インタビュイー:PLANperfect株式会社 代表取締役 鮫島淳様PLANperfect株式会社(読み:プランパーフェクト)は、2015年に「plan perfect(創業当時の屋号)」として創業し、2022年に法人化を果たした。以来、一貫してキャリアコンサルティングを軸に、多くの企業と個人を支援し続けている。事業は、3歳児からのキャリア教育を展開する「キッズ事業部」、学生向けキャリア開発や教育機関向けキャリア教育を行う「アカデミー事業部」、個人向けのキャリア支援を担当する「パーソナル事業部」、そして法人向けに経営支援や社員・経営者(CEO)のキャリアコンサルティングを提供する「コーポレート事業部」の4部門に分かれている。人材の育成・開発、キャリア教育の推進および普及活動の各分野で着実に成長を続けている。代表取締役の鮫島淳(サメジマアツシ)氏は、会社勤めをしながら複数の業界を経験する中で、人材に対する強い想いを抱いた。鮫島氏は、自身が経験した「生活のための受動的な労働」への疑問から、「人生を主体的に形成するキャリアという考え方を多くの人に提供する場を作りたい」という想いを持つようになったという。その志がPLANperfect(プランパーフェクト)の創業に繋がった。PLANperfect(プランパーフェクト)は、「『アナタ』の人生に感動を」というフィロソフィーを掲げ、従来型の経営コンサルティングとは異なり、人の感情に深く寄り添う経営支援・キャリアコンサルティングを提供している。前編では、同社の発展経緯について、「最高感情責任者(Chief Emotional Officer)」を務める鮫島代表に話を伺った。数字から人へ―鮫島代表が歩んだキャリア転換の軌跡2015年、サラリーマンとして勤務を続けながらPLANperfect(プランパーフェクト)を創業した鮫島代表。現在では珍しくなくなりつつある「サラリーマン起業」だが、10年近く前という、時代に先駆けて実現したその契機と経緯について伺った。[創業時の父と私]鮫島代表:最初のきっかけは、会計事務所系列のコンサルティング会社で財務コンサルタントとして働いていた頃にあります。私は主に財務を担当していましたが、業務を通じて「数字を追うだけでは現実的な戦略に結びつかない」と強く感じました。真の戦略立案には、社員一人ひとりの状況を深く理解することが不可欠だと気づいたのです。そのため私は、人事分野のコンサルティングに力を入れ始めました。人との面談を通して問題の根本原因を探り、その過程で「人間という存在の面白さ」に惹かれていきました。数字だけの戦略は机上の空論に陥りやすく、結局は現場の人々がどのように動くかという点が最も重要だと実感したことが、起業への興味に繋がりました。また、それ以前に勤務していたアンファー株式会社での経験も大きな転機でした。スカルプDをはじめとする商品の企画を手がける経営企画室で、私は年間約100本の新規企画を提案していました。時間の制約をあまり受けず自由な発想を促される環境の中で、自分自身で何かを始めたいという気持ちが芽生えたのです。しかし、当時はまだ具体的に「何をしたいか」が明確ではありませんでした。そのことを社長に相談すると、「規模に関わらず起業するならまず会計を理解するべきだ」と助言を受け、自分の会社の決算を組めるように会計事務所へ転職しました。会計事務所で経験を積み、企業経営者と交流を深めるうちに、経営者のサポートに強い関心を抱くようになり、結果的に「人」を軸とした支援をテーマに起業を決意しました。ライスキャリアからライフキャリアへ起業を決意した鮫島代表が「キャリア」という分野へ進もうと決意した背景には、サラリーマン時代に関わった人々に対して抱いた違和感と強い想いがあったという。[PLANperfect株式会社のoffice風景]鮫島代表:私がキャリアという分野に着目したきっかけは、サラリーマン時代に感じた社員の活気のなさや未来への不安感でした。当時、私は評価制度を設計したり人事面談を行ったりと、人に関わる業務を多く担当していました。しかし、多くの社員が将来の目標を見出せず、「今日食べるために働く」といった、いわゆる「ライスキャリア」的な働き方をしている姿を見て疑問を感じました。ただ与えられた業務をこなすだけの働き方では、結果として個人のモチベーションが上がらず、日本経済の成長を阻害する一因にもなっているのではないかと思ったのです。そこで、社員一人ひとりが未来から逆算してキャリアを形成する「ライフキャリア」の視点を持つきっかけを提供したいと考えました。ちょうどその頃、「キャリアコンサルタント」が国家資格となったことを知り、これを機に本格的にキャリア分野の勉強を開始しました。最初はサラリーマン業務と並行して活動を始めましたが、次第に両立が難しくなり、独立を決意しました。また、独立に関しても勤務先から理解を得て、円滑に起業に踏み切ることができました。起業は一人ではなく、私を含めて3人でスタートしました。共同創業者とは、会計事務所のコンサルティング研修会で出会いました。