インタビュイー:株式会社Branding Engineer 代表取締役CEO 大島 孝之様「エンジニアの価値を向上させる」。多重下請け構造という複雑な商流が残るIT業界において、この難題に真正面から向き合うのが株式会社Branding Engineer(ブランディングエンジニア)だ。2030年にはIT人材が最大79万人不足すると推計される中、同社はフリーランスと正社員を組み合わせた独自の支援体制を展開し、構造的な課題の解決とエンジニアの市場価値向上を牽引している。2024年に同社に参画、組織変革の舵取りを任されたのは、20年以上にわたって人材業界の最前線で「人と組織」の可能性を追求し続けてきた人物である。同社独自の事業モデルや組織をプロ集団へと脱皮させるための土台作りについて伺った前編に引き続き、エンジニアプラットフォームを中心に事業展開する株式会社Branding Engineer代表取締役CEO大島孝之氏に、新たな評価制度の狙いや将来のビジョンについてお話を伺った。 「感覚的評価」からの脱却。期待と役割を明確にする新たな評価軸組織のルールを整えるのと並行して、大島氏がメスを入れたのが人事評価の仕組みだった。社内メンバー一人ひとりが迷わずに成長し、その頑張りが正当に報われる環境をどう作るか。そこには、組織をより高いステージへと引き上げるための戦略的な意図があった。大島代表:ルールを整えることと並行して進めたのが正社員エンジニアも含めた人事評価制度の刷新です。以前の評価は、どうしても評価者の主観が入りやすい、いわば「感覚的」側面が残っていました。これでは、社内メンバーは「何を頑張れば評価されるのか」の判断に迷ってしまいます。そこで導入したのが、ミッショングレード制に近い形で個々の期待値と役割を明確に定義する仕組みです。具体的には、半期ごとに「この半年で何を成し遂げてほしいか」というミッションを伝え、その達成度を客観的に振り返るプロセスを徹底しました。評価において私が最もこだわったのは「納得感」と「再現性」です。何を成し遂げれば昇給し、どの役割を担えば次のステップへ進めるのかを、数値と具体的な行動指針で明確化しました。誰もが納得できる客観的な評価軸を確立する。属人的なマネジメントを脱し、仕組みで人を育てる道を選んだ背景には、組織の質を根本から変えようとする経営者としての決意があった。大島代表:当然、これまでと違うやり方に戸惑う声もありました。しかし、経営者としてここは譲れない一線でもありました。私たちが掲げる「エンジニアの価値向上」を叶えるためには、それを支える社内メンバー自身が、自らの意志で動くプロフェッショナルでなければならないからです。会社に言われたからやるのではなく、「自分はこの役割を果たすために、この目標をクリアする」という主体的な姿勢。この透明性がもたらした最大の成果は、社内メンバーの自律性です。自分の現在地が可視化されたことで、受動的な働き方から、自らの市場価値を高めるための能動的な働き方へと、個々のプロ意識が劇的に変わりました。評価の透明性を高めたことで、社内メンバーは自分の成長をしっかり実感できるようになりました。自分の現在地がどこにあり、次に何を目指すべきかが明確になったことで、個々のモチベーションの質が変わったのです。こうした「内発的な動機付け」こそが自信に繋がり、結果としてエンジニアやクライアント企業への、より質の高いサポートへと還元されています 。技術力は価値の3割―市場から選ばれ続けるための“人間力”の重要性エンジニアという職業において、技術力の向上は終わりのない課題である。しかし、Branding Engineerは「技術だけではエンジニアの価値は完成しない」という明確な姿勢を示している。社内組織のプロ意識を底上げした同社が、エンジニアの市場価値を定義する際に最も重視するのが、技術力を支えるための決定的な要素である、ヒューマンスキルへの深い洞察である。大島代表:私たちの介在価値は、エンジニア一人ひとりの市場価値をどう高めるかにあります。当社では、エンジニアの市場価値を「テクニカルスキル」と「ヒューマンスキル」の掛け合わせで決まると考えていますが、技術力が占める割合は全体の3割程度だと捉えています。残りの 7割を占めるのは、交渉力や調整力、そして周囲との関係性を築く「人間力」です 。 そのため、当社ではエンジニアに対しても、挨拶や報告、感謝の伝達といった「当たり前の行動」の徹底を組織文化として求めています。どんなに優れた技術を持っていても、周囲から「一緒に働きたい」と思われる人間力がなければ、その技術を披露するプロジェクト(場)すら得られないからです 。