インタビュイー:株式会社環境ビジネスエージェンシー 代表取締役 鈴木敦子様株式会社環境ビジネスエージェンシーは、100年後の「活力ある日本、美しい日本」の実現を掲げ、環境と経済が両立する社会づくりに取り組んでいる。同社は、企業の環境対応を支える「環境法令サポート事業」と、森林再生を通じて都市部から中山間地域へ人の流れを生み出す「森林循環事業」を両輪とし、環境と経済の好循環を実現してきた。創業時から株式会社とNPO法人を併走させ、企業と生活者の双方から環境問題に働きかける独自の仕組みを築いている。その根底にあるのは、「100年後、日本中の空・水・土が美しく保たれている社会をつくる」というビジョンだ。同社を率いるのが、代表取締役の鈴木敦子氏だ。学生時代、単純な正解では解決できない環境問題の複雑さに向き合うこととなり、次第に関心を深め、製紙会社や環境コンサルティング会社を経て独立。組織の中では実現できなかった、生活者の行動変容や中小企業の環境対応を進めるため、自ら事業を立ち上げて、環境ビジネスの代理人・エコアクションの代理人という独自のポジションを確立してきた。後編では、株式会社環境ビジネスエージェンシー 代表取締役 鈴木敦子氏に、プレゼントツリー立ち上げ期の苦労、AIやスマート林業を見据えた今後の展望について伺った。事業が動き出すまでに向き合った、信頼という壁非営利で始まったプレゼントツリーは、キャッシュフローと社会的不信という二つの壁に直面した。事業を前に進めるために必要だったのは、まず信頼を積み上げることだった。鈴木代表:プレゼントツリーは非営利事業として始めたため、立ち上げ当初は大変苦労しました。初期は、個人の方々が子や孫の記念日に記念樹として、数本申し込んでくださる形が中心でした。多くの方に参加していただけた一方で、それだけではビジネスモデル上、固定費を賄うことはできませんでした。プレゼントツリーは、一次産業を代行するような立ち位置にあります。しかも私たちは、資金を先に負担する役割を担っているため、どうしても持ち出しが先行し、後から回収する構造になります。立ち上げ当初は、そのキャッシュフローが大きな負担でした。加えて、最も大きかったのが信頼の壁です。当時は個人から投資を募る詐欺的な事案が社会問題化しており、「本当に植えてくれるのか」「お金だけ預かって終わるのではないか」と疑われることが少なくありませんでした。苗木代や育樹代金を預かる仕組みである以上、そのお金を持ち逃げするのではないかという目を向けられたのです。その中で追い風になったのが、全国紙や全国ニュースで取り上げられたことでした。新しいビジネスモデルとして注目されたことが、結果的に信頼につながりました。全国紙に掲載されることは、一つの与信になります。そこから参加してくださる方が着実に増えていきました。大きな転機となったのは3年目でした。大手企業が1社参画すると、「あの企業がやっているなら」と、他の企業も次々に関心を持ち始めました。人が集まるところに企業が集まる。個人の参加者が1,000人ほど集まった頃から、企業の注目も高まっていきました。企業の参画によって、森林整備のフィールドが全国に広がっていきました。そうすると、実際に植えた苗木を現地で見てもらえるようになります。お預かりしたお金で、実際にこうして植えて育てている。その事実を現場で示せるようになって、ようやく疑いの目は薄れていきました。プレゼントツリーは、現地現物によって信頼を積み上げながら、少しずつ広がっていったのです。資金不足から人手不足へ──20年で変わった森林の課題20年前、森林を放置させていた最大の要因は資金不足だった。だが今、問題は「お金がない」ことではなく、「担い手がいない」ことへと移っている。森林も企業も、環境を守る仕組みそのものが、新たな局面を迎えている。鈴木代表:20年前にプレゼントツリーを立ち上げた頃、森林が放置される最大の要因は資金不足でした。森を持つ地権者にとっては、祖父が植え、父が育て、自分の代で伐って売るというのが一つの循環だったのですが、当時は国産材の競争力が大きく落ちていました。日本の木材自給率は史上最低レベルにあり、輸入材の方が同じ規格のものを安定的に手に入れやすかったため、流通もそちらに傾いていたんです。せっかく育てた国産材を伐って売っても二束三文にしかならず、伐採後にもう一度森を育てるだけの資金が残らない。再造林が進まなかったのは、まさにそのためでした。プレゼントツリーは、その足りない部分を外部からのお金で補う仕組みとして立ち上げたものです。ところが今は、課題の質が大きく変わっています。地権者の高齢化が進み、「お金があってもやる人がいない」という状況になっているんです。自分の代ではもう森の再生を見届けられないから、この森はいらないと言う方も増えています。