インタビューイー:株式会社エイトノット 代表取締役CEO 木村裕人様株式会社エイトノットは「あらゆる水上モビリティをロボティクスとAIで自律化する」をミッションに掲げ、小型船舶の自動運転技術開発を手がけるスタートアップ企業だ。2021年3月の設立から小型船舶向けの自律航行システム開発を手掛け、地方自治体やパートナー企業と共に離島地域における水上交通の社会課題解決を目指した実証実験に取り組んでいる。広島県や大阪府での実証実験を経て、国内での事業拡大フェーズに移行し、海外での事業展開も視野に入れるエイトノットの代表取締役を務める木村裕人氏に、地方自治体やパートナー企業との実証実験で「得られた成果」や共創を実現させるために必要なポイントについて話を聞いた。自律航行技術の先駆者、エイトノットの事業展開エイトノットは、2022年10月に小型船舶を対象とした自律航行プラットフォーム「エイトノット AI CAPTAIN」を発表した。本サービスが提供する自動操船アシスト機能は、AIによる目的地までのルート設定や、障害物・他船をセンサーで検出することで回避し、離着岸まで全て自動で行うことができる。木村代表:当社は船の自動運転技術を開発してる会社です。我々の特徴として、船自体は製作しておらず、既存の船に後から取り付けが可能な自律航行システムを手がけています。旅客船や漁船をはじめとした業務上で船を使用する方々や運行会社を主なクライアントとして事業を行っています。また、プラットフォーム事業では、大手の船舶関連機器メーカー様や造船所の方々に当社の自律航行システムをソフトウェアとして提供をしています。なぜプラットフォーム事業と呼ぶのかと言いますと、当社のシステムを使用した船が世の中に増えることで、たとえば遠隔で船舶の運行管理を行うといった新しいサービスが提供されるようになるなど、当社の自律航行技術を起点に幅広い事業が生み出されたら良いなという想いがあるからです。木村代表の体験から始まるエイトノットの船舶自律航行技術木村代表はカリフォルニア州立大学を卒業後、アップルジャパンを経て、デアゴスティーニジャパンでロボティクス事業の責任者を務めた。ロボット開発に携わった社会人経験と、免許を取得して初めてボートを自分で運転した時の体験がエイトノットの創業に直結した。木村代表:初めてのボート運転は、操船がとても難しくて私自身楽しむことができませんでした。車とは全く感覚が違って、風や潮の流れなどの影響を常に受けるために真っ直ぐ走らせることでさえ難しいです。また、白線や標識といったものがないため障害物の確認や周囲の船の位置確認を360度見渡す必要があり、操船中は緊張した状態が続きます。車の運転では当たり前のことが船では全然できないことに、その当時は強い驚きを覚えました。その中で技術の力を使って、どのようにこの状況を変えていけるだろうと考え始めたことがエイトノットの出発点ですね。また、事業構想を練る中で、社会課題の解決という側面でも貢献できるのではないかと気づきました。日本は特に離島エリアに居住者がいらっしゃる中で、生活航路の維持存続が難しくなってきている状況があります。私たちの技術の力で、人々の生活の支えにも繋がる可能性が見えたことから、とても社会的に挑戦する意義があるプロジェクトになるのではと思って、エイトノットの創業を決意しました。自律航行の未来を築くために必要な実証実験エイトノットでは「エイトノット AI CAPTAIN」を活用して、離島住民の生活航路の維持に関する課題を抱える広島県に新たに拠点を開設し、地元自治体や事業者と共に社会課題解決に取り組んでいる。他にも、大阪府堺市との新たなサイクルツーリズム創出や、小型船舶の専門的知見を有する他社との自律航行EV船の共同開発プロジェクトを開始するなど、数々の実証実験や共創に取り組む背景を木村代表に伺った。木村代表:私たちの技術の可能性をみんなに知ってほしいという点が一番の理由になります。私たちは「市場がない場所に、新しい技術を持っていき市場を作ろうとする」という非常に難易度の高いことに挑戦しています。その場合、未来の利用者の方々に受け入れてもらうためには、技術面でのユーザーエデュケーションだけではなく、社会的に重要だと認めてもらうという点が非常に重要なポイントになってきます。自社で船を作ってどこかで走らせるだけでは「その新技術に何の意味があるのか、社会のどういった課題を解決して、技術を広めていくことにどういった意義があるのか」について広げることは難しいです。そのため、自治体の方々と連携をしながら事業を進めていくことによって、私たちの技術が社会課題の解決にどのように貢献できるのかという点をメッセージとして対外的に伝えていくこと。それが実証実験に取り組んだ背景として大きいですね。今後は実証を進めるよりも、社会への実装をどのように進めていくかというフェーズが当社の現状です。離島関係の取り組みでは、創業直後に広島県で離島へ物を運ぶ物流事業者様との実証実験を手がけ、その翌年には、国土交通省の支援の下で夜間航行を含めた人を輸送する水上タクシーの実証運行にも取り組みました。続編として、昨年までの実証実験の結果からどのように自律航行の技術を社会実装して地域ビジネスを作っていくかという点が今年の焦点ですね。実際に実証実験の場をご提供いただいている大崎上島という広島県の離島の方々と、「貨物と旅客の輸送、運行を一緒に行う貨客混載」の切り口で、どうすればサービスとして島の人が利用できるようになるか協議を重ねています。また、自律航行EV船による一般旅客向け水上タクシーの営業に先立ち、実際に広島県湯﨑知事に乗船いただく機会もありました。私たちが最終的に挑戦しようとしていることが「無人航行の解禁」で、国に規制緩和を促すことで、車の自動運転と同様、ドライバーがいなくても安心な社会を海上でも実現したいと考えています。そのためには、「世の中にある社会課題を解決するために、私たちの技術が必要で、法律的に壁になっている箇所を取り除いてほしいです」ということを国に理解していただくことが重要です。その方法として、地方自治体の首長さんから要望を上げていただくのが一番良い方法だと考えています。この点は広島県とも合致しており、また、当社が解決に動いている社会課題は県としての課題でもあると認識いただいております。そのため、湯崎知事と何度もお会いする機会をいただき、その度に当社からの情報を共有させていただいております。前編では、エイトノットの事業内容と、地方自治体/事業者との実証実験に至る経緯や、その具体的な取り組みについて伺いました。後編では、実証実験の取り組みの成果や、共創を実現するために必要なマインドセットについて伺いました。