インタビューイー:株式会社東海モデル 代表取締役社長 尾崎剛史様東海モデル・尾崎代表のインタビュー記事は前後編の2回に分けてお届けします。1984年の創業から培ってきた技術や経験、知識を活かし、自動車関連の試作品製作をはじめとして幅広い業界における工業製品の開発支援を手がけている株式会社東海モデル。軌道にのっていた本業が、自動車業界に押し寄せた開発費削減の波や新型コロナウイルスの流行といった打撃を受ける中、新たな試みとしてアイデアを持った個人や中小企業が容易に製品開発に着手できるプラットフォームサービス「ハツメイト」を立ち上げた。新規事業「ハツメイト」を立ち上げた経緯について伺った前編に引き続き、後編はハツメイトを通して実現したい尾崎代表の想いや、オープンイノベーションをはじめとする新規事業の立ち上げに必要なマインドセットについて話を聞いた。サービス成長の鍵は「こんなものがあったらいいな」を形にする純粋な想いハツメイトを通して尾崎代表の周囲に様々なノウハウを持つ協業仲間が増えていくことに比例して、お問い合わせの数も堅調に増えていった。サービスが広く受け入れられる理由について「周囲の方に喜んでもらえたら、という純粋な想いかな」と尾崎代表は語る。尾崎代表:新型コロナウイルスが流行し始めた時、とにかく世間は無力感でいっぱいで、クライアント様をご訪問しても暗い雰囲気が漂っていました。そんな日々の中、僕にできることって何があるのかと考えていくと、「こんなものがあったらいいな」という想いを形にして、「うわー!すごい!」という、これまで何度もクライアント様とご一緒してきた、あの感動できる瞬間を生み出すことじゃないかと。そこに一番やりがいを感じますし、そのやりがいは簡単に手に入れられないものではありますが、「これまでアイデアを一緒に形にしてきた仲間と一緒なら実現できる」という自信もついてきました。ロジックも大切ですが、まずはひたすらに動き出す。「何とかしなきゃ」といったバイタリティがオープンイノベーションを成功に向かわせる要因かなと感じます。必死に動けば、絶対に状況は変えられるという実感があります。新規事業を立ち上げるために必要なマインドセット近年の製造業における国際競争力の低下や、新型コロナウイルスの拡大で影響を受ける日本の製造業を「元気にしたい」という尾崎代表の想いにより、多様な協業仲間とのオープンイノベーションを東海モデルが引き寄せることに成功した。尾崎代表:他の中小企業や大企業の方も考えていると思うのですが、国内の需要だけで見ると市場が既に飽和状態になってしまっているケースが多いので、新規で事業を興す必要性が分からなくなったりもします。けれど、世界の中での日本を考えた時に、他国との競争が存在する中で新しいビジネスや新規事業、雇用機会などがどうしても必要になってきます。大げさですが、いわゆる「モノ作り日本」を復活させようと考えるなら、今活躍されている大手企業さんの活動だけではなく、中小企業やフリーのデザイナーさん・設計者さんをはじめとした個人の方たちが、フルパフォーマンスを発揮できるような環境があれば、日本のモノ作り産業をより活発にできるのではと想像しています。そして、中小企業や個人の方たちのために、モノづくりの駆け込み寺のようなコミュニティを作りたいという純粋な想いが、多様なアイデアと出会い、そのアイデアを東海モデルだけではなく協業仲間と一緒に形作るといった現在の循環に繋がっているのかもしれませんね。最後に、オープンイノベーションをはじめとする新規事業を検討している方々へのメッセージとして、「ひたすら動くこと、オープンマインドに考えること」とアドバイスを送る。尾崎代表:例えば、「このアイデア商品はどれくらい売れますかね」と相談に来られる方がいます。ですが大切なのは売れるかどうかではなく「売りたい」という気持ちではないかと。悪いことではないですが、売る前に必要以上に長い時間戦略を練ったり、サイトを立ち上げることがゴールになってしまったりと、パソコンの前で止まってしまっている方がとても多い感覚があります。製品があるのであれば、今、一個でも多く売りに走るべきではと考えます。昔、あるミュージシャンの方に、「状況を変えたいなら自分が変われ」と言われたことがありました。上京当時、音楽活動をしていた僕にはメンバーがいなくて、エレキギター1本で一人でステージに立つのは無理だし、変だし、どうしようと悩んでいたのですが、その方が「誰がそんなことを決めたんだ。いいからステージに立てよ」と言ってくれて。それで嫌々ステージに立ってみたら、笑われましたけど、一夜のうちにメンバーが集まったんです。「私にベースを弾かせて。僕にドラムを叩かせてくれ」って。当時は言われた通りにただ動いただけですが、今になって少しずつあの言葉の意味がわかってきたような気がします。「なんかうまくいかないな」みたいなシチュエーションは生きていれば沢山あると思います。そんな時は、まず自分が変われないかを考え、「いいから動け!」と自分に言えるかどうかなのかなと。僕自身、5-6年前から地域の企業様や大手企業の方々に、自身の想いや今後の展望を理解してもらえるよう働きかけ続けてきました。矛盾した表現かもしれませんが、そういった活動を姿勢を変えずに継続するために、日々自分を変え続けて来ました。それが今の事業の結果に繋がっているように感じます。また、様々な方と共に仕事を行っていく中で得た財産はとても大きく、現在はどんな問い合わせや相談をいただいても、お断りしない自信があります。だから、大切なのは「動いて、何をしたいのか、何を届けたいのか」ということを常にオープンマインドに考え続けることだと思います。インタビュー後記インタビューを通して、尾崎代表が語る未来志向のお話はとてもワクワクするもので、事業の危機を乗り越えた実体験からはとても勇気をもらうことができます。そんな尾崎代表だからこそ、想いに共感してくれる様々なノウハウを持つ協業仲間や、自分のアイデアを実現させたいという挑戦心を抱く個人や企業が集まる環境が生まれることを感じました。尾崎代表のリーダーシップのもとで展開されるオープンイノベーションはますます広がり、株式会社テイラーワークス様との共創を通じて、ハツメイトを本格的にコミュニティ化する計画が始まります。これにより、クリエイターやアイデアを持つ方、製造メーカーの皆様がハツメイトを通して、各自のアイデアを形にする交流が双方向で可能になります。尾崎代表の言葉から感じるオープンイノベーションの力が、まさに「モノづくり日本」を再興させる未来への一歩となりそうです。