インタビュイー:株式会社ENVY 代表取締役 宮津 駿様「ウェビナーを開催したものの、商談につながらない」という課題を抱える企業は少なくない。集客した人数が成果として語られがちなウェビナーの世界にあって、「購買意欲ある相手との商談だけが、カレンダーに入る」状態をゴールに掲げているのが、株式会社ENVYである。同社が展開するウェビナー代行サービス「セミナーBPO」は、企画や構成、資料作成から集客、当日の運営まで、登壇以外のすべてを代行する。単なる開催の支援にとどまらず、有効商談化までを見据えてサービスを設計している点に、大きな特徴がある。支援企業数は240社、累計開催代行数は3,500回を突破している。代表の宮津駿氏は、学生時代に個人事業主として歩みを始め、自身の営業経験で味わった苦労を起点に、現在のサービスへとたどり着いた人物である。フリーランスとしての歩みから数えれば、ウェビナー経験は10年に及ぶ。後編では、株式会社ENVY 代表取締役 宮津駿氏に、5回連続の失敗を経た事業の進化や、「人が苦手」と語る宮津氏が挑む組織化の壁、240社を超える実績を基盤とした今後の展望について、お話を伺った。5連続の失敗と顧客への伴走から生まれた、「完全代行」の必然性「セミナーBPO」という独自のサービスは、最初から完成していたわけではない。数々の失敗と、顧客と向き合う日々のなかで形づくられていった。宮津代表:ウェビナーに活路を見出したとはいえ、最初から成功したわけではありません。ウェビナーを開催しても、初めは5回連続で受注につなげることができませんでした。ノウハウをお伝えするだけでは、商談には結びつかない。そのことを、身をもって思い知らされたのです。そこから、なぜ商談に進まないのかを徹底的に研究しました。ただ知識を提供するのではなく、どうすれば自然に商談へと進んでいただけるのか。サービスの説明をどの場面で差し込むのか。そうした動線の設計を一つひとつ突き詰めていくうちに、再現性のある一定の型が見えてきたのです。やがて、知人から「ウェビナーのやり方を教えてほしい」と声をかけられるようになりました。そこで当初は、コンサルティングという形式でお手伝いをしていました。週に一度の定例会議を設け、資料や構成を添削しながら、お客様ご自身に作っていただく。そうした伴走のスタイルです。ところが、ここで一つの課題に直面しました。同じように添削をしても、作り手が社長ご自身なのか、サービス担当者の方なのか、また、マーケティングの経験がどれくらいあるかによって、出来上がるものの質に大きな差が生じてしまうのです。完成度の低いものを手直ししているうちに、結局は当社で大部分の作成を引き受ける、いわば半分代行のような状態になっていきました。そうした経験を重ねるなかで、「完全に当社が代行してしまったほうが、早く、質の高いものができる」と気づきました。お客様に作っていただく工程をなくし、集客から開催まで含めて当社がすべてお引き受けする。そうして有効商談化をゴールに据え直したことで、現在の完全代行という形にたどり着きました。特別に他社を意識して差別化を図ったというよりも、お客様と伴走するなかで、自然とこの形に行き着いたのです。「人が苦手」な社長が挑む、組織化とマネジメントの壁事業の勝ち筋は見えている中で、宮津氏には乗り越えるべき壁があった。従業員に仕事を任せる、という壁である。宮津代表:もともと私は、フリーランスとして活動しており、外注を活用しながら業務を進めていました。当時の自分は、チームを率いる器ではないと感じていて、組織化には強い抵抗があったのです。ところが、さまざまな経営者の方々と接するうちに、考え方が少しずつ変わっていきました。このサービスの価値を、組織として広げていきたい。そう考えるようになり、法人化へと踏み切りました。組織づくりのなかで苦労した点は、大きく2つあります。1つは、誰と組むか、ということです。以前、友人と共同で事業に取り組んだことがありました。ただ、関係性がフラットすぎたために意思決定が曖昧になってしまい、うまく機能させることができませんでした。もう1つは、再現性のある組織をつくることです。ディレクターを立ててみても、自分が入らなければ回らない状態がしばらく続きました。自分の思考やノウハウを言語化し、標準化していくことに、非常に苦労したのです。