インタビュイー:株式会社ハタス 代表取締役 塚本 龍生 様 1930年創業の塚本商店をルーツとし、愛知県刈谷市に拠点を構える株式会社ハタス。「社会から真に必要とされ、愛される会社」を掲げ、不動産・建設業や祖業である燃料事業の流れを汲んだプロパンガス事業を展開している。近年は不動産に特化したファミリーオフィスという考え方をもとに、不動産の力で“一族の未来”をデザインしている。同社を率いるのは、4代目代表取締役の塚本龍生氏である。M&Aを巡る父との対立を背景に、塚本氏は入社して4ヶ月で突然の事業継承を経験した。大規模な組織改革とそれに伴う大量離職を経た同社は現在、2030年の創業100周年に向けて、売上100億円をめざす「100年100億プロジェクト」を掲げ、2025年から2030年までを「攻めの時期」と位置付けている。本編では、株式会社ハタス 代表取締役 塚本龍生氏に、同社の歩みや現在の事業内容、急転直下の事業承継について、お話を伺った。会社の発展を支える「継承」と「創造」はじめに、株式会社ハタスの歩みについて、お話を伺った。塚本代表:株式会社ハタスのルーツは、1930年6月に創業した塚本商店にあります。創業当初は、練炭や薪、菜種油といった燃料、農業用肥料を扱う商いを行っていました。その燃料事業は、時代の変化とともに形を変え、現在ではプロパンガス事業として受け継がれています。一方で、不動産や建築の事業を手がけるようになったのは、創業からかなり時間が経ってからのことです。1998年に不動産管理事業を他社から引き継ぎ、2006年には建築事業を開始しました。弊社の特徴は、これらの事業の多くがゼロから立ち上げたものではない点にあります。不動産事業もガス事業も、既存の事業を引き継ぎ、その価値を見極め、磨き、拡大してきました。祖業以外は「継承」が起点となり、そこに新たな視点や仕組みを加えることで、事業として成長させてきたのです。創業の地は愛知県刈谷市です。拠点は時代とともに移転を重ねてきましたが、事業の軸足は一貫して刈谷市に置いてきました。長い歴史の中で社名も変遷を重ね、直近ではフォナックスからハタスへ、その前にはアパートネットワークという社名だった時代もあります。現在の社名「ハタス」は、2017年6月、父が代表を務めていた当時に変更したものです。「責任を果たす」「使命を果たす」という意味が込められており、事業に向き合う姿勢そのものを表しています。父から事業を承継後、ロゴも刷新しましたが、根底にある考え方は変わっていません。受け継いだものを大切にしながら、磨き、次へとつないでいく。その思想はロゴの細部にも反映されています。基調となっているのは「ハタスブルー」と名付けた青色で、事業や想いを継承していく意味を込めました。青は安心感や落ち着きを与える色であり、「暮らしや住まいに関わる企業として、居心地の良さや安らぎを感じてもらえる存在でありたい」という想いがあります。ロゴの縦に伸びる形は、建物や構造物といった事業そのものを象徴すると同時に、上へと成長していく姿勢を表しています。右上に角を残しているのは、現状にとどまらず進化し続ける意思の表れです。二つの形が並ぶ構成には、事業を支える柱や揺るぎない基盤という意味も込めています。また、このロゴは、「ハタス」の「ハ」を極限まで単純化した形でもあります。ただし、文字として強く主張するのではなく、抽象的な形にすることで、特定のイメージに縛られず、事業や価値観の広がりを表現しました。<株式会社ハタスの原点・塚本商店のお写真>こうした歴史やロゴに込められた想いを背景に、同社は現在、不動産業・建設業・プロパンガス事業を軸に事業を展開している。塚本代表:ハタスは現在、不動産・建設を中心に、暮らしを総合的に支える事業を行っています。マンションやアパートといった一棟収益不動産を主軸に、建築のご提案から売買・賃貸管理・賃貸仲介までを一貫して担っている点が特徴です。なかでも中核となっているのが賃貸管理事業で、現在は7,600戸を超える物件を管理しており、西三河エリアでも有数の規模を誇っています。日々の管理業務にとどまらず、中長期的な視点で賃貸経営を支えることを重視しています。また、賃貸仲介事業においては、住まいを探す入居者一人ひとりに寄り添い、理想の住まいとの出会いを支えています。建築領域においても、弊社は幅広い実績を重ねてきました。アパート・マンションといった収益物件だけでなく、戸建て賃貸住宅、事業用の事務所や店舗など、多様な用途の建築を手がけています。地域のニーズや土地の特性を踏まえながら、資産価値や事業性を見据えた建築提案を行っている点も弊社の特徴です。こうした不動産関連事業と並んで、もう一つの柱となっているのがプロパンガス事業です。