インタビュイー:株式会社ENVY 代表取締役 宮津 駿様「ウェビナーを開催したものの、商談につながらない」という課題を抱える企業は少なくない。集客した人数が成果として語られがちなウェビナーの世界にあって、「購買意欲ある相手との商談だけが、カレンダーに入る」状態をゴールに掲げているのが、株式会社ENVYである。同社が展開するウェビナー代行サービス「セミナーBPO」は、企画や構成、資料作成から集客、当日の運営まで、登壇以外のすべてを代行する。単なる開催の支援にとどまらず、有効商談化までを見据えてサービスを設計している点に、大きな特徴がある。支援企業数は240社、累計開催代行数は3,500回を突破している。代表の宮津駿氏は、学生時代に個人事業主として歩みを始め、自身の営業経験で味わった苦労を起点に、現在のサービスへとたどり着いた人物である。フリーランスとしての歩みから数えれば、ウェビナー経験は10年に及ぶ。前編では、株式会社ENVY 代表取締役 宮津駿氏に、「セミナーBPO」というサービスの全貌や、起業の原点となった中学生時代の憧れ、手や声が震えるほどの営業のつらさから活路を見出した転機について、お話を伺った。開催ではなく「有効商談」をゴールに。ウェビナー代行「セミナーBPO」の全貌はじめに、株式会社ENVYが展開する「セミナーBPO」についてのお話を伺った。宮津代表:株式会社ENVYは、ウェビナーの代行サービスを提供している会社です。サービス名は「セミナーBPO」といい、ウェビナーの「企画・資料・台本・集客・開催・運営」まで登壇以外をすべて代行する実行支援サービスです。お客様にしていただくのは、登壇のみ。その前後にある準備や運営の工程を、当社がまとめてお引き受けするかたちをとっています。一般的なウェビナー代行サービスと異なる点は、開催そのものをゴールにしていないところにあります。多くの場合、ウェビナーでは「何人を集めたか。何人が参加したか。」といった集客の数が重視されます。もちろん集客も大切な要素ですが、当社がゴールに据えているのは、その先です。「買う気のある相手との商談だけがカレンダーに入っていく」状態をつくることを目指しています。当社がそこを目指す理由は、温度感の低い相手との商談ほど、つらく、時間を費やすばかりになりやすいからです。これは私自身が新規開拓のなかで何度も味わってきたことでもあります。だからこそ、納得した方だけが商談に来てくださる状態をつくりたい。その想いが、サービスの土台にあります。当社が最も力を入れているのは、企画力です。クライアントの見込み客の情報やターゲット、サービスの内容を当社が丁寧に引き出し、そのうえで全体の構成を組み立てていきます。これまで240社以上の支援を通じて磨いてきたロジックをもとに、社長が1対1で語っておられる営業トークを一度分解し、複数の方に同時に伝わる形へと組み替えていく。1対1でしか届かなかった内容を、1対多で届く形に変えていくのです。担当者の方がご自身で資料を作成されると、マーケティングの経験値によって、どうしても完成度に差が生じてしまいます。その工程を当社が引き受けることで、再現性のある質の高いウェビナーを実現し、最終的に有効商談へとつなげていく。こうした流れを一貫して設計していることが、「セミナーBPO」というサービスの強みです。中学生からの「ノマド」への憧れと、プラットフォーム依存の危うさすべての出発点は、中学生時代に出会った一冊の本だった。「ノマドワーカー」への憧れは、やがて大きな気づきへと宮津氏を導いていく。宮津代表:私の原点を遡ると、中学生の頃に出会った一冊の本にたどり着きます。当時、株式会社オトバンクの上田渉会長が書かれた、『ノマド出張仕事術』を読み、その出版記念のセミナーを目にする機会がありました。そのなかで「ノマドワーカー」という言葉に出会ったのです。2010年くらいのことで、まだ一般的な言葉ではありませんでした。「ノマドワーカー」とは、ノートパソコンやスマートフォンを使い、Wi-Fi環境のあるカフェやコワーキングスペースなど、オフィス以外のさまざまな場所を自由に移動しながら仕事をする人のことで、そうした働き方に純粋に憧れを抱きました。上田会長ご自身は、おそらく仕事にストイックに向き合うという文脈で語られていたのだと思います。ただ、当時の私は中学生でしたから、パソコン一つでどこでも働けるという部分に惹かれました。いずれはこういう働き方をしてみたい。そんな想いを、中学から高校にかけて漠然と抱き続けていたのです。その想いが形になり始めたのは、大学生になってからでした。私は大学で機械工学を学んでいて、プログラムを動かしてロボットを制御したり、エンジンの図面を作成したりといったことをしていました。プログラムを組むことができたので、自分でサイトを作り、アフィリエイトのリンクを貼るといったことができたのです。