エンジニアにとって「一緒に働きたい」と思われるような人間力が、何より重要だという認識を、私たちの組織文化として根付かせています。こうした人間力の重要性は、エンジニアも内勤社員も変わりません。“当たり前とする行動”という一歩を踏み出すことで、互いを共に歩む仲間だと認識する。こうした泥臭くも本質的な信頼関係の築き方を、組織として伴走支援することこそが株式会社Branding Engineerの姿勢です。エンジニアが持つ技術力に加えて、その技術を生かし、周囲と共に成長していける能力。このバランスがエンジニアの真の価値を決定づけるのです。人間力と技術力を兼ね備えたプロフェッショナルを育成することで、エンジニアが自らの手で望むキャリアを切り拓いていける環境を、私たちは追求し続けています 。業界のマーケットリーダーへ―エンジニアが誇りを持ち、顧客と伴走する未来像<株式会社TWOSTONE&Sonsグループ全体の集合写真>Branding Engineerが描く未来のビジョンは、単なるシェアの拡大や数字の達成だけではない。その挑戦の先に見据えるのは、エンジニアという職業そのものの社会的地位を向上させ、誰もが自分の仕事に誇りを持てる社会の実現だ。大島代表:私たちの目標は、このIT人材市場において圧倒的な存在感を持つリーダーになることです。なぜなら、私たちが強く大きな組織になることは、エンジニアの皆様により多くのチャンスを、より良い条件で提供できることと直結するからです。企業とのパートナーシップをさらに深め、商流をよりシンプルに整えていくことで、エンジニアが主体的にキャリアをコントロールし、その価値を正当に発揮できる環境を仕組みとして提供したいと考えています 。IT技術は、いまや社会のあらゆる場所を支えていますが、それを動かしているのは、一人の人間であるエンジニアです。かつて私が現場で出会ったある技術者の方は、「この街のインフラは、自分たちが支えているんだ」と、自分の仕事に大きな誇りを持って語ってくださいました。そのキラキラした表情は、今でも忘れられません。今のIT業界でも、そうした誇りを持てる人を一人でも増やしていきたいと考えています。私たちは単なる人材会社ではなく、彼らの人生に中長期で伴走し、その成長を共に喜び、社会を良くしていくパートナーでありたいと思っています。まずは、社内メンバーが一丸となって「当たり前」を積み重ね、プロとしての信頼を勝ち取っていく。その確かな土台の上に初めて、エンジニアが自分の仕事に心から誇りを持てる未来が待っているはずだと。私たちはこれからも、エンジニアの価値を真に向上させるための挑戦を、一歩ずつ、確実に続けていきます。インタビュー後記今回は、株式会社Branding Engineer・代表取締役CEO・大島孝之氏にお話を伺いました 。急成長を遂げる組織において、あえて日頃の行動や規律といった「当たり前」を最優先する姿勢に、真のプロフェッショナル組織としての覚悟を強く感じました。特に印象的だったのは、エンジニアを、高度な技術で社会の基盤を支え、共に新たな未来を創り出す「唯一無二のプロフェッショナル」として深く尊重されている点です。 また、全メンバーと真摯に向き合い、地道な対話を重ねることで構築された組織としての新しい形も見え始めています。技術力と人間力を兼ね備えたエンジニアが正当に評価され、自らの仕事に確固たる誇りを持って歩める環境を整えることの大切さを学ばせていただきました。大島孝之/大手人材サービス企業に入社後、事務・製造・エンジニア領域の派遣事業において、統括ゼネラルマネージャーとして従事。その後、ベンチャー系の総合人材サービス企業へ転じ、事業本部長として介護領域の派遣事業の立ち上げと拡大を牽引。エンジニア派遣を主力とする企業では執行役員を経て、代表取締役社長COOに就任。現在は、株式会社TWOSTONE&Sonsの執行役員およびグループ会社である株式会社Branding Engineerの取締役として、グループ傘下におけるITエンジニアマッチング事業の統括を担っている。2025年9月、同社代表取締役CEOに就任。【会社概要】会社名株式会社Branding Engineer設立2022年9月20日代表取締役CEO大島孝之事業内容エンジニアプラットフォームサービス所在地東京本社 東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル6FサイトURLhttps://b-engineer.co.jp/