インタビュイー:PLANperfect株式会社 代表取締役 鮫島淳様PLANperfect株式会社(読み:プランパーフェクト)は、2015年に「plan perfect(創業当時の屋号)」として創業し、2022年に法人化を果たした。以来、一貫してキャリアコンサルティングを軸に、多くの企業と個人を支援し続けている。事業は、3歳児からのキャリア教育を展開する「キッズ事業部」、学生向けキャリア開発や教育機関向けキャリア教育を行う「アカデミー事業部」、個人向けのキャリア支援を担当する「パーソナル事業部」、そして法人向けに経営支援や社員・経営者(CEO)のキャリアコンサルティングを提供する「コーポレート事業部」の4部門に分かれている。人材の育成・開発、キャリア教育の推進および普及活動の各分野で着実に成長を続けている。代表取締役の鮫島淳(サメジマアツシ)氏は、会社勤めをしながら複数の業界を経験する中で、人材に対する強い想いを抱いた。鮫島氏は、自身が経験した「生活のための受動的な労働」への疑問から、「人生を主体的に形成するキャリアという考え方を多くの人に提供する場を作りたい」という想いを持つようになったという。その志がPLANperfect(プランパーフェクト)の創業に繋がった。PLANperfect(プランパーフェクト)は、「『アナタ』の人生に感動を」というフィロソフィーを掲げ、従来型の経営コンサルティングとは異なり、人の感情に深く寄り添う経営支援・キャリアコンサルティングを提供している。後編では、「最高感情責任者」に込められた想いや企業を目指す方へのメッセージを鮫島代表に伺った。保育現場に広がるキャリア教育PLANperfect(プランパーフェクト)の「キッズ事業部」は、先の未来を見据えて立ち上げたが、自社のマンパワーだけで広く普及させるには限界があると鮫島代表は語る。そのため、次なる展開として幼稚園教諭や保育士へのノウハウ提供を目指しているという。[KidsCareerSchoolの風景]鮫島代表:私たちは、幼児のキャリア教育をさらに広める方法を模索してきました。当初は集団型の教育を試みていましたが、新型コロナの影響で個別指導中心の形態へと移行せざるを得なくなりました。そのような状況下で、限られたリソースでも効率的かつ効果的に私たちの理念を広めるため、幼稚園教諭や保育士の方々への教育プログラム提供を決定しました。現在開発中の「キャリア教育士プログラム」は、幼稚園教諭や保育士が手軽に学べるオンライン形式で、低価格で提供する予定です。ビデオ講座を主体としつつ、定期的に現場の先生方と直接対話する機会を設け、各園の特色や課題解決の個別支援も取り入れます。私たちの理念を普及させることで、直接訪問しなくても、間接的に広範囲に幼児キャリア教育が浸透すると考えています。私は現在の教育構造に疑問を持っています。今の教育システムは大学教授などの高等教育者を頂点としたピラミッド型ですが、本来は幼児教育を行う保育士や幼稚園教諭がもっと高く評価されるべきだと考えています。幼児を指導し命を預かるという重い責任を持つ方々なのに軽視されすぎている。保育士や幼稚園教諭の社会的地位を向上させることが、より良い教育の普及につながると考えています。このような収益化が難しい取り組みを継続する背景には、私自身の人生経験が大きく影響しています。特に父親から受け継いだ、「儲かる・儲からないじゃなく、価値あることを真摯に続ければ結果として必ずお金はついてくる」という言葉が、困難を乗り越える原動力になっています。教育事業に取り組む楽しさ、そして子供たちが将来の日本社会を担っていくことを考えると、大きなやりがいを感じます。当社のキャリア教育の核は、「刺激と反応の相関性」にあります。刺激を与えてそれに反応する、そこで初めて記憶の定着になるという考え方があります。子供たちに適切な刺激を与え、親がそれに適切に反応・サポートすることで、子供たちに本質的なキャリア意識を持たせることを目指しています。この理念を現場で実践できるよう、保育士や幼稚園教諭向けに具体的で分かりやすいノウハウを提供し、より多くの子供たちが恩恵を受けられる仕組みを作っています。さらに、私たちのキャリア教育は幼児だけでなく、小学生から大学生まで幅広く対象としています。特に高校生や大学生向けの「起業家支援」では、具体的なビジネスアイデアを形にするための実践的な指導をしています。起業を志す若者には、「思いつき」と「ビジネスアイデア」の違いを明確に伝え、収支計画やマーケティング戦略、リスク管理などの具体的で実践的なノウハウを提供しています。思いつきというのはビジネスアイデアではなくて、ビジネスアイデアというのは、収支やリスクヘッジなどもっと先を見越さないといけないものです。現在、キッズ事業部を卒業した小学生向けには「キッズ+」という起業体験プログラムも実施しており、早い段階から起業に触れる機会を提供しています。この取り組みを通じて、次世代のリーダー育成を進めています。富裕層だけでなく幅広い層の子供たちに公平な成長機会を提供し、未来の日本を担う人材を育てていくことが私たちの目標です。