祖業である燃料事業の流れを汲み、現在もガス供給を通じて地域の暮らしを支えています。エネルギーを届けるだけでなく、ガス機器のトラブル対応や日常の困りごとへのサポートなど、生活に密着した役割を担っている点も、長年地域に根ざしてきたハタスならではの特徴です。さらに近年は、不動産に特化した視点から一族の未来を支える、「ファミリーオフィス」という発想を経営に取り入れています。単なる不動産取引にとどまらず、資産の保全や承継といった長期的な視点も踏まえながら、顧客ごとに最適な提案を行う姿勢を大切にしています。この取り組みを始めた背景には、経営者が保有する不動産に深く踏み込み、真摯に向き合える会社が極めて少ないと感じたことがあります。私自身が事業承継や相続を経験した際に、専門家に相談しても、納得できる提案に出会えなかったという実体験がありました。経営者の資産は、数字だけで割り切れるものではありません。思い入れのある不動産と純粋な運用対象としての不動産が混在しており、判断には経済合理性だけでなく、人の想いに寄り添う視点が不可欠だと感じています。だからこそハタスは、単なる不動産売買や仲介にとどまらず、経営者の資産と人生に向き合う存在でありたいと考えています。そうした想いを軸に、同社は今も事業を進化させ続けています。突然の事業承継と組織変革<95周年節目の新商品・戸建賃貸住宅『Cube Noir(キューブ・ノワール)』>入社後わずか4カ月。M&Aを巡る判断の相違をきっかけに、父から息子へと経営のバトンが渡された。塚本氏が代表取締役就任後に進めた組織変革がもたらした影響とはどのようなものだったのか。塚本代表:私がハタスに入社したのは2023年9月です。当時、経営を担っていたのは父でした。入社直後、ある企業の事業承継をM&Aという形で当社が引き受ける話が持ち上がったのですが、私はその話に反対しました。不安材料があったからです。一方、父は前向きな姿勢を示していました。何度も精査と議論を重ねましたが、父が考えを変えることはありませんでした。転機が訪れたのは、M&Aの決議を取った会議でした。その場には、私たち一族以外の役員も同席していましたが、統合後の組織運営や収益性の面などの懸念が払拭できず、私と同じく反対の判断を下しました。反対が多数を占めたことで、M&Aは見送られることとなりました。その直後、父は「分かった。私は退任する、社長はお前に任せる」と言ったのです。決議が終わった、その瞬間の言葉でした。父は、決めたことを即座に実行する人でした。翌日からも会社には来ましたが、それは引き継ぎや片付けのためです。整理が終わると経営から完全に身を引きました。こうして、私は2023年12月に取締役就任することになったのです。私が入社してわずか4カ月での出来事でした。私は、代表を引き継いだ後、組織改革に着手しました。これまでの年功序列に近い体制から、成果主義へと舵を切ったのです。単なる制度変更ではなく、会社の価値観そのものを変える改革でした。当然ながら、反発も起こりました。組織文化が変われば、そこにフィットする人と、そうでない人がはっきり分かれます。これはどの企業でも起こりえることだと思いますが、退職者が数人出ると、その流れが連鎖的に広がる場合があります。私の会社でも同じ現象が起き、結果として、半年ほどの間に社員の3分の1が退職しました。年齢層も幅広く、20代や30代の社員も含まれていましたが、特に上の世代の社員の方が多く去っていきました。こうした急激な組織変化は、業績にも影響を与えることがあります。当社でも、売上へのインパクトは避けられませんでした。成長させたいという意欲があっても、それを支える人材が一時的とはいえ減ってしまったのですから仕方のないことです。ですが、現在では組織の変革も完了し、新しい組織へと生まれ変わり、売上もコンスタントに伸びています。あの決断は、未来に向けた必要な通過点だったと捉えています。前編では、株式会社ハタスの歩みや現在の事業内容、急転直下の事業承継について、お話を伺いました。後編では、塚本代表のキャリアと経営哲学、「100年100億プロジェクト」への想い、今後の展望について、お話を伺っていきます。塚本龍生/2000年 2月26日生まれ(25歳)2016年 刈谷市立富士松中学校 卒業2019年 名城大学付属高等学校 卒業2019年 中京大学 心理学部 心理学科 入学2023年 中京大学 心理学部 心理学科 卒業2024年 1月 ハタス株式会社 代表取締役社長 就任【会社概要】会社名株式会社ハタス設立1987年9月代表取締役塚本龍生事業内容建設業・賃貸仲介業・不動産管理業所在地愛知県刈谷市熊野町4丁目75-1サイトURLhttps://hatas-g.net/