インタビュイー:株式会社Branding Engineer 代表取締役CEO 大島 孝之様「エンジニアの価値を向上させる」。多重下請け構造という複雑な課題が残るIT業界において、この難題に真正面から向き合うのが株式会社Branding Engineerだ。2030年にはIT人材が最大79万人不足すると推計される中、同社はフリーランスと正社員を組み合わせた独自の支援体制を展開し、構造的な課題の解決とエンジニアの市場価値向上を牽引している。2024年に同社に参画、組織変革の舵取りを任されたのは、20年以上にわたって人材業界の最前線で「人と組織」の可能性を追求し続けてきた大島孝之氏である。本編では、エンジニアプラットフォームを中心に事業展開する株式会社Branding Engineer・代表取締役CEO・大島孝之氏に、同社独自の事業モデルや、組織をプロ集団へと脱皮させるための土台作りについてお話を伺った 。 フリーランスと正社員のハイブリッド―IT人材不足を解決する「技術提供」の仕組みIT業界において、エンジニア不足は周知の事実である。しかし、その人材不足は、単なる「人数」の問題だけではない。企業側が求める継続性と品質というニーズに対し、同社が打ち出した解決策が、フリーランスと正社員の長所を掛け合わせた独自のモデルである。大島代表:株式会社Branding Engineerは、株式会社TWOSTONE&Sonsグループの一員として、エンジニアプラットフォームを中心に事業を展開しています。当社の親会社である株式会社TWOSTONE&Sonsは、2013年に代表取締役CEOである河端と代表取締役COOの高原が学生時代に株式会社Branding Engineerという社名で立ち上げ、受託開発事業を起点にスタートしました。初めは小規模な受託開発に従事していましたが、その後、自社サービスとしてフリーランスエンジニアと企業のマッチングサービス「Midworks」を展開し、企業に対してエンジニアの技術力を提供する形で成長を遂げました。この事業の発展を経て、現在の規模にまで成長し、東証グロース市場に上場を果たすに至りました。2023年のホールディングス体制への移行とともに社名を株式会社TWOSTONE&Sonsへと変更し、Midworksは子会社である当社に事業継承されました。創業者が築き上げてきた強固な基盤があるからこそ、今私がバトンを引き継ぎ、代表取締役CEOとして次の一手へと踏み出すことができています。中でも注力しているのが、フリーランスと正社員の体制を柔軟に組み合わせることです。現在当社では、6万人を超える(2025年8月時点)登録者を抱えるフリーランスエンジニアのプラットフォームを運営しています。それと同時に、自社でもエンジニアを直接雇用(正社員化)し、クライアント先へ派遣する体制を大幅に強化しています。この“ハイブリッド型”の提案こそが、今のIT市場の課題に対する一つの正解だとも考えています。これまでの当社の成長は、フリーランスエンジニアの方々の高い機動力に支えられてきました。しかし、お客様である企業側からは、以前から別の声も届いていたのです。それが「Branding Engineerで責任を持って雇用している正社員のエンジニアに依頼したい」というニーズでした。背景には、セキュリティや情報管理への意識の高まりがあります。また、開発製品の長期的な成長を支えてもらうために、より腰を据えた関わりを求める企業が増えたことも要因と言えるでしょう。もちろん、高度な専門スキルを持つフリーランスエンジニアは、瞬発力のある支援として重要です。一方で、クライアントの文化を深く理解し、長く伴走してくれる「正社員がもたらす安定感」も、DXを推進する企業には不可欠な要素になっています。深刻なIT人材不足の中、一企業が自前でエンジニアを採用し続けることは非常に困難です。そこで当社は、私が事業の統括を担うようになった時期から正社員の採用を本格化させ、自社の社員として責任を持って派遣する体制を整えました。提供したいのは、単に人を紹介して終わり、というマッチング業ではありません。フリーランスの専門性と正社員の安定感を企業毎に組み合わせ、最適なチームを作り、お客様の事業課題を解決していく。「技術提供」という本質を追求するために、この体制での支援も広げているのです。フリーランスと正社員を選択できることはエンジニア側にとっても大きな意味を持ちます。若いうちはフリーランスとして自由に腕を磨き、ライフステージの変化に合わせて正社員としての安定を求める。一人のエンジニア人生において、変化するニーズに合わせた選択肢をグループ内で提供できることは、安心して挑戦し続けられる環境を作ること、ひいては、「エンジニアの価値向上」に直結すると確信しています。「人材紹介」では終わらない。エンジニアの市場価値を高める伴走支援とスピード感<親会社である株式会社TWOSTONE&Sonsの決算資料より>独自のハイブリッド体制を支えるのは、創業時からの「エンジニアの価値向上」という信念だ。この理想を現実に変えるため、同社は一人ひとりの市場価値を高める「仕組み」に徹底してこだわっている。