インタビュイー:株式会社エンリード不動産 代表取締役 工藤 陣平様2019年に創業された株式会社エンリード不動産は、中古区分マンションの買取再販という競争の激しい市場において、「組織設計」で差別化を図ってきた。知識は横断的に持ちながら、実務は役割ごとに明確に分業することで、営業が営業に専念できる体制を構築。さらに権限移譲を前提とした組織運営によって、若いメンバーが自走する土台を整え、東京・福岡に続き、2026年2月には大阪へも進出するなど、拠点拡大を加速させている。同社を率いる工藤陣平氏は、22歳のときに携わったリノベーション案件で、不動産の価値が再生される瞬間に強い感動を覚え、この事業での起業を決意した。28歳で独立し、一人で事業を回すフェーズを経て、仲間を増やしながら組織化を推進。現在は、日本を代表する不動産の再生企業というビジョンのもと、社名に込めた「縁を導く」という想いを体現しながら、一兆円企業の実現を見据えている。後編では、株式会社エンリード不動産 代表取締役 工藤陣平氏に、人が育ち定着する組織設計の考え方や自走する組織を実現するための権限移譲、再生ビジネスを軸とした今後の展望についてお話を伺いました。エンリード不動産が実現する“人が育ち、定着する会社”不動産業界では、プレーイングマネージャーが主流となり、人材育成が後回しになりやすい構造がある。エンリード不動産はその前提を見直し、マネージャーとプレーヤーの役割を分離。さらに報酬設計や業務体制を再構築することで、人が育ち、定着する組織を実現してきた。工藤代表:当社の特徴を一言で言うと、「人が育つ組織設計」にあると思っています。不動産業界ではプレーイングマネージャーが一般的で、マネージャーであっても自ら案件を持ち、プレーヤーとして成果を求められます。そのため、「自分でやった方が早い」という判断になりやすく、実際にその方がインセンティブも得られる構造です。結果として、人材育成に時間を割くインセンティブが働かず、マネージャーが本来担うべき育成や組織づくりが後回しになってしまいます。人が育たないから離職が増え、また採用する。この繰り返しが、業界全体の構造的な課題だと感じていました。だからこそ当社では、この前提そのものを変える必要があると考え、マネージャーとプレーヤーの役割を明確に分離しました。マネージャーは自ら売上を追うのではなく、チームの成果を最大化することに専念し、その価値を正しく評価する仕組みにしています。また、報酬体系も見直し、マネージャーになるほど安定して収入を得られる設計にしました。マネージャーがやりがいを持ち、安心して役割を担える状態でなければ、下のメンバーも安心して成長することはできないと考えています。さらに、報酬設計においては固定給を高めに設定している点も特徴です。不動産業界ではインセンティブ重視の給与体系が一般的ですが、それでは成果が出るまでの期間に生活が不安定になりやすく、短期的な成果に偏る傾向があります。特に若手や未経験者にとっては、生活の不安がそのままパフォーマンスに直結してしまいます。そこで当社では、大手企業にも引けを取らない水準の基本給を設定し、まず安心して仕事に向き合える環境を整えました。生活基盤が安定することで、目の前の数字だけでなく、中長期的な成長や顧客への価値提供に意識を向けることができるようになります。結果として、未経験からでも優秀な人材が集まり、定着率の向上にもつながっています。また営業担当であっても、間取りや設計の考え方を理解し、自ら図面を引けるレベルまで知識を求めています。単に物件を仕入れて販売するのではなく、不動産の価値そのものを見極める力を養うためです。一方で、施工に関しては専門部署が担い、営業は営業活動に集中できる体制を整えています。多くの企業では営業が一気通貫で業務を抱えがちですが、それでは負担が偏り、生産性も上がりません。当社では、知識は一気通貫で持ちながら、業務は適切に分業することで、専門性と効率性の両立を図っています。こうした仕組みを積み重ねることで、人が育ち、組織が強くなり、その結果として持続的な成長につながっていく。この循環を意図的に生み出していることが、エンリード不動産の最大の特徴だと考えています。自走する組織をつくる──権限移譲という設計組織が大きくなるほど、経営者一人の判断では回らなくなる。エンリード不動産がたどり着いた答えは、組織が自走するための「権限移譲の設計」だった。工藤代表:不動産の業界では、代表がトッププレーヤーとして現場に立ち続ける会社も少なくありません。たとえ代表自身が営業をしていなくても、最終判断の権限がすべて代表に集まり、組織が自走できていないケースはよく見てきました。私は、そうした経営の形にはしたくありませんでした。会社を大きくしていくためには、現場が自分で考え、判断し、動ける組織になる必要がある。そう考えて、比較的早い段階から権限移譲を進めようとしました。ただ、最初からうまくいったわけではありません。3期目頃、「もう任せられるだろう」と判断し、現場への関与を一気に減らしたことがあります。今振り返ると、それは権限移譲ではなく、単なる権限放置でした。その結果、組織に歪みが生まれ、さまざまな問題が表面化しました。そこで私は、もう一度現場に入り直し、立て直しを図りました。ただ、いつまでも私が現場に張り付いていては、会社は成長しません。必要だったのは、権限移譲そのものの定義を見直すことでした。私たちがたどり着いた権限移譲の考え方は、とてもシンプルです。まず「枠」を決める。その人に求める役割は何か。どこまで自分で判断してよいのか。