インタビュイー:株式会社クラウドドクター 代表取締役社長 赤松敬之様24時間365日、どこにいても最短3分で医師とつながる_。株式会社クラウドドクターが運営するオンライン診療プラットフォーム「CloudDr.(クラウドドクター)」は、そんな未来の通院を、今まさにスマートフォンの中で実現している。スマートフォンひとつで、診察から処方、服薬指導、薬の受け取りまでをオンラインで完結。全国に待機する医師とリアルタイムにつながることで、通院や待ち時間を前提とした従来の医療体験を大きく変えようとしている。「最適な医療を即時に」というコンセプトのもと、忙しい現代人の健康を支える新しい医療インフラを、DXの力で構築しようとしている。同社を率いるのは、現役の医師である赤松敬之氏。少年時代に見た父の姿やコロナ禍での医療現場の体験を通じて、オンライン診療の必要性を強く実感し、現在の事業を立ち上げた。クラウドドクターの構想の根底にあるのは、患者の利便性向上だけではない。医師免許を持ちながらも、育児や介護、地域的制約などによって十分に働けていない医師たちに、新しい働き方を提示するという狙いもある。前編では、株式会社クラウドドクターの事業モデルやコロナ禍での事業立ち上げの背景、医師の新しい働き方について、お話を伺った。本編では、株式会社クラウドドクター・代表取締役社長・赤松氏に、少年時代に父の働く姿から紡いだオンライン診療への想いや「ホーム」で患者様と向き合う利点、今後の展望について、お話を伺っていく。名医がいなくなっても、医療は止めないために。クラウドドクターの「仕組みの医療」医師だった父の背中を見て育ち、赤松氏がたどり着いたのは「特定の誰か」がいなくなっても医療が止まらない仕組み作りであった。少年時代に目の当たりにした実家のクリニックの危機。その切実な記憶が、現在の事業の根底にある。赤松代表:私の実家が診療所だったこともあり、2歳の頃には「将来は医師になる」と決めていました。物心ついたときから、私のヒーローは父でした。患者様から深く信頼されている姿は誇らしく、「お医者さんはすごい仕事なんだ」と感じる日々。当時の父は、家族での外食中も呼び出しがあれば即座に病院へ駆けつける、365日休みのない生活を送っていました。その姿を尊敬する一方で、子どもながらに属人化している現在の医療現場への不安も抱いていました。不安が現実になったのは、私が父の背中を追って医師への道を志していた矢先、父が突然亡くなったときのことでした。地域に愛されていた病院の経営は、大黒柱を失った瞬間に立ち行かなくなってしまったのです。病院の価値が父という「個人」に依存しきっていた事実は、一人の人間に頼る医療のもろさを、10代の私に痛烈に刻み込みました。父の死に直面して痛感したのは、一人の医師の頑張りだけで成り立つ医療には、どうしても限界があるということ。どれほど優れた名医であっても、一人の人間が診られる患者様の数には限りがありますし、その医師が不在になればその地域の医療は途端に止まってしまいます。こうした「個人」への依存は、患者様にとっても、そして医師本人にとっても、実は非常に不安定な状態ではないかと考えました。もし私が父と同じように、自分一人の能力に頼る病院を作ったとしても、私が動けなくなればまた同じことが繰り返されます。それでは、本当の意味で地域の方々に「いつでも安心して頼れる場所」を提供し続けることはできません。そこで私が行き着いたのが、誰が担当しても常に質の高い医療を提供できる“標準化された仕組み”の構築でした。具体的には、一人の“名医”に頼るのではなく、多くの医師が知恵と時間をシェアし合う形を目指しました。オンラインであれば、一人の医師が24時間365日待機する必要はありません。複数の医師がチームとしてプラットフォームに加わることで、システム全体として「診察が途切れない状態」を維持できるようになります。一人の力には限界がありますが、医師同士をテクノロジーでつなげば、医療の質は安定し、サービスを長く続けていくことができます。特定の誰かに依存せず、誰もが安定して医療を受けられる仕組みを整える。それが父のクリニックのような危機を繰り返さないための私なりの答えであり、日本の医療をより持続可能なものに変えていく一助になると考えています。日常という「ホーム」で向き合う。対話の質を高めるためのオンライン診療父が地域医療に尽くし、懸命に守り抜こうとした患者との信頼関係。その信念を大切にしながらも、赤松氏は今の時代にふさわしい医師と患者のつながり方を模索し続けてきた。その答えが、診察室という壁を取り払い、患者の日常に溶け込むオンライン診療という形だった。赤松代表:父は常にクリニックで働き続けてきました。しかし、今のテクノロジーを使えば、医師はもっと自由に、もっと深く患者様の生活に寄り添えるはずです。よく「なぜ直接会わないオンライン診療を推進するのか」と聞かれますが、実はオンラインだからこそ見えてくるその人自身の“本当の姿”があると考えています。