インタビュイー:株式会社ゴンドラ 代表取締役社長 古江 恵治 様創業からまもなく10年の節目を迎える株式会社ゴンドラ。広告運用、Web制作、CRM、システム開発までを横断的に手がけ、課題の発見から実行・改善までを一気通貫で支援する「伴走型・統合型」の実行力を強みに成長してきた。特定の業界にあえて絞らず、企業のみならず官公庁や自治体の現場にも深く入り込み、成果にこだわり続ける姿勢は、多くの顧客から厚い信頼を集めている。同社を率いるのは、代表取締役社長・古江恵治氏。ガソリンスタンドでの現場勤務を起点にIT業界へ転身し、上場企業の取締役として事業成長を牽引した後、仲間とともに独立した。創業直後には離職が相次ぐ厳しい局面も経験したが、その過程で「人」と真正面から向き合い、組織のあり方を根本から見直してきた。古江氏が掲げるのは、少数のスターに依存する組織ではなく、全員が主役となる「全員精鋭」という考え方。そして、社員だけでなく、その家族の幸福までを視野に入れた社是「五方良し」である。さらに古江氏は、これからのゴンドラの成長に向けて、明確な経営哲学を持っている。その核となるのが、「右手にビジョン、左手に修正能力」という考え方だ。理想や大義を掲げ続ける一方で、時代や環境の変化に応じて柔軟に舵を切る。このバランス感覚こそが、過去と未来の経営を支えている。本稿では、株式会社ゴンドラ・代表取締役社長・古江恵治氏に、キャリアの原点と、創業期の苦悩を経て形づくられた独自の組織論についてお話を伺っていく。業界を絞らない実行支援。非効率が生む強みとは。インターネット広告からデジタルマーケティングまで、幅広い領域で企業や行政組織を支援してきた株式会社ゴンドラ。現在、企業・官公庁・自治体あわせて約350社と継続的な取引を行い、業界を限定しない伴走型の実行支援で独自の存在感を築いている。なぜゴンドラは、あえて業界を絞らないのか。その背景には、古江代表自身の原体験がある。古江代表:当社はITを事業とする会社で、現在10期目に入っています。2026年3月には創業から丸10年を迎えます。ITと一口に言っても領域は非常に広いのですが、当社では大きく4つの事業ドメインを展開しています。1つ目が創業以来取り組んできたインターネット広告事業、2つ目がウェブソリューション事業、3つ目がSNS運用を中心としたソーシャルマネジメント事業、そして4つ目がCRM領域を軸とするデジタルマーケティング事業です。デジタルマーケティングでは、既存顧客のLTV向上を目的とした取り組みを主に行っています。現在は企業・官公庁・自治体を合わせて350社以上と継続的にお付き合いさせていただいており、ウェブマーケティング、DX支援、ローコード開発プラットフォームなど、各事業ドメインのソリューションを組み合わせながら支援を行っています。単一の施策にとどまらず、複数の手段を組み合わせて課題解決にあたることが、当社の特徴です。こうした事業展開の中で、当社が一貫して大切にしているのが、特定の業界や業種に縛られず、課題整理から実行、分析、レポーティングまでを一気通貫で支援する「伴走型」のスタイルです。業界を絞らない理由について尋ねられることもありますが、その原点は、私自身の過去の経験にあります。私は2010年、当社の株主でもある株式会社パイプドビッツ(現・スパイラル株式会社)で新規事業開発を担当していました。当時、CFOから「制限を設けず、自由に新規事業を立ち上げてほしい」と任されたことをきっかけに、業種を限定せず、お客様に必要とされる仕事にはすべて挑戦してきました。業界を絞らないことは一見すると非効率に見えるかもしれませんが、「できます、やります、任せてください」という姿勢で数多くの案件に向き合うことで、多様な経験を積むことができました。それが結果的に自分自身の成長につながったと感じています。私には、ターゲットを絞るよりも、まずは挑戦してみるほうが性に合っていたのだと思います。また、お客様が望むことに応え続けていく中で、気づけばその分野の第一人者として頼られるようになることがあります。そうした積み重ねが、実行支援や伴走支援へと発展し、現在のゴンドラの強みを形づくってきました。私は、人は仕事を通してこそ成長できると考えています。さまざまな筋肉を鍛えるように、多様な仕事に触れることが、人間力の醸成につながる。そうした実感があるからこそ、ゴンドラでも一定のルールの中で、自由に挑戦できる環境づくりを何よりも大切にしています。ガソリンスタンド勤務からIT企業の経営へ。挑戦を重ねたキャリアの軌跡。就職氷河期にガソリンスタンドからキャリアをスタートさせ、複数の企業を経て上場企業の役員、そして独立へ。異色ともいえる歩みの背景には、数々の人との出会いと、その都度下してきた決断があった。古江代表の原点と、ゴンドラ創業に至るまでの軌跡を辿る。古江代表:私は今年、54歳になります。東京の大学を卒業した31年前、地元である北海道へのUターン就職を希望していましたが、就職氷河期の真っただ中で、思うように就職先が見つかりませんでした。そこで、学生時代にアルバイトをしていたガソリンスタンドにそのまま入社したのが社会人としての第一歩です。