どこから先は誰に相談し、どのプロセスを踏むのか。言い換えれば、道幅を先に決めるということです。その範囲の中では、自由に走ってもらう。一方で、枠の外に出る判断には、ルールと段階を設ける。この設計こそが、私たちの考える権限移譲です。枠が明確になると、現場の動きは大きく変わりました。判断のスピードが上がり、迷いが減る。意思決定を重ねることで経験が蓄積され、人が育っていく。権限移譲は、スピードと人材育成の両方を同時に生み出す仕組みだと実感しています。当社では、役職ごとに判断範囲と相談ラインを明確に定めています。社長、統括本部長、部長、課長、主任といった階層ごとに、「どこまで任せるか」「どこから相談するか」を揃えています。管理部門も同様に、組織全体で共通のルールを持つようにしています。また、当社では年次に関係なく、実績を重ねた人には役職を任せています。現在、本社で部長を務めているのは新卒4年目のメンバーです。もともとは営業統括本部長が兼務していましたが、統括本部長に専念する体制へ移行する中で、実績を積んできたメンバーに部長職を任せました。プレーヤーとしての成果に加え、段階的に役割を担ってきた実績を評価した結果です。役職を上げて育てること、そして信じて任せること。この二つを両立させることで、組織は少しずつ自走し始めました。私自身も、すべてを自分で判断する経営から、組織と一緒に進む経営へと、考え方が大きく変わったと感じています。再生で日本一、その先にある1兆円企業最後に、今後の展望について、お話を伺った。工藤代表:私は「1兆円企業を目指す」と周囲に伝えています。規模を追っているというより、成長そのものを楽しんでいる感覚に近いです。規模が大きくなれば、責任も重くなりますが、その分、見える景色も変わっていく。その新しい景色を、常に見てみたいと思っています。目標としては、15期までに1,000億円規模の企業をつくることを一つの節目にしています。その先に1兆円企業があります。ただ、1,000億円も1兆円も、私一人では実現できません。だからこそ、社内で経営者レベルの人材を育てていく必要があります。新規事業が生まれ、それを任せられる人が育ち、事業が連鎖的に広がっていく組織をつくっていきたいです。私自身の役割は、手を動かすことではなく、挑戦できる環境や成長できる舞台を整えることだと思っています。自分が経験できなかった教育や環境を子どもに用意したいという想いはありますが、それは当社のメンバーに対しても同じです。私以上の経験を積み、どんどん成長してほしい。私たちが掲げているビジョンは、「日本を代表する不動産の再生企業になる」です。不動産に関わる再生を、できる限り自分たちの手で担っていく。中古区分マンションにとどまらず、将来的には一棟丸ごとの再生や、工場など用途の異なる建物の再生にも踏み込んでいきたいと考えています。再生は社会的にも注目されていますが、私たちにとっては事業の中核そのものです。社名に込めた想いも、この再生につながっています。不動産はよく「ご縁もの」と言われます。誰かが暮らしていた住まいが手放され、私たちが再生し、次の人へ引き継がれていく。その一連の流れ自体を縁と捉えています。縁を導くという考えから、「エンリード」という社名にしました。社員や取引先も含め、関わる人すべてをよい方向へ導ける企業でありたいと思っています。最後にマーケットの話をすると、中古マンションの買取再販はレッドオーシャンと言われていますが、中長期で見ればブルーオーシャンだと考えています。国内のマンション戸数は約700万戸ある一方で、年間の取引戸数は数万戸規模にとどまっています。これからリノベーションが必要な物件はさらに増えていきますし、新築も必ず中古になります。再生の需要は、長期的に広がっていくはずです。再生ビジネスは、社会課題の解決とも結びつく領域です。だからこそ、構造化し、スケールさせる必要がある。その役割を担える企業は、まだ限られていますが、エンリード不動産はそのポジションを本気で取りにいきたいと考えています。インタビュー後記今回は、株式会社エンリード不動産 代表取締役 工藤陣平様にお話を伺いました。拠点戦略で市場の変化を捉え、組織設計によって成長を再現する。エンリード不動産の歩みからは、経営を感覚ではなく構造で捉える姿勢が一貫して伝わってきました。福岡進出に見られる意思決定の考え方、組織づくりにおける試行錯誤、そして権限移譲を設計として捉える視点。そのすべてが、再生という事業をスケールさせるための土台になっています。成長を楽しみながら仲間とともに前に進む経営の在り方を、今回の取材を通じて学ばせていただきました。工藤 陣平/2013年 株式会社 未来都市開発 入社2019年 株式会社エンリード不動産 創業株式会社エンリード不動産 代表取締役。不動産業界にて経験を積んだ後、株式会社エンリード不動産を設立。中古区分マンションの買取再販事業を軸に事業を拡大し、短期間での成長を実現。現在は「日本を代表する不動産の再生企業」を目指し、組織づくりと事業成長の両軸で経営を推進している。【会社概要】会社名株式会社エンリード不動産設立年平成31年代表取締役工藤陣平事業内容不動産のリノベーション再販事業不動産の買取事業不動産売買・仲介・賃貸・コンサルティング事業所在地東京本社:東京都港区東麻布3丁目3-1 アイザック東麻布3・4階福岡支店:福岡県福岡市中央区天神2‐7‐21 天神プライム9階大阪支店準備室:大阪府大阪市北区芝田2-6-27 PMO梅田6階サイトURLhttps://en-lead.co.jp/