大島代表:私はいつも社内メンバーに、「登録された方を紹介するだけの仕組みでは、私たちの介在価値はないよ」と伝えています。私たちのビジネスの根底にあるのは、エンジニア一人ひとりの市場価値をどう上げ、どう守っていくか、という視点です。エンジニアという職業は、常に新しい技術を学び続けなければならない過酷な世界です。しかし、多忙な現場にいると、自分の実力が客観的にどれくらいなのか、次にどのスキルを伸ばすべきかを見つめる余裕を失ってしまうことも少なくありません。そこで当社では、専門のキャリアアドバイザーが徹底的に伴走する体制を整えています。本人の強みを引き出し、自己分析を助け、今の市場で最も輝けるポジションへと結びつける。この伴走プロセスがあるからこそ、エンジニアは迷うことなく、自らの価値を高めるキャリアを歩んでいけるのです。もう一つの武器はスピード感です。ITの世界は情報の鮮度が命です。エンジニアにとって、プロジェクトが空いてしまう期間は、スキルの低下や収入の不安に直結します。ですから当社では、ご登録いただいてから翌週にはもう新しいプロジェクトが決まっている、というほどのマッチング速度を目指しています。このスピードを支える土台となっているのが、エンド企業と呼ばれるクライアントとの直接取引です。私たちは案件開拓を絶えず続けることで、中間業者を挟まない迅速なマッチングを可能にしてきました。多重下請けの構造をできるだけ排し、エンジニアがより高い報酬と大きな裁量を持てる環境を整える。エンジニアファーストな仕組みこそが、当社の成長を支える核となる強みなのです。エンジニアが一段上のフェーズ、新しい領域に挑戦したいと考えたとき、真っ先に最高の選択肢を提供できる存在でありたいと考えています。属人的集団をプロ集団へ―組織の「当たり前」を確立していくために事業モデルを洗練させ、拡大させる大島氏。しかし、彼が参画した当時の組織は、急成長の代償として一つの課題に直面していた。売上は伸びているものの、社内の規律や組織としての「型」が定まらず、個々の勢いだけに頼る危うさを抱えていたのだ。大島代表:私が参画当初に感じたのは「組織の土台を再構築する必要がある」ということでした。当時は、一人ひとりが非常に強い個性と突破力を持つ、属人的な組織だったからです。一見、ベンチャーらしくて勢いがあるように見えるかもしれません。しかし、お客様の重要な事業を支えるパートナーとして信頼され続けるためには、致命的な弱点がありました。成果を上げるメンバーとそうでないメンバーの乖離が激しく、成果を出し続ける営業組織としての共通認識やルール、体系化された行動指針がなかったのです。お客様からの信頼にもバラつきがありました。IT業界も例外ではありません。むしろ、高度な技術を扱うプロフェッショナルだからこそ、基本となる人間力が信頼の決め手になります。そう考えていた私は、派手な成長戦略を打ち出す前に、まずは成長フェーズの組織として当たり前に機能する基盤づくりが不可欠だと考え、改革に踏み切りました。最初に取り組んだのが、全メンバーとの個人面談です。一対一で膝を突き合わせ、一人ひとりの本音を聞きながら、同時に私が大切にしたい規範を伝え続けました。話し合ったのは、難しい理論ではありません。プロとして、そして人として当たり前の習慣を組織の絶対的な規律にしようと訴えました。規律という土台が揺るぎないものであって初めて、優れた戦略は現場で命を宿し、成果に繋がるものだからです。個々の勢いという強みを活かしつつ、同時にプロとしての質を底上げしていく。この積み重ねこそが、組織を次のステージへ進める唯一の道だと。対話を経て、社内の空気は確実に変わり始めました。メンバーたちが、「お客様の信頼のために、プロとしてどう動くべきか」という視座を持ち始めたからです。準備が整ったことで、私たちはようやく、高い目標に向けて全力で走り出すことができるのだと感じています。前編では、株式会社Branding Engineer独自の事業モデルや大島代表が取り組まれた組織改革についてお話を伺いました。後編では、エンジニアの意欲を最大化させる評価制度や市場価値を高めるための人間力、そして同社が描く未来のビジョンについてさらにお話を伺っていきます。大島孝之/大手人材サービス企業に入社後、事務・製造・エンジニア領域の派遣事業において、統括ゼネラルマネージャーとして従事。その後、ベンチャー系の総合人材サービス企業へ転じ、事業本部長として介護領域の派遣事業の立ち上げと拡大を牽引。エンジニア派遣を主力とする企業では執行役員を経て、代表取締役社長COOに就任。現在は、株式会社TWOSTONE&Sonsの執行役員およびグループ会社である株式会社Branding Engineerの取締役として、グループ傘下におけるITエンジニアマッチング事業の統括を担っている。2025年9月、同社代表取締役CEOに就任。【会社概要】会社名株式会社Branding Engineer設立2022年9月20日代表取締役CEO大島孝之事業内容エンジニアプラットフォームサービス所在地東京本社 東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル6FサイトURLhttps://b-engineer.co.jp/