最初の3年半はガソリンスタンドでの現場勤務を経験しました。その後、複数の企業を経験し、2010年11月に株式会社パイプドビッツ(現・スパイラル株式会社)へ転職しました。振り返ると、どの会社でも素晴らしいお客様や上司に恵まれました。前職・前々職で共に働いた仲間の中には、現在ゴンドラで役員や社員として活躍してくれている人もいます。こうしたご縁は、今の私にとってかけがえのない財産です。パイプドビッツへの転職を決めた理由は、積み上げ型のビジネスモデルで着実に成長している点に魅力を感じたからです。当時は開発を主軸とする会社でしたので、マーケティング領域を期待されて入社した私は、社内では少し異色の存在だったかもしれません。入社後には3カ月の試用期間があり、その間に成果を出せなければ次はない、という強い緊張感を持っていました。成長企業であるパイプドビッツにおいて、即戦力として期待されていることも感じていましたし、「待っているだけではダメだ」と思っていたんです。だからこそ、受け身ではなく、自分から仕掛ける必要があると考えていました。入社から2カ月ほど経った頃、これまで自分が携わってきた広告事業を社内で立ち上げれば、会社にとって明確な価値を出せるのではないかと思うようになりました。そこで執行役員会に提案し、承認を得て、1人部署として広告事業部門を立ち上げることになります。結果的に、この挑戦が成果につながり、後のゴンドラ創業へと連なる最初の一歩になりました。試用期間の終盤になると、「この会社でどこまでやるのか」という問いが、より現実的なものとして自分の中にありました。安定した環境に戻るという選択肢が頭をよぎらなかったわけではありません。ただ、最終的に私はパイプドビッツに残る決断をしました。入社すれば売り上げを伸ばせるという手応えがあったこと、ストックビジネスやサブスクリプションモデルを本格的に学びたいという想いがあったこと、そして何より、当時の社長であり、現在もグループ代表を務める佐谷宣昭氏と一緒に仕事がしたいと強く思うようになっていたからです。この人のもとで、もっと挑戦したい。その気持ちが、試用期間を通じて確信に変わっていきました。本採用後は、当時のCFOから「制限なく挑戦してほしい」という方針を示され、広告以外の領域にも積極的に取り組みました。その一つが、AKB48の選抜総選挙の投票システム開発です。プログラムの知識がほとんどない状態でしたが、社内研修を自ら受け、「これならできる」と判断しました。多くの仲間の協力を得て無事に稼働し、この案件をきっかけに、パイプドビッツの株価が3営業日連続でストップ高となりました。今では、強く印象に残る出来事の一つです。広告事業を起点に新規事業を広げ続けた結果、2012年にはパイプドビッツの取締役に就任し、多くの事業に携わる機会を得ました。しかしその一方で、一取締役という立場に安住してはいけないという想いも芽生えていきます。変化の激しいウェブマーケティング業界においては、最終責任を自ら負い、より高速でPDCAを回さなければ勝ち残れないと考えるようになったからです。そこで2015年、パイプドビッツが東証一部上場を果たしたタイミングで、佐谷代表に分社化を申し出ました。こうした経緯を経て、2016年3月に株式会社ゴンドラとして独立。私の考えに共感し、「一緒にやりたい」と言ってくれた約25名の仲間とともに、新たなスタートを切ることになりました。売上はあっても理想の姿には届かない──暗黒の2年間がもたらしたもの 独立後、古江代表を襲ったのは、想像以上に大きな危機感だった。売上は立っている。利益も出ている。しかし、目指していた会社の姿には届いていない。創業からの最初の2年間は、理想と現実のギャップに向き合い続ける「暗黒の時期」だったという。古江代表:パイプドビッツという大きな組織から、わずか25名で独立したわけですから、創業当初は本当に大変でした。社長業については、三人の経営者を間近で見てきたので、ある程度のイメージは持っていたつもりでした。ただ、実際に自分がその立場に立つと、見える景色はまったく違いました。社員には不安を見せるわけにはいきません。毎日、社長の仮面をかぶって出社し、常に最高のケースと最悪のケースを想定しながら経営に向き合っていました。特に1期目と2期目は、私にとって暗黒の2年間でした。私を信じてついてきてくれた仲間の多くが離れていき、離職率は20%を超えました。そんな中でも、当時のメンバー約10名が今も一緒に働いてくれていることは、本当にありがたいことだと思っています。一方で、会社としてすぐに立ち行かなくなる状況ではありませんでした。売上はあり、利益も6,000万〜8,000万円ほどは出ていたからです。ただ、この2年間は数字が大きく伸びることもなく、成長は横ばい。自分が思い描いていた会社の姿とは明らかにズレていました。このままでいいのか。そうした強い危機感から、そもそも「自分たちは何を目指す会社なのか」を根本から見つめ直す必要があると感じました。そこで役員陣と何度も議論を重ね、ゴンドラはどうあるべきか、どんな会社をつくりたいのかを徹底的に話し合いました。