インタビュイー:GeNiE株式会社 代表取締役社長 齊藤 雄一郎様GeNiE株式会社は、アコム株式会社の100%子会社として設立された金融テクノロジー企業である。提携企業のアプリやWebサービスに金融機能を組み込む「マネーのランプ」を展開し、必要なタイミングで必要な金融サービスへアクセスできる環境づくりに取り組んでいる。独自の与信モデルと金融基盤を強みに、金融をより身近な存在へ変える挑戦を続けている。代表取締役社長を務める齊藤雄一郎氏は、新卒でアコム株式会社へ入社後、現場業務から本部業務まで幅広く経験してきた。業界の大きな転換期も最前線で経験しながら、金融の本質や経営の意思決定を学び続けてきた人物である。GeNiE株式会社では、「誰よりも人々を信用する」というパーパスを掲げ、90年間受け継がれてきた「人を信じる」という思想を、現代の金融へとつなげようとしている。後編では、GeNiE株式会社を「子会社」として立ち上げた戦略的意義や、実績を積み重ねる中で見えてきた課題、そして金融が自然に社会へ溶け込む未来について、お話を伺った。なぜ「子会社」だったのか。強力な基盤が生んだGeNiEの競争優位性GeNiEは、アコムにとって約25年ぶりとなる国内新規事業として誕生した。なぜ独立ではなく「子会社」という形を選んだのか。その背景には、新しい金融インフラを実現するための明確な戦略があった。齊藤代表:GeNiEを立ち上げる際、私は最初から「アコムの中で挑戦すること」に大きな意味があると考えていました。もちろん、新しい事業であれば独立して起業するという選択肢もあります。しかし、金融事業は一般的なITサービスとは異なり、アイデアやシステムだけでは成立しません。特に重要になるのが、信用と資金調達力です。金融サービスを継続的に提供するためには、安定した資金を確保できること、そしてパートナー企業や利用者から信頼されることが欠かせません。その点で、アコムが長年積み重ねてきた信用や経営基盤は非常に大きな強みになると考えていました。GeNiEが目指しているのは、日常サービスの中へ金融機能を組み込む新しい金融インフラです。その実現には、パートナー企業から「安心して一緒に取り組める」と思っていただける信用力が必要でした。だからこそ私は、独立ではなく子会社という形に大きな価値があると考えたのです。実際、GeNiEでは基幹システムもゼロから構築しています。金融サービスは、画面やアプリだけを作れば成立するものではありません。審査基盤や債権管理、法規制対応、資金管理など、多くの仕組みが一体となって初めてサービスとして機能します。私たちは数十億円規模の投資を行い、フルクラウド型の基幹システムを整備しました。こうした先行投資を実現できたのも、アコムの信用力と経営基盤があったからこそです。結果としてGeNiEは、単なるローンサービスではなく、多くのパートナー企業と連携できる金融プラットフォームとしての土台を築くことができました。エンベデッド・ファイナンスは、今後さらに広がっていくと思います。しかし、金融事業は簡単に参入できる世界ではありません。信用力、資金調達力、システム基盤、法規制対応といった要素が必要になります。私は、この強固な基盤こそがGeNiEの大きな競争優位性になっていると考えています。アコムが長年築いてきた信用を活かしながら、新しい金融のあり方に挑戦する。その両方を実現するための形が、「子会社」という選択だったのだと思っています。GeNiEが目指しているのは、社会に根付く金融インフラを築くことです。その実現に向けて、これからも強固な基盤を活かしながら、新しい金融の可能性を広げていきたいと考えています。市場を育てながら広げる。実績の先に見えてきた課題と挑戦<東京金融賞 受賞の様子>設立からわずか数年で、多くのパートナー企業との提携を実現してきたGeNiE。その一方で、エンベデッド・ファイナンス市場を広げていくうえでの課題も見えてきた。齊藤代表:GeNiEは2022年の設立以降、多くの企業様とご一緒する機会に恵まれてきました。現在では、人材業界やIT業界など多様な業界の企業様と提携を進めています。累計申込者数も50万人を超え、多くのユーザーの方にサービスをご利用いただけるようになりました。また、2024年には東京都が主催する「東京金融賞」を受賞しました。私たちが取り組んでいるエンベデッド・ファイナンスというモデルが、社会的にも一定の評価をいただいたことは大きな励みになっています。一方で、私たちはまだ道半ばだとも感じています。現在は提携企業も増えていますが、利用状況にはパートナー企業ごとの差もあります。サービスに金融機能を組み込めば自然に利用が広がるわけではなく、ユーザーにとって本当に価値のある形で届けられているかが重要になります。また、そもそも「エンベデッド・ファイナンス」という言葉自体の認知度も、まだ高いとは言えません。海外では一般的になりつつある概念ですが、日本ではまだ発展途上の市場です。