私たちは地域の林業従事者に委託しながら森林整備を進めてきましたが、その委託先自体も高齢化で担い手が減ってきています。かつては資金がボトルネックでしたが、今は人手そのものが最大の課題になっているのです。この構造的な問題は、環境法令コンサルティングの分野でも同じです。日本の労働力人口はすでに大きく減少しており、環境対応を担う人材を確保すること自体が難しくなっています。現在、環境法令への対応が比較的進んでいるのは大企業が中心ですが、本来は中小零細企業も同じように対応すべきです。その一方で、中小零細企業ほど真っ先に人手不足の影響を受けます。だからこそ、これから必要なのは、人がいなくても環境対策が進められる仕組みです。たとえ社長一人の会社でも、必要な環境コンプライアンス対応を実行できるようにする。そのために、AIやロボティクス、DX・GXといった技術を活用しながら、持続可能な仕組みをつくっていきたいと考えています。森林の課題も、企業の環境対応も、いま求められているのは、善意や努力に依存しない仕組みへの転換なのだと思います。100年後の日本を、美しいまま次世代へ。AI×林業が拓く次の一手山梨県甲府市にある「四季の森」。植樹後10年が経ち、見事な森に育っている。100年後の日本の自然を、今と同じか、それ以上に美しいまま次世代へ継承する。その実現に向け、スマート林業やAI活用を視野に入れた新たな挑戦が始まっている。鈴木代表:森林分野でも、今後は人手をかけずに林業が成り立つような技術開発が重要になると考えています。いわゆる「スマート林業」と呼ばれる領域ですが、そうした技術を持つ方々との連携も視野に入れています。林業従事者がまだいる地域から担い手がいなくなってしまった地域へ人の流れをつくること、あるいは、人が減っても持続できる林業のあり方そのものを見直すこと。そこが、これからの10年で向き合うべきテーマだと考えています。企業はすでに環境経営に対して相当な努力をしています。それでも、現実には追いついていません。そのため、これまで十分に動かせていなかった一般生活者や中小企業にも、しっかり働きかけていく必要があります。そこが動かなければ、状況は変わらないと思っています。もう一つ、強く感じているのは、「森をつくる」という行為に参加したことのある人が、実はほとんどいないということです。登山やハイキング、森林浴の経験がある人は多くても、森を再生する営みに自ら関わったことがある人は、ほとんどいません。一方で、実際に足を運んだ人は、関心を持ってくださいます。森に触れ、森を育てるという体験そのものが、環境への意識を変えるきっかけになるのだと思います。だからこそ、これからも森と人との接点を丁寧につくっていきたいと考えています。技術によって支える仕組みと、人が実際に自然に触れる機会。その両方を通じて、100年後の日本につながる一歩を積み重ねていきたいと思っています。(イベント詳細)【Present Tree】https://presenttree.jp/5月17日(日)Present Tree in 笛吹芦川にて森づくりイベント開催6月6日(土)Present Tree for 湘南国際村めぐりの森Ⅱにて森づくりイベント開催★最新情報・詳細は以下URLよりhttps://presenttree.jp/get-involved/index.php#sec03【環境法令】https://kankyohourei.com/5月中旬、環境法令初心者向けの専門書「環境法令アップデート」(民事法研究会)が出版されます!インタビュー後記今回は、株式会社環境ビジネスエージェンシー 代表取締役 鈴木敦子氏にお話を伺いました。印象的だったのは、環境問題へのアプローチを善意や理念ではなく、「行動を生む仕組み」として捉えている点です。企業対応と生活者の行動変容、営利と非営利を横断しながら課題に向き合う姿勢に、構造から社会を変えようとする強い意志を感じました。環境を守るとは、想いを語ることではなく、続く仕組みを設計することなのだと学ばせていただきました。鈴木敦子/株式会社 環境ビジネスエージェンシー(略称:eba) 代表取締役認定NPO法人 環境リレーションズ研究所(略称:Er) 理事長大学時代に環境サークルを設立、サブゼミとして2年間研究を行う中で『環境の仕事』への就職を選択。以後、環境分野において様々な活動を展開。NPO法人・株式会社を両輪に、産民の環境・CSR活動支援をおこなう。最近では企業や自治体等からの講演や研修依頼も多数。環境を軸とした組織や事業の価値向上をサポートしている。【会社概要】会社名株式会社環境ビジネスエージェンシー創業1999年代表取締役鈴木敦子事業内容環境法令コンサルティング事業森林循環事業所在地東京都千代田区神田小川町2-3-12 神田小川町ビル8階サイトURLhttps://www.ebagency.jp/