そうした取り組みのなかで、あるブログがSEOで検索の上位を取ることができました。すると広告主から直接ご依頼をいただき、広告を掲載できるようになって、月に十万円から二十万円弱ほどの収益を得られるようになったのです。学生の身としては、決して小さくない手応えでした。ところが、あるとき広告主側の都合で、広告の出稿が止まるという事態が起こりました、それまであった収入が、一瞬でゼロ。この出来事をきっかけに、「他人の商品や広告収益に依存していては、収入そのものが安定しない。自分のサービスを持つ必要があるのだ」と気づかされました。いま振り返れば、この気づきこそが、その後の私の歩みを大きく方向づけることになりました。「声が震える」ほどの営業のつらさから見出した、ウェビナーという活路痛みの伴う経験こそが、進むべき道を照らすことがある。宮津氏がウェビナーにたどり着いたのも、まさにその経験からだったという。宮津代表:「自分のサービスを持たなければならない」と考えた私は、外注を活用した運営のノウハウを軸に、法人向けの研修サービスを立ち上げました。ただ、当時の私はまだ学生で、法人への営業を経験したことがありませんでした。テレアポや問い合わせフォーム、営業代行といった手段を一通り試したものの、新規開拓はなかなか前に進まず、苦労を重ねることになりました。とりわけつらくて記憶に残っているのが、商談そのものです。20代の前半、私よりもずっと年上の方々を相手に、新規の商談に臨んでいました。「それは本当に価値があるのか」「実績はあるのか」と問われる場面が続き、まだ何も持っていない自分にとって、それは大きなプレッシャーでした。商談の前になると心臓が激しく鼓動し、手や声が震えてしまう。そういう状態に陥っていたのです。転機が訪れたのは、ある方との出会いでした。コンサルティング事業を手がけている方とお話しした際に、「講演で話して、納得してくださった方だけが商談に来てくれる。初対面で疑われる前提から商談を始めるのではなく、先に価値を伝えて、納得した人だけと商談をする。」という趣旨のことを語っており、強く印象に残りました。ウェビナーを取り入れてからは、商談の空気が大きく変わりました。1時間かけて、自分の考え方やサービスの価値をじっくりとお伝えできる。はじめは流し聞きだった方も、話が進むうちに少しずつ引き込まれていく。そうしてこちらの人柄ややり方を理解していただいたうえで、納得してくださった方だけが商談に進んでくださります。商談の入り口の言葉も、それまでとは様変わりしました。「ウェビナー、とても良かったです」「講師の方と直接お話しできるとは思っていませんでした」。そうした一言から始まる商談は、かつてのものとはまるで別物でした。高圧的な方や、話しづらいと感じる相手は、ほとんどいなくなりました。「ぜひ教えてください」「うちの場合はどうすればいいでしょうか」。そんな前向きな姿勢で来てくださるようになったのです。無理に販売しようとしなくても、「こういうご支援ができます」とお伝えするだけで、「それではお願いします」と進んでいく。商談が10分で終わることもありました。商談の前に手や声が震えていたかつての自分とは、まったく別の世界が広がっていたのです。振り返ってみると、私の起業は、世の中にない新しいものを生み出そうという発想から始まったわけではありません。自分が嫌だと感じた痛みを、なくしたい。その想いから、現在のサービスにたどり着いたのだと思います。だからこそ、温度感の低い商談をなくし、ウェビナーを通して納得している方とだけ向き合える状態をつくることにこだわっているのです。前編では、「セミナーBPO」というサービスの全貌や、起業の原点となった中学生時代の憧れ、手や声が震えるほどの営業のつらさから活路を見出した転機について、お話を伺いました。後編では、5回連続の失敗を経た事業の進化、「人が苦手」と語る宮津氏が挑む組織化の壁、そして240社を超える実績を基盤とした今後の展望について、お話を伺っていきます。宮津駿/関西大学理工学部在学中にWeb制作・メディア運営・ECサイト運営を経験し、その後、BtoB向けウェビナー代行サービス「セミナーBPO」を創業。これまで240社以上・3,500回以上のウェビナー支援を行い、無形商材を扱う企業を中心に、商談前に理解・信頼を形成する営業導線を構築。企画設計・資料制作・集客・運営までを一気通貫で支援し、成約率20〜30%のウェビナー施策を多数実現している。現在はセールス・マーケティング領域のメディアへの寄稿や、経営者向けウェビナー登壇なども行っている。【会社概要】会社名株式会社ENVY設立年2024年代表取締役宮津駿事業内容ウェビナーマーケティング代行事業所在地兵庫県神戸市中央区磯辺通1丁目1番18号 カサベラ国際プラザビル707号室サイトURLhttps://e-nvy.jp/