました。その結果として、エーディエフは少しずつ、社会に貢献できる企業へと育ってきたのだと思っています。看板商品「DanCargo」の誕生エーディエフの主力商品の一つ、「DanCargo(ダンカーゴ)」は、物流の現場で活躍する輸送・保管用のボックスである。既存のパレット(板状の荷台)に後付けでパネルを取り付けることで、輸送と保管の両方に対応可能。輸送効率は従来比2倍、静止状態での荷重は4トンまで耐えられるなど、数々のメリットを備えた画期的な製品だ。そんな「DanCargo」の誕生までの流れについて、島本代表に話を伺った。島本代表:アルミフレームのメーカーとして創業し、材料販売だけでなく、たこ焼き屋の屋台づくりなど、依頼に応じてオーダーメイド品も手がけていました。その一環として、2004年に「折りたためる輸送ボックスは作れないか?」という要望を受け、開発したのが「DanCargo」です。ただ、最初はまったく売れなかったんです。そこで2013年、思い切って「DanCargo」に扉を取り付け、保管用の“移動式倉庫”として訴求し直しました。倉庫は本来“動かないもの”という常識を覆し、「移動できる倉庫」という新しい概念を打ち出したことで、物流業界のみならず、食品業界や医療業界にも注目され、新たな市場の創出につながりました。きっかけは、食品工場を見学した際、原料のゾーン分けが課題になっていることに気づいたんです。例えば、そば粉と小麦粉を分けずに置いておくと、アレルギー事故につながりかねません。でも、当時の現場では“間仕切り”くらいしか分離の手段がなかった。その時に、「部屋のように分けられたうえ、保管もできれば一石二鳥だ」とひらめいたんです。パレットサイズの倉庫として使え、トラックでそのまま運ぶこともできる――「DanCargo」は一気に“一石三鳥”の商品へと進化しました。そこからは、業界の常識を変える提案を続けました。「こんな商品があったら便利ではないですか?」と展示会でも発信し続けましたが、「DanCargo」は長らく利益ゼロ。なんとかオーダーメイドの売上で経営を保っていました。社員に十分な賞与を支払う余裕もないなか、「DanCargo」だけは展示会に出し続けた。社員からも心配され、周囲からは馬鹿にされたこともありました。それでもやめなかったのは、「DanCargoは、食品・メディカル業界にとって絶対に必要とされる存在になる」という強い信念があったからです。目先の赤字は承知の上で、「やり続ければ必ず売れる」と信じて、踏みとどまりました。人気YouTuberと連携した注文”獣”宅への挑戦エーディエフは、オーダーメイド製品の開発も主力事業のひとつとしている。これまでには、たこ焼き屋の屋台や選挙カー、パソコンキャリーなど、顧客の細かなニーズに応えた“オンリーワン”の商品を数多く手がけてきた。その挑戦の延長線上にあるのが、エキゾチックアニマル(犬や猫以外の珍しいペット動物)向けのペットケージ開発である。島本代表:エキゾチックアニマルって、実際に飼おうと思っても、専用の飼育ケージや正しいノウハウが圧倒的に不足しているんです。市販のケージでは、その動物の習性や行動に合わず、結果的にペットにストレスを与えてしまうこともあります。そんな中、弊社のアルミフレームを活用して、エキゾチックアニマル用のケージを自作していたYouTuberがいました。登録者数100万人を超える「ちゃんねる鰐」さんです。彼は、例えば陸と水を行き来する爬虫類のために、通常のケージに水槽をドッキングするなど、既製品にはない発想で工夫を凝らしていたんです。「ちゃんねる鰐」の知名度と発信力で製品の魅力を伝え、多くのエキゾチックアニマル愛好家に届ける。そして、飼育の悩みを抱える方々に最適な解決策を提供できる。これは、私たち、YouTuber、ユーザーすべてにとって価値のある、いわば“三方よし”の取り組みにしたいと考えています。前編では、島本代表の創業時のお話やエーディエフの商品についてお話を伺いました。後編では、島本代表が掲げる「結果型終身雇用」やこれから起業したい方へのメッセージを伺います。