社外研修の導入やパートナー企業の協力も得ながら模索を続ける中で、3期目にフィロソフィーを整え、理念経営へ舵を切る決断をしました。経営理念そのものは私が定めましたが、クレドをはじめとする会社の在り方に関わる部分は、役員全員で議論しながら創り上げていきました。その内容をもとに「Gondola Philosophy」を整備し、企業文化をよりシャープにし、ゴンドラらしい価値観を育てていく。あの決断が、後の成長につながっていると感じています。価値観の言語化を進める中で、当社は一般的に言われる「三方良し」ではなく、「五方良し」を社是として掲げることにしました。事業を通じて価値を届ける相手は、直接のお客様だけではないと考えたからです。私たちが大切にしているのは、①当社のお客様や仕入先を含む取引先の皆さまが、安心して事業に取り組めているかどうか。そして、②法人としての当社ならびに株主が健全に成長し、事業を継続できる状態にあるかという点です。そのうえで常に意識しているのが、③お客様のお客様にあたる消費者の皆さま、そして地域社会にとって、本当に価値のあるサービスになっているかどうかという視点です。目の前の取引だけでなく、その先にいる人や社会にまで価値が届いているかを問い続けています。同時に、経営として欠かせないのが、④当社のメンバー一人ひとりが誇りとやりがいを持って働けているか、そして⑤そのメンバーのご家族にも胸を張れる会社であるかという点です。社員本人だけでなく、家族からも「良い会社だね」と言ってもらえる存在でありたい。その想いは、役員陣との対話を重ねる中で、自然と共通認識になっていきました。こうした価値観を前提にしているからこそ、組織づくりにおいても、一般的な「少数精鋭」ではなく、「全員精鋭」という考え方を掲げています。一部の優秀な人に依存するのではなく、五方それぞれに価値が行き渡る状態をつくること。その積み重ねこそが、「五方良し」を実現するための土台になると考えています。理念を掲げるだけでは、組織は変わらない。価値観を浸透させるためには、採用や育成の仕組みが欠かせない。ゴンドラでは、どのような考え方で人材と向き合っているのだろうか。古江代表:採用については、以前はスパイラルグループ全体で行っていた時期もありましたが、ここ5年ほどは自社で新卒採用を行っています。中途採用についても、労働分配率や業績とのバランスを見ながら、第二新卒や即戦力など、その時々の状況に応じて進めています。当社では、採用後に理念や価値観をしっかり共有し、長く活躍できる状態をつくることを重視しています。そのために欠かせないのが教育です。教育では、働き方の基礎となる概念的な学びと、業務に必要なテクニカルな知識の両方を用意しています。概念的な教育では、「Gondola Philosophy」や、それをベースとした思考基盤である「GDOS(ゴンドラOS)」に沿って、毎月テーマを設定し、仕事を進めるうえで大切にしてほしい姿勢や価値観を学ぶプログラムを実施しています。一方で、テクニカルな教育としては、ITスキルに限らず、財務・法務の基礎やハラスメント教育など、業務外の分野まで幅広く学べる仕組みを整えています。当社が特に大切にしているのが、「言葉の使い方、区別を知る」という教育プログラムです。言葉の扱いが適切になることで誤解が減り、コミュニケーションが円滑になる。その結果として、良い仕事につながると考えています。また、仕事のモチベーションは、誰かに与えられるものではなく、本人が気づきを得ることで育っていくものだと思っています。会社としては、その気づきが生まれる土台や機会を、できる限り用意していきたいと考えています。前編では、キャリアの原点と、創業期の苦悩を経て形づくられた独自の組織論についてお話を伺いました。後編では、ゴンドラが目指す次の10年の成長戦略と、「右手にビジョン、左手に修正能力」という独自のマネジメント観についてお話を伺います。古江 恵治/1972年3月28日生まれ、53歳。北海道広尾郡広尾町生まれ、北海道浦河郡浦河町出身。私立札幌光星高等学校を経て、大東文化大学外国語学部英語学科卒(1994年3月)1994年4月 株式会社ジャパンエナジー入社(現 株式会社ENEOSフロンティア)1997年10月 オリコン株式会社入社2002年1月 株式会社シーエー・モバイル入社 ※サイバーエージェントグループ2008年1月 株式会社プロトコーポレーション入社2010年11月 株式会社パイプドビッツ入社2011年3月 同社執行役員 2012年5月 同社取締役2015年9月 東京証券取引所第一部上場2016年3月 株式会社ゴンドラ設立・代表取締役社長(現任) ※スパイラル・グループ【会社概要】会社名株式会社ゴンドラ設立2016年 3月1日代表取締役社長古江 恵治事業内容・カスタマーエンゲージメント事業・広告事業・Webソリューション事業・ソーシャルマネジメント事業・デジタルマーケティング事業所在地東京本社 東京都千代田区霞が関1-4-2 大同生命霞が関ビル13FサイトURLhttps://www.gon-dola.com/