インタビュイー:株式会社ハタス 代表取締役 塚本 龍生 様 1930年創業の塚本商店をルーツとし、愛知県刈谷市に拠点を構える株式会社ハタス。「社会から真に必要とされ、愛される会社」を掲げ、不動産・建設業や祖業である燃料事業の流れを汲んだプロパンガス事業を展開している。近年は不動産に特化したファミリーオフィスという考え方をもとに、不動産の力で“一族の未来”をデザインしている。同社を率いるのは、4代目代表取締役の塚本龍生氏である。M&Aを巡る父との対立を背景に、塚本氏は入社して4ヶ月で突然の事業継承を経験した。大規模な組織改革とそれに伴う大量離職を経た同社は現在、2030年の創業100周年に向けて、売上100億円をめざす「100年100億プロジェクト」を掲げ、2025年から2030年までを「攻めの時期」と位置付けている。前編では、同社の歩みや現在の事業内容、急転直下の事業承継について、お話を伺った。本編では、株式会社ハタス 代表取締役 塚本龍生氏に、や「100年100億プロジェクト」への想い、今後の展望について、お話を伺っていく。4代目社長のキャリアと経営哲学次に、塚本代表のこれまでの歩みと経営者としての哲学について、お話を伺った。塚本代表:私は今年で社会人4年目になります。2022年に大学を卒業し、新卒で不動産企業に入社しました。そこは、社員5人ほどの小さな会社で、私は売買仲介を担当していました。売りたいお客様と買いたいお客様の間に入り、双方をサポートする仕事です。ただ、その会社は入社して半年ほどで倒産してしまいました。その後は、司法書士事務所のグループ会社にある不動産部門で働き、相続に伴う不動産売却を希望されるお客様のサポートを行いました。その後、ハタスに入社したという流れです。とはいえ、大学生の頃からハタスでアルバイトをしており、サポート業務を中心に行っていました。振り返ってみると、一貫して不動産業界に関わってきたことになります。私は承継前、「父が最前線で経営するのはあと何年だろう? 5年、いや10年は続けるだろう」と想像していました。突然の引退と事業承継にもちろん驚きましたし、プレッシャーもありました。ですが、不思議とワクワクする気持ちも湧いてきたのです。父が経営していた頃は、父の最終判断がなければ前に進めないことが多くありました。それが代表取締役になったことで、自分たちだけで意思決定ができるようになったのです。ですから、プレッシャーや不安よりも自由になったという感覚の方が強く、ワクワクしたのだと思います。就任後の意思決定スピードは、体感で100倍程度早くなりました。もっとも、すべてが順調だったわけではありません。社員の離職が相次ぎ、外部から見ればうまくいっていないように映ったと思います。私もうまくいっていないと感じることはありました。ですが、そのうまくいっていないと感じていた理由は、期待値が高すぎたからだったのだと思います。このくらいのスピードで進むはずだ、と自分たちが描いていたイメージに現実の進捗がなかなか追いついてこない。そのギャップが、うまくいっていないという感覚を生んでいたのです。客観的に見れば、組織は大きく変わりましたし、事業も成長軌道に入りました。会社を継いでから半年で社員の3分の1が退職しましたが、そこから立て直して、約1年で再び100人規模の組織を築けたことを考えると、決して遅いスピードではなかったと思います。当初の想定では、もっと早く成果が出ると思っていました。その点では、自分たちの思い描いていた姿には、まだ完全には届いていないのかもしれません。ただ、その過程で積み上げてきたものