インタビュイー:株式会社ブルームダイニングサービス 代表取締役 杉村 明紀様株式会社ブルームダイニングサービスは、居酒屋・バル業態の「がブリチキン。」をはじめとした飲食店を展開する企業だ。店舗運営にとどまらず、店舗プロデュースや飲食コンサルティング、外販事業、フランチャイズ本部の運営など、事業領域は多岐にわたる。独自のブランド戦略と柔軟な展開力を武器に、外食産業に新しい価値を創出し続けている。そんなブルームダイニングサービスに、2020年、専務取締役として加わり、翌年には代表取締役社長に就任したのが杉村明紀氏。物流系企業を経て、家業の飲食企業でCOOを経験。その後は、国内外に展開する大手ラーメンチェーンで専務取締役を務め、上場やM&A、ジョイントベンチャーなど、数々の場面を乗り越えてきた。一貫して飲食業界の最前線を歩んできた杉村代表が、なぜブルームダイニングサービスで経営するに至ったのか。飲食業界が大きな転換期を迎えたコロナ禍に、いかにして企業を導いたのか。そして今、何を見据え、どこへ向かおうとしているのか。企業のさらなる成長に向けて邁進する、“社長のリアル”について話を伺った。多角的な飲食事業とプロデュース領域への展開ブルームダイニングサービスは、居酒屋・バル業態を主軸として国内外で約60店舗の飲食店を経営している。また、近年では飲食店のプロデュース事業へと事業領域を広げている。その背景には、飲食業界に対する深い知見と、現場で培ってきた柔軟な対応力がある。杉村代表:当社の中核は、飲食店の運営にあります。「がブリチキン。」をはじめ、居酒屋やバル業態を中心に国内外で約60店舗を展開しており、名古屋を起点に着実にエリアを拡大してきました。現在では、からあげ専門の『定食業態』、ショッピングモール内の『非アルコール業態』、駅前や郊外など立地を選ばず展開できる『テイクアウト専門業態』など、業態の幅も広がっています。さらに、冷凍唐揚げやスナック菓子といった物販領域にも挑戦しており、飲食の枠を超えたチャネル拡大も進めているところです。また、以前から『飲食店を始めたい』という他業種の企業様からのご相談が多かったこともあり、飲食店のプロデュース事業や不動産事業にも取り組んでいます。物件選定から店舗設計、業態開発、さらにはフランチャイズモデルの構築まで、トータルで支援できる体制を整えています。例えば、ラーメン店のフランチャイズ構築支援も行ったこともあります。とはいえ、あくまで私たちの主力は自社での飲食店運営にあります。プロデュースは表立って大きく展開しているわけではありませんが、今後もニーズに応じて、柔軟に対応していきたいと考えています。「がブリチキン。」という強いブランドに加え、そこで培ったノウハウを別の角度から活用する。同社の事業展開は、単なる店舗数の拡大にとどまらず、常に現在と未来の外食産業の形を見据えているのが特徴だ。コロナ禍で直面した苦境と新たな業態開発2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が飲食業界全体を直撃した。なかでも“居酒屋業態”を主力とするブルームダイニングサービスにとって、その影響は致命的とも言えるものだった。前代未聞の事態に、経営陣はどう動いたのか。杉村代表:あの時期は、本当に厳しかったです。ご存じの通り、居酒屋は営業そのものが制限される状態が長く続きました。行政からの時短営業や休業要請が相次ぎ、我々の主力である居酒屋業態は、まったく機能しなくなってしまった。収益は大幅に減少し、事業の継続そのものが危ぶまれる状況でした。しかし、希望の光が全くなかったわけではありません。幸いにも「がブリチキン。」をはじめ、当社ブランドの認知度は一定の水準にありました。その強みを活かして、私たちはコロナ禍という制約下でも展開できる“スピンオフ業態”を次々と立ち上げていきました。具体的には、テイクアウト対応型の店舗や、ショッピングモール内に出店する定食業態など。環境が大きく変わる中で、「今、この条件下で何ができるのか」を徹底的に考え抜き、現場とともにスピーディに業態開発を進めていきました。社内方針としては、「行政の方針に則って、誠実に対応する」ことを徹底しました。地域によって異なる要請に合わせ、店舗ごとに休業や時短を判断し、本部の機能も必要最小限に抑えるなど、極めて柔軟に対応しました。同時に、最も重視したのは「社員を守ること」でした。収益が止まった中で資金繰りが逼迫するのは当然の流れですが、だからこそ雇用を守るために、各種助成金や支援制度をフル活用しました。「現場の仲間に極力負担をかけずに、この危機を乗り越えたい」。そんな思いを胸に、経営と現場が一体となって難局に挑んでいたのを、今でも鮮明に覚えています。この時期、同社では厳しい状況にあっても、「会社として何を優先すべきか」「どこに活路を見出すか」を日々判断しながら、慎重かつスピーディに意思決定を行ったという。消費者の行動変化と“新たな外食”へのシフトコロナをきっかけに、消費者のライフスタイルや飲食に対する価値観も大きく変化した。杉村代表が考える、アフターコロナの飲食業界で求められる視点とは。杉村代表:コロナ後の最も大きな変化は、やはり消費者の行動パターンの変化だと思います。たとえば居酒屋業態で言えば、2019年と比較しても売上はいまだに80%前後の水準にとどまっています。特に顕著なのが、夜10時以降の来店数の大幅な減少です。これは当社に限らず、業界全体に共通する傾向ですね。一方で、回復基調にある店舗を分析してみると、いくつかの共通項が浮かび上がってきます。例えば、「一回転あたりの売上が高い」「中規模~大箱の店舗で運営されている」といった特徴です。つまり、これまでのように「回転数を重ねて売上を上げる」という発想から、「限られた客数の中で、いかに満足度と客単価を高めるか」へと、ビジネスモデルそのものがシフトしてきているのです。加えて、変化の背景にはコロナだけでなく、ウクライナ情勢など国際的な不安定要因も影響しています。さらに、リモートワークやオンライン会議といった新たな働き方が定着したことも大きい。これまでは一部の企業に限られていた取り組みが、今では日常の一部として広がっています。また、メディアの影響も無視できません。「ソーシャルディスタンス」や「外食=リスク」といった言説が長期間にわたって繰り返された結果、消費者の外食に対する心理的なハードルが明らかに変化しました。このような価値観の変化をどう捉え、どう寄り添っていくか。今後の外食産業にとって、極めて重要なテーマだと感じています。時代の変化に柔軟に向き合いながら、外食産業の新たな可能性を模索し続けるブルームダイニングサービス。後編では、杉村代表がなぜこの会社を率いる決断をしたのか、そして理念経営への思いや組織づくりへのこだわりについて、さらに深く迫っていく。