例えば、病院の診察室に来られる患者様は、多かれ少なかれ緊張されています。白い壁に囲まれ、医師の前に座るという非日常的な空間では、自分の症状を正確に伝えられなかったり、本当に困っていることを飲み込んでしまったりすることもあります。これは、医師と患者様の間に「場所が作る心理的な壁」が存在しているからです。しかし、オンライン診療であれば、患者様は住み慣れた自宅や、自分が最もリラックスできる場所にいます。画面越しに映るお部屋の雰囲気、ふとしたときの表情、リラックスした話し方。そうした日常の延長線上にある情報から、診察室の中だけでは読み取れなかったその方の生活の背景や不安の核心に触れられることが多々あります。医師が患者様のプライベートな空間にお邪魔し、同じ目線で話を聞く。この「ホーム」での対話こそが、深い信頼関係を築く鍵になると捉えています。大切なのは、最短の時間で“最大の安心”を届けること。画面越しでも、声のトーン一つで伝わる体温がある。赤松代表:私たちは単にデータを見て病名をつけるだけでなく、その方の日常に寄り添い、今、何に困っていて、どうすれば安心できるのかを一番に考えたいと思っています。最短3分で医師とつながれるという仕組みも、単なる効率化のためだけではありません。体調が悪くて心細いときに、長い待ち時間を耐えることなく「すぐにプロに相談できる」という体験そのものが、患者様にとっては何よりの安心材料になります。医療において「待たされる」ということは、それだけで不安を増大させます。その不安な時間を一分一秒でも短くし、速やかに適切なアドバイスを届ける。これもまた、父が大切にしていた「目の前の患者様に尽くす」という精神を、現代のスピード感で体現した形だと言えるかもしれません。どれだけデジタルが進化しても、医療の核心にあるのは「人と人の信頼関係」です。物理的な距離を超えた新しい“かかりつけ医”の形を提案していくことが、私たちの今の役割です。アジア最大のクラウド病院へ――日本発の「クラウドドクター」が世界の医療格差を解消するオンライン診療プラットフォーム「CloudDr.(クラウドドクター)」は、日本国内という枠組みを超え、アジアの発展途上国にも広がっている。赤松代表:現在、私たちはカンボジアをはじめとしたアジア諸国への展開を具体的に進めています。こうした国々では、日本以上に医療アクセスの格差が深刻です。都市部には近代的な病院があっても、地方の村々では基本的な診察さえ受けられず、適切な初期対応ができれば救えるはずの命が失われている現実があります。私たちが日本で培ってきた「クラウドドクター」というインフラは、こうした地域でこそ真価を発揮すると考えています。例えば、日本にいる専門医のアドバイスを、現地の保健所や村々にリアルタイムで届けることができれば、現地の医療レベルを底上げすることが可能になります。これは単なるビジネスの拡大ではなく、日本が誇る高い医療水準を「仕組み」として輸出することで、現地の人々の健康に貢献する、一つの国際協力の形であると捉えています。ゆくゆくは、どこの国にいてもスマホ一つで最高の医療リソースにアクセスできる「アジア最大のクラウド病院」を、「CloudDr.(クラウドドクター)」を通じて構築するという目標を掲げています。それは、私の父が大切に守り抜こうとした地域の方々への想いを、テクノロジーの力で地球規模に広げていく挑戦でもあります。このように医療の国境をなくし、世界中を安心でつないでいくこと。日本発の仕組みが、アジアの未来をより良いものに変える大きな力になると信じて、私たちはこのミッションに取り組んでいきます。編集後記今回は、株式会社クラウドドクター・代表取締役・ 赤松 敬之氏にお話を伺いました 。オンライン診療という言葉から想起されがちな「効率化」や「省力化」とは異なり、その根底にあったのは、父である開業医の背中を見て育った一人の医師としての切実な問いでした。名医一人に支えられる医療の脆さ、患者と医師の双方に無理を強いる構造。それらを乗り越えるために、テクノロジーを「冷たい道具」ではなく、人の不安を和らげるための仕組みとして使おうとする姿勢が強く印象に残りました。利便性の先にあるのは、常に人の安心である。その原点を、改めて考えさせていただき、医療DXの本質を深く学ばせていただきました。赤松 敬之/2014年:近畿大学医学部卒業2020年:西梅田シティクリニック開業。同年、大阪発となるPCR検査場大阪PCR検査センターを創業し、4年間で200万件の検査・150億円の売上を達成。その後、美容・医薬品・医療人材領域で複数事業を展開。2024年:株式会社クラウドドクターを創業【会社概要】会社名株式会社クラウドドクター設立2024年5月31日代表取締役社長赤松 敬之事業内容オンライン診療プラットフォームの提供労働者派遣事業法に基づく労働者派遣事業及び有料職業紹介事業医療に関するコンサルタント業所在地大阪府大阪市北区梅田2丁目1番22号野村不動産西梅田ビル12階サイトURLhttps://cloud-dr.jp/