「最高感情責任者」の誕生秘話―鮫島代表が目指す経営とは鮫島代表は代表取締役であると同時に、「最高感情責任者(Chief Emotional Officer)」という肩書も有している。この肩書が生まれた背景やそこに込められた想い、さらには同社が掲げる経営理念についても伺った。[KidsCareerSchool修了式の様子]鮫島代表:「最高感情責任者」という肩書は、実は私が起業後、初めて担当させていただいたお客様から頂いた言葉でした。以前の会計事務所で経営計画のサポートをさせていただいたお客様で、私の独立後に改めてご依頼をいただいたのがきっかけです。その会社は家族経営で、社長と会長の意見対立が非常に激しく、私は両者の間を取り持つ役割を担っていました。「双方の主張は正しいけど道が違うだけで、ゴールは一緒です。片方の力だけではうまくいかないので、何とか一緒にこの危機を乗り越えましょう」といって対立を解消し、赤字経営を黒字に転換することに成功しました。その際に会長から「鮫島くんはまさに最高感情責任者だね。あのとき間に入ってくれていなかったら、会社はバラバラになってたよ」と言われ、非常に感銘を受けました。私が企業経営において最も重要視するのは、人の感情や価値観を大切にすることです。その経験を踏まえて、自分の役割を明確にするために「最高感情責任者」という肩書を正式に掲げることにしました。また、当社では創業時から「感動的な人生をプランする」という経営理念を掲げています。この理念は単なるキャッチコピーではなく、企業の価値観そのものであり、全社員が共有すべき指針であると考えています。本日も、私が非常勤講師を務める大学の授業で、経営理念について学生に説明しました。その際に「なんで経営理念を調べなきゃいけないのか」という疑問が学生からあがりました。法人の「人」というのは人格を持ち、その人格こそが経営理念なのです。人間関係で価値観の合わない相手とは深く関わらないように、企業も経営理念という価値観を共有できる人材を求めます。経営理念に共感できない人材は、企業にとっても本人にとっても不幸な結果を招きます。面接で経営理念に共感できるかどうかを問われる理由もそこにあります。学生たちにはこの話を通じて企業の価値観を理解し、自身が共感できる企業を見つける大切さを伝えました。当社が掲げる「感動的な人生をプランする」という理念は、社員や関係者が振り返ったときに「良い人生だった」と感じてもらうための一助になりたいという思いが込められています。私たちは常に、人々の人生に良い影響を与え続ける企業でありたいと願っています。起業を目指す方へのメッセージ最後に鮫島代表から、今後の起業を考えている方やすでに起業しているものの困難に直面している方へ向けたメッセージをいただいた。鮫島代表:起業後に悩んでいる方々には、まず「自信を持つこと」の大切さを伝えたいと思います。私が深く共感している稲盛和夫さんの言葉に、「自信というのは、日々の約束を守った量に比例する」というものがあります。ひとつひとつ自分が決めたことを確実に守っていくことが重要で、起業した後は自由になったと錯覚して、その継続が難しくなりがちです。しかし、本当に成功するためには一歩ずつ丁寧に進んでいくことしかありません。この地道な積み重ねを、何よりも大切にして欲しいと思います。一方で、これから起業を目指す方には、「自分の信念を貫き続けること」を強く勧めます。起業の道のりには、紆余曲折が避けられません。ですが、自分がやろうと決めたことを最後までやり続けるという覚悟が何よりも重要です。途中で諦めてしまうと、真の成果は得られません。ぜひ強い信念を持って前に進んで欲しいと思います。また、「人との縁」も非常に重要です。私の好きな川端康成の格言に「有由有縁」というものがあります。「縁のあるところには必ず理由がある」という意味で、長年人材支援を行う中で、このことを強く実感しています。小さな企業にとって特に縁は重要で、その縁を大切にしながら結果を出していくことが成功への道筋です。また、起業から5年が経過した私たちの「キッズ事業部」においても、困難を乗り越えるために従業員との意思共有を最も大切にしています。従業員には常に「人材への投資は大きな広告費である」と伝えています。すぐに結果が出なくても、長期的に見れば必ず還元される投資であると信じています。経営の観点からは厳しい状況でも、社員が納得できる理由を丁寧に説明し、一丸となって取り組んでいます。小さな企業だからこそ、社員一人ひとりが納得し、同じ方向を向いて努力し続けることが重要なのです。インタビュー後記PLANperfect(プランパーフェクト)株式会社の鮫島淳代表のお話を伺い、改めてキャリア教育の重要性と可能性について深く考えさせられました。「人の感情に寄り添う」ことを軸に据えた鮫島代表の経営哲学は、単なる収益性や効率性を超えた本質的な価値を私たちに示してくれます。また、幼児期からキャリア意識を育てるというユニークな取り組みは、今後の日本の教育分野に新しい風を吹き込むでしょう。今回のインタビューを通じて、「縁」を大切にし、信念を持って地道に取り組むことの大切さを再認識しました。