そのため、パートナー企業へ提案する際にも、「なぜ金融機能を組み込む必要があるのか」「ユーザーにどのような価値が生まれるのか」といった説明から始めることが少なくありません。それでも私はこの状況をネガティブには捉えていません。むしろ、新しい市場をつくるときには当然通るべきプロセスだと思っています。よく例え話としてお話しするのが、ロゼワインです。白ワインの中に赤ワインを一滴ずつ落としていく。最初はほとんど色が変わりません。しかし、ある瞬間を超えると、一気にロゼ色へと変わります。市場の変化も同じだと思っています。新しい価値観は、一朝一夕で社会に浸透するものではありません。小さな実績を積み重ねながら、一滴ずつ変化を加えていく。その積み重ねが、ある時点で大きな流れになるのだと思っています。だからこそ私たちは、単に提携社数を増やすことだけを目標にはしていません。パートナー企業ごとのサービスやユーザーの特性を深く理解し、本当に価値のある金融体験を一緒につくっていくことを重視しています。GeNiEの挑戦は、一社だけで完結するものではありません。パートナー企業とともに新しいユーザー体験を生み出し、その成功事例を積み重ねながら市場そのものを育てていく。そのプロセスこそが、いま私たちが取り組んでいる最も重要な仕事だと思っています。金融をもっと自然な存在へ。GeNiEが描く新しい信用の未来GeNiEが目指しているのは、単なるローンサービスの拡大ではない。金融そのもののあり方を変え、人々が金融を意識することなく必要な支援へアクセスできる社会を見据えている。齊藤代表:私は、これからの金融はもっと生活の中に自然に溶け込んでいくべきだと思っています。これまでの金融は、必要になった人が自ら金融機関を探し、申し込みを行うものでした。しかし、本来は人が金融に合わせるのではなく、金融の側が人々の生活や行動に寄り添うべきだと思うのです。GeNiEが取り組んでいるエンベデッド・ファイナンスも、その考え方の延長線上にあります。現在はローン機能の組み込みを中心に展開していますが、私たちが描いている未来は、それだけにとどまりません。まずはローン領域で実績を積み重ね、その先では後払いやウォレット機能など、より幅広い金融サービスへ展開していきたいと考えています。さらに将来的には、パートナー企業との資本業務提携や、私たちが構築してきた金融基盤そのものを提供するプロセッシング事業へと発展させていく構想もあります。また、日本の金融市場そのものにも大きな可能性があると感じています。日本では、いまでも「お金を借りる」という行為に対して、どこかネガティブなイメージが残っています。しかし本来、金融は人の挑戦や可能性を支えるためのものです。事業を始めるための資金かもしれませんし、新しい仕事に挑戦するための準備資金かもしれません。金融は人生の選択肢を広げるためのインフラであるはずです。だからこそ私は、エンベデッド・ファイナンスを通じて、「お金を借りる」という行為そのものに対する社会の見方も少しずつ変えていきたいと思っています。金融がもっと身近になり、必要なときに自然に利用できるようになる。そして、一人ひとりの挑戦や可能性を支えられる社会になっていく。GeNiEが目指しているのは、そうした未来です。もちろん、その実現は簡単ではありません。しかし、だからこそ挑戦する価値があると思っています。私たちはこれからも、パートナー企業の皆さまとともに新しい金融体験をつくりながら、金融がより自然に人々の生活へ溶け込む社会の実現を目指していきたいと思っています。編集後記今回は、GeNiE株式会社 代表取締役社長 齊藤雄一郎氏にお話を伺いました。インタビューを通じて印象的だったのは、齊藤代表が一貫して「人を信じる」という視点から金融を捉えていたことです。90年前の呉服店時代から受け継がれてきた思想を、現代のテクノロジーやデータ活用によって次の時代へつなげようとする姿勢に、強い誠実さを感じました。ティッシュ配りから始まった現場経験や、業界の「冬の時代」で経営を学び続けた経験が、いまのGeNiEの挑戦へとつながっている点も印象に残ります。変化の大きい時代だからこそ、「何を守り、何を変えるのか」を問い続けることの重要性を学ばせていただきました。齊藤 雄一郎/大学卒業後、アコム株式会社に新卒入社。支店勤務を経て経営企画部へ。以降、企画部門を中心に全社戦略の立案やマーケティング業務に従事。2016年、フィンテックが日本で注目され始めた頃、テクノロジー活用を推進すべく、イノベーション企画室を立ち上げ。デジタル領域におけるサービス企画・立案、新規事業開発などに取り組む。マーケティング部門の責任者を経て、2022年4月、アコムの社内起業家としてGeNiE株式会社を設立。【会社概要】会社名GeNiE株式会社設立年2022年代表取締役社長齊藤 雄一郎事業内容エンベデッド・ファイナンス所在地東京都中央区八丁堀二丁目10番9号