資料作成や運営を担っていただくメンバーに加えて、ディレクターやプロジェクトマネージャーを育てていく。そうして、私自身がクライアントワークや最終チェックから少しずつ手を離していける体制を、ここ1年ほどかけて整えてきました。正直に申し上げると、私はマネジメントや人と関わることが、得意なほうではありません。だからこそ、こちらの意図を細やかに汲み取ってくださる方にディレクターやマネージャーをお願いすると、進行がとても円滑になると感じています。一方で、私は指示を出すときに、どうしても言葉が淡白になりがちです。そこで、週に一度はZoomで顔を合わせる時間を設けたり、チャットでのやりとりにリアクションや絵文字を添えたりと、コミュニケーションには意識的に手をかけるようにしています。いまもプロジェクトごとに改善を重ねながら、誰が担当しても一定の成果が出せる仕組みづくりに取り組んでいる最中です。240社超の実績を基盤に、ショット型から新たなリカーリング事業へ積み上げてきた実績は、次の挑戦への土台でもある。宮津氏は、その先にどのような未来を描いているのか。宮津代表:今期については、売上を一気に伸ばすことは、あまり考えていません。それよりも、社内のオペレーションを研ぎ澄ましていく時期だと位置づけています。現状では、同時にご支援できる企業数に限界があり、月に10社から20社に留めるようにしています。だからこそ、まずは体制そのものを強くしていくことが先決だと考えています。そのうえで、現在力を入れたいと考えているのが、右腕となる人材の採用です。ただ、これは容易なことではありません。周囲の経営者の方々に相談すると、いずれの方も「同じ志を持つ人は、そう簡単には見つからない」と口をそろえて言います。当社のビジネスは、すでにある程度かたちが出来上がっており、創業の仲間とともに試行錯誤しながら育てていく段階ではありません。そのことが、かえって右腕を見つける難しさにつながっているのだと感じています。それでも、もし同じ目線で語り合える方が加わってくださったなら、ぜひ取り組んでみたいことがあります。利害関係のない経営者の仲間と、施策について意見を交わしたり、互いにフィードバックをし合ったりする時間は、私にとって何より有意義なものです。それと同じことを、自社の課題を当事者として一緒に考えながら、社内でも実現していきたいと考えています。そして中長期的には、これまで積み上げてきた実績を、新たな事業へとつなげていきたいと考えています。たとえば、これまで築いてきたお客様の基盤を生かし、会員同士が出会えるようなマッチングの仕組みをつくる。そうした構想を、これから具体的に描いていきたいと考えています。インタビュー後記今回は、株式会社ENVY 代表取締役 宮津駿氏にお話を伺いました。印象的だったのは、宮津氏の起業が、世の中にない何かを生み出そうという発想からではなく、自身が強く嫌だと感じた痛みをなくしたいという一心から始まっていたことです。手や声が震えるほどの営業のつらさを起点に、納得した方とだけ向き合える状態を追い求めた末に、いまのサービスがあります。また、マネジメントは得意ではないと率直に認めながらも、Zoomで顔を合わせ、チャットに絵文字を添えるといった一つひとつの工夫を重ねる姿には、誠実な向き合い方が表れていました。自らの痛みに正直であることが、一貫した事業をつくるのだと学ばせていただきました。宮津駿/関西大学理工学部在学中にWeb制作・メディア運営・ECサイト運営を経験し、その後、BtoB向けウェビナー代行サービス「セミナーBPO」を創業。これまで240社以上・3,500回以上のウェビナー支援を行い、無形商材を扱う企業を中心に、商談前に理解・信頼を形成する営業導線を構築。企画設計・資料制作・集客・運営までを一気通貫で支援し、成約率20〜30%のウェビナー施策を多数実現している。現在はセールス・マーケティング領域のメディアへの寄稿や、経営者向けウェビナー登壇なども行っている。【会社概要】会社名株式会社ENVY設立年2024年代表取締役宮津駿事業内容ウェビナーマーケティング代行事業所在地兵庫県神戸市中央区磯辺通1丁目1番18号 カサベラ国際プラザビル707号室サイトURLhttps://e-nvy.jp/