全国から集まった研修参加者の中で、会社をより良くするための議論を通じて意気投合し、「自分たちで何かを始めよう」という想いが一致したことがきっかけでした。縁と情熱で築いたキャリア支援の道現在、四つの主要事業を展開しているPLANperfect(プランパーフェクト)。その成長過程について、鮫島代表は「縁」に恵まれながら着実に規模を拡大してきたと語る。[人々の人生を表現した会社のロゴマーク]鮫島代表:最初に安定した収益を上げたのは、「コーポレート事業部」でした。起業前に勤めていた会計事務所時代のお客様から、独立後再度支援を依頼されたことや、中小企業診断士だった父が他界した後に取引先を引き継いだことが主なきっかけでした。当初は補助金申請支援を中心に活動しながら、私が本来目指していた人材支援、特に社員の面談や現代に適した組織作りを進めていました。こうした活動が母校の明治大学の小川名誉教授の耳に入り、小川ゼミや商学部全体で学生向けにキャリア講演を行う機会をいただきました。この講演活動が企業や他の学校法人、専門学校にも広がり、徐々に講演の需要が高まりました。講演を通じて学生個人から就職活動やキャリア相談の依頼が増え、個人向け支援(BtoC)も自然に始まりました。その流れを受けて「パーソナル事業部」を立ち上げました。法人向けの面談の中で、転職・退職や大学院進学、ファイナンシャルプランなど、個人的なキャリア相談の需要が増えたためです。しかし当初は社内でも収益化の難しさから反対意見がありました。ハローワークや大手人材企業との差別化が明確でないと収益を上げるのが難しいという懸念からでした。しかし、私の狙いは収益よりも、真剣にキャリアを考える人を増やすことにありました。自分たちの経験を活かし、「人生を振り返ったときに感動を与えられる存在」でありたい。そんな想いを大切にしながら、柔軟に様々な相談に対応できる「何でも屋」としての姿勢を貫きました。ビジョンを見失わず、少しずつ道を切り拓いてきたことが今日のPLANperfect(プランパーフェクト)を作り上げています。家族で育むキャリア意識―キッズ事業部の革新的取り組み3歳児からのキャリア教育を展開する「キッズ事業部」は、日本初である「幼児を対象としたキャリア教育」であり、PLANperfect(プランパーフェクト)の革新的な取り組みである。その立ち上げのきっかけとなったのは、現在Kids Career School代表を務める菅貴子(スガタカコ)氏の「キャリア教育は幼少期から考えるべきだ」という言葉だった。利益化が難しいとされる「キッズ」事業への挑戦を決断した背景や原動力について、鮫島代表に詳しく話を伺った。[KidsCareerSchool代表者菅と想いを込めたエンブレム]鮫島代表:個人向け教育事業(BtoC)は、どうしても一人あたりの単価設定が難しく、特に幼児教育分野では大手企業のベネッセ様のような既存プレーヤーとの競争も激しくなります。そのため社内でも、法人事業に集中した方が良いとの意見が多かったのです。しかし私は、菅氏の考え方に強く共感しました。キャリア形成は役割が多岐にわたる大人になってからではなく、役割が比較的単純な幼児や学生の段階から始めるべきだという視点に納得したのです。幼い頃から広い視野で将来を考えるきっかけを提供できれば、長期的に大きな価値を生み出せると感じました。短期的な利益化が難しいことは承知していましたが、私たちが目指したのは、子供たちが将来的に社会人になった際に、自分たちの存在を思い出してくれるような長期的なインパクトです。短期的に収益を得られなくとも、人々の記憶に残り続ける会社となることを目標に据えました。こうした考えから、2019年より幼児キャリア教育の事業を本格的にスタートしました。事業開始から5年以上が経過し、ようやく収支のバランスが整い始めています。初期段階では収益化が非常に難しく、継続的な補填を必要とする時期もありました。しかし、法人顧客である企業経営者のご子息様を最初の受講生として迎え、少しずつ実績と評価を積み重ねていきました。口コミを通じて富裕層を中心に徐々に広がり、特別感のある教育サービスとして認知されるようになったのです。ただし、本来の目標は特定の層だけでなく、広く一般家庭にも普及させることにあります。そのため、家族全体を巻き込んだ独自の教育方法を構築しました。具体的には、子供には専任のキャリア教育講師を、保護者にも別のキャリア教育講師を配置するという二人体制を採っています。子供は身近な大人の影響を強く受けるため、子供だけに教育を施しても家庭内の環境が整わなければ効果が薄れると考えたのです。この二人体制により、家庭全体の意識改革を促し、教育効果を最大化しています。家族全員が同時にキャリアについて深く考える機会を持つことで、その効果が口コミとなり、事業の拡大につながっているのです。将来的にはさらに広範な層にサービスを提供できるよう、継続的に努力を続けています。前編では、PLANperfect(プランパーフェクト)株式会社の創業時からのお話を伺った。後編では、「最高感情責任者」に込められた想いや企業を目指す方へのメッセージを伺う。