インタビュイー:株式会社プライスレス 代表取締役 佐藤康人様2005年の創業以来、株式会社プライスレスは「代理店構築」というニッチでありながら極めて重要な領域に特化し、日本で唯一の専門企業として確かな地位を築いてきた。主力事業は、企業が代理店を募集できるマッチングサイト「代理店ドットコム」の運営。メーカー・サービス会社と営業パートナーとなる法人・個人事業主・個人をつなぐ仕組みにより、これまで多くの成功企業を創出し続けている。同社を率いるのは、日本代理店協会の会長も務める佐藤代表。「代理店という仕組みには、日本の中小企業を変える力がある」と確信し、創業当初はアルバイトと二足の草鞋を履きながらも、その理想を一歩ずつ形にしてきた。雷に打たれたような衝撃から始まった代理店ビジネスへの挑戦は、2005年の創業以来、3000社を超える企業の支援という確かな実績へと結実している。「多くの企業が代理店を活用しているにもかかわらず、その本質を理解している経営者は少ない」と語る佐藤代表に、創業から現在、そして未来への展望について話を聞いた。日本で誰もやっていなかった代理店構築という道株式会社プライスレスは、2005年の創業以来、「代理店構築」という独自の領域に特化し、日本で唯一の専門会社として確固たる地位を築いてきた。その原点には、創業者である佐藤代表が“代理店”という仕組みに出会ったときの、ある種の“雷に打たれたような衝撃”があったという。佐藤代表:私はこれまでに4社ほど転職を経験してきました。最初は空調設備系のサブコンで6年間、総務の仕事をし、そこから営業やマーケティングの業界に移り、外資系の保険会社などでキャリアを重ねてきたんです。独立した当初は「営業代行業」としてスタートしました。保険会社にいると、しがらみで“保険しか売れない”という制限がある。それなら、何でも売れる営業代行をやろうと考えたんです。そんな中、ある日POSレジメーカーの方から「代理店を見つけてきてほしい」という依頼を受けました。以前、私は保険の営業として“代理店”の歯車の中にいたにもかかわらず、その仕組みについて深くは知らなかった。でも調べていくうちに、「こんなに合理的で可能性に満ちたビジネスモデルがあるのか」と、雷に打たれたような感覚になったんです。それまでは、最大7社から営業代行の仕事を請けていて、私は7社分の名刺を持っていました。営業電話をかける分にはいいんですが、逆にかかってきたときに、どの会社の佐藤なのか分からなくなるほど混乱していて(笑)。そんな中で“代理店”という仕組みに出会って、「これは本当に画期的だ」と確信しました。もともとマーケティングも学んでいたので、“誰もやっていないことをやりたい”という想いがあったんですね。そこで思い切って「日本唯一の代理店構築コンサルタント」を名乗ることにしました。実際、当時も今も名乗っているのは私だけなんですが。そうやって事業を展開していく中で、当初はコンサルティング業務が主軸でしたが、やがて自社サイト「代理店ドットコム」の前身となるサイトの収益が伸びてきました。現在では、基本的にはこのサイトを通じて代理店募集を行う企業の皆様にアドバイスやコンサルティングを提供しており、「代理店ドットコム」が私たちのビジネスの中核を担っています。営業代行からスタートし、やがて代理店構築へと舵を切っていったプライスレス。その事業変遷の中でも、「根本的にやっていることは変わらない」と佐藤代表は語る。佐藤代表:営業代行と代理店構築って、突き詰めれば本質は同じなんですよ。見込み客を開拓して、提案して、契約を結ぶ─この一連の流れは変わらない。だから私自身、代理店構築に移行する際も特に抵抗はありませんでした。むしろ、「こんなにすごい仕組みがすでに世の中にあったのか」と、衝撃を受けたんです。“代理店”という言葉自体は知っていたけれど、その中身を本当に理解していたわけではなかった。調べていくと、大手企業のほとんどが代理店を活用している。なのに、中小企業の多くはこの仕組みを十分に使いこなせていない現状があるんです。特に、良い商品やサービスを開発している会社ほど、「いいものを作れば、自然と売れる」という“プロダクトアウト”の発想が強い。でも実際には営業に苦手意識があって、営業マンを雇ってもうまくいかない。そんな企業が多いと感じています。だからこそ、私はこの「代理店」という仕組みをもっと広めたいと思っているんです。最近は『代理店募集で日本を元気に』というフレーズを掲げて、日本全体にこの価値を届けていこうとしています。ビジネスって結局、「誰に、どうやって届けるか」なんです。良いプロダクトがあっても、届け方が間違っていれば売れない。多くの企業が「誰に売りたいのか」が曖昧なまま相談に来られますが、それだと代理店も動きようがない。だからまずは、「誰をターゲットにするのか」を一緒に考えるところから始めることも多いです。そういう意味では、営業代行も代理店構築も、マーケティングの根本にある考え方は一緒なんですよね。プライスレスが運営する『代理店ドットコム』は、代理店を募集したい企業にとっては心強いプラットフォームであるだけでなく、代理店を目指す人々にとっても新たなビジネスチャンスの出発点となっている。佐藤代表:『代理店ドットコム』を立ち上げたのは、代理店を募集したいというクライアントが増えてきたのがきっかけです。「だったらネットで効率的に募集できる場をつくろう」と思い、サイトを開設しました。最初はコンサルが中心でしたが、徐々に「掲載だけしたい」という企業が増え、ビジネスの軸も自然とシフトしていきました。とはいえ、やっていることの本質は変わっていません。例えば、販促ツールやホームページがない企業も多く、そのままでは代理店側も契約に踏み切れない。だから、掲載前から「何を整えるべきか」「どんな準備が必要か」を丁寧にアドバイスしています。大手企業でも新規事業になると代理店に不慣れな場合が多く、まず“代理店とは何か”から説明が必要になります。そうした背景もあり、日本全体に代理店活用の知識を広めていきたいと考え、同業他社にも声をかけて「一般社団法人 日本代理店協会」を立ち上げ、代理店構築マニュアルの無償配布など啓蒙活動にも力を入れています。最近では、代理店を目指す側の方々からも「創業直後にこのサイトで仕事が見つかり、事業が軌道に乗った」といった感謝の声を多くいただくようになりました。中には「以前は代理店として活用していたが、今度は本部側として代理店募集で使いたい」という企業もあり、サイトを通じた好循環が生まれているのを実感しています。社長とアルバイトの二足のわらじ 苦難の日々が今の礎に現在では「代理店業界の第一人者」として活躍する佐藤代表だが、起業当初は決して順風満帆ではなかった。数々の苦い経験こそが、今のビジネスの礎になっているという。佐藤代表:起業したばかりの頃、自分でも60万円くらい払って代理店に加盟したことがあるんです。でも、何も教えてもらえなくて。営業にはそれなりに自信があったので、当時はパソコンから何時間もかけてFAX・DMを送ったりして頑張ったんですけど、結果は1円にもならず。お金を返してくれと言っても「これは権利だから」と断られました。だからこそ今は、代理店本部を支援する際には「代理店にはきちんとやり方を教えてください」と伝えるようにしています。あのときの悔しさが、騙されて失敗するような方々を増やしたくないという思いになって今の自分の姿勢をつくっているんです。創業直後は本当に生活が苦しくて、昼は社長業、夜は漫画喫茶やコールセンターでアルバイトという生活を2〜3年続けました。クリスマスや正月に妻と子どもを家に残して働きに出るあの切なさは、今でも冬が来るたびに思い出します。さらに、当初立ち上げたサイトもまったく収益にならず、泣きながら毎晩改善作業をしていました。当時、年下のウェブコンサルの方にボロクソにダメ出しされまして(笑)。サイト名も「ビジネスの種」を意味する「ビーシーズ」だったんですが、「誰も意味がわからない」とバッサリ。それで「代理店募集ドットコム」に変え、さらに数年前には、掲載企業様や利用者から相性で呼ばれていた「代理店ドットコム」に改称しました。色使いや言葉の細部にまで「これじゃ伝わらない」と指摘されて、毎晩泣きながら手直ししていたのを今でも覚えています。当時は“ロングテール”がSEOの王道だったので、とにかくページ数を増やそうと、夜な夜な100ページ分作成してアップする日々でした。本当に地道で、苦しい時代でした。今では想像もつかないような苦労を重ねてきた佐藤代表。では、そんな日々の中でも歩みを止めなかった原動力は、どこにあったのだろうか。佐藤代表:「ここまでやったらゴール」という考え方は、正直一度もなかったんです。ただただ、目の前の仕事に全力を尽くしてきた。その積み重ねの“ご褒美”として、気づいたらサイトが少しずつ収益を生むようになっていた─というのが実情に近いですね。もちろん、「これが自分のやるべきことだ」という使命感もあります。協会を立ち上げたのもその一つですし、「日本唯一の代理店構築コンサルタント」と名乗ったあの日から、自分の人生は大きく変わったと感じています。あの瞬間にスイッチが入ったというか、「もう、ここを走り続けるしかない」と心が決まりました。「悔しさが原動力に」 協会設立に込めた想い株式会社プライスレスの代表取締役であると同時に、一般社団法人日本代理店協会の会長も務める佐藤代表。設立の背景には、意外にも“悔しさ”から生まれたという背景があったという。佐藤代表:正直に言うと、あまりポジティブな動機ではなかったかもしれません。「代理店ドットコム」に掲載いただいた企業に対して、私は単なる媒体運営にとどまらず、代理店そのものについても踏み込んでアドバイスしていたんです。たとえば、「初期費用はこう設定した方がいい」「研修はこう組み立てた方がよい」など。すると、半分の企業は私のことを先生と頼ってくれるんですが、残りの半分の企業担当者様からは「媒体屋が何を偉そうに」といった冷ややかな視線を向けられることもあって。実際に口に出されたわけではないですが、そういう“心の声”が聞こえるような扱いを受けることもあったんです。それに力不足を感じまして。「だったら、ちゃんとした立場で語れるようにしよう」と思い、協会を立ち上げました。正直、「会長になってやろう」と思ったのは、不純な動機かもしれません。でも、その“動機”が私を動かしたのは確かです。もう一つのきっかけは、ある競合企業の存在でした。後発ながら、急に検索順位でうちを抜いてきた会社があって。「これは一体どんな会社だ?」と思って直接会いに行ったら、これがまたすごい社長で。悔しいというより、むしろ惚れ込んでしまって、犬が腹を見せるような気持ちで「仲間になりたい」と思いました。そこから1年ほど対話を重ね、「業界全体を良くしよう」という共通の思いから、協会を作るというアイデアにたどり着きました。当時の同業他社やフランチャイズ系の会社さんにも声をかけ、賛同を得てスタートしました。協会では、業界の質を高め、代理店という仕組みをもっと多くの企業に正しく活用してもらうことを目指しています。ただ、まだまだ数千社の規模にとどまっており、自分の力不足も痛感しています。でも、それでも一歩ずつ、業界を底上げするための挑戦を続けています。前編では、株式会社プライスレスと佐藤代表が歩んできた軌跡、そしてその原動力となった想いに迫った。後編では、代理店ビジネスが持つ本質的な魅力と可能性、そして佐藤代表が描くこれからの展望について、さらに深く掘り下げていく。