インタビュイー:株式会社エコスマート 代表取締役 奈良 秀二様AIやデジタルによる効率化が加速する時代だからこそ、人の力にこそ価値がある」。そう語るのは、株式会社エコスマート代表取締役の奈良秀二氏。同社は保険プラットフォーム『エコスマほけん』を中核に、全国規模でコンタクトセンターを展開。効率や合理性だけに偏らず、顧客一人ひとりとの信頼関係を大切にしながら持続的な成長を続けてきた。金融商品の中でも生命保険は「どこで契約しても商品内容や保険料が変わらない」という特性を持つ。だからこそ「最後の決め手」となるのは、分かりやすい説明や安心感といった“人間力”に他ならない。奈良代表は、商品力や価格競争に依存しない独自のビジネスモデルを築き上げ、創業から15年にわたり顧客の信頼を積み重ねてきたのである。今回の前編では、エコスマートの事業全体像から、奈良代表が保険業界に挑んだ理由、そして経営の根幹に据える価値観について話を伺った。保険の最適化を支える独自プラットフォームの展開保険業界における“最適化”を実現する独自の仕組みを有する―それが、奈良秀二代表が率いる株式会社エコスマートだ。テクノロジーと人の力を融合させた同社のビジネスモデルは、どのように構築されてきたのだろうか。 エコスマほけん 総合ページ: https://es-g.jp/money/奈良代表:エコスマートは『エコスマほけん』という事業を展開しています。BtoCのエンドユーザー様と保険商品をつなぐプラットフォーム・マッチングサイトで、開発から運営まで一貫して自社で手掛けています。このプラットフォームを社内の営業担当者に提供し、お客様の保険を最適化するのがメインの事業です。さらに、全国にコンタクトセンターを設けているのも特徴です。アウトバウンドでお客様に保険をご提案し、ファイナンシャルプランナーがアポイントをいただいたお客様のもとへ訪問する―そんな流れでビジネスモデルが成り立っています。金融の最適化を事業の柱としていますが、その中でも特に保険に強みを持つ会社です。“真の実力主義”に惹かれて保険の世界へ奈良代表は数ある業界の中から、なぜ保険を選んだのか。その背景には、自身のキャリアを通じて体感した“実力主義”の世界と、市場規模の大きさがあった。奈良代表:前職では光通信という会社で働いていて、その中で保険事業に携わったのがきっかけです。新卒で入社した当初は別の事業にいましたが、異動で保険部門に移ったんです。そのときに“保険は真の実力主義だ”と実感しました。なぜかというと、保険は割引やキャンペーンが一切できないからです。ITや通信回線、コピー機などは“2カ月無料”のような販促が可能ですし、仕入れ価格30万円の商品を50万円や70万円で売ることもできる。営業担当者が粗利を調整したり、上司の裁量で価格を決めたりするケースもあります。ただ、そうした営業は最初の3年くらいは面白くても、続けるうちにだんだん疲弊してしまう。一方で、保険は無形の商品で、割引やキャンペーンに頼ることはできません。営業担当者自身の人間力が問われる。まさに“真の実力主義”であり、そこに大きな魅力を感じました。また、もうひとつの決め手は、市場規模の大きさです。生命保険市場は30兆円規模。電力業界が21兆円といわれているので、それ以上の大きさです。日本国内でも9番目に大きなマーケットで、しかも130年以上続く安定したビジネスモデルです。確かにレッドオーシャンではありますが、差別化や改善の余地はまだまだ残されている。だからこそ挑戦する価値があると思いました。さらに、保険はお客様に継続していただいている限り、保険会社からの手数料が毎月会社に入ってきます。いわばサブスク型のモデルです。だからこそ営業担当者も、お客様により丁寧に、やさしく接することができるのです。契約して終わりではなく、”お客様との関係性を育てる”という考え保険はどこで加入しても基本的な条件は同じ。だからこそ、最後に問われるのは“人間力”だと奈良代表は語る。経営スタンスの根底には、契約をゴールではなく出発点ととらえ、お客様と長期的な関係を築こうとする姿勢がある。奈良代表:私は“契約したら終わり”という考え方は好きではありません。営業の世界では、どうしても“契約を取ること”が最終目標になりがちですし、契約が成立した時点で一区切りと考えるケースも少なくありません。しかし、保険の世界ではそうはいかないのです。金融商品は形を変えることはできませんが、お客様との関係が長く続くビジネスだからこそ、契約後もフォローを丁寧に行ったり、お客様にもっと付加価値を感じていただける提案を続けたりする姿勢が大切だと思うんです。私は、一つの契約だけでなく、お客様の人生全体を見据えて長期的な価値を一緒に築いていきたい。いわゆる“ライフタイムバリュー(LTV:生涯にわたるお客様との価値)”をお客様と共有していくイメージです。こうした考え方を、経営スタンスとして大切にしています。金融商品は、どこで加入したとしても内容や金額は変わりません。だからこそ、最後に差がつくのは“人間力”です。お客様にどれだけわかりやすい説明ができるか、本気でお客様のことを考えているか。その想いが伝わるかどうかで、結果も変わってくるはずです。今は“商品を選ぶ時代”から“人が選ばれる時代”に移っています。AIの発達によって、お客様の目も一段と厳しくなり、比較されるのは当然です。だからこそ、今こそ本当に人間力が問われると思います。AIやデジタルが急速に普及する一方で、「人間力」を軸に信頼関係を築き続ける奈良代表の姿勢は、保険業界における新しい価値観を示している。後編では、起業に至ったきっかけに始まり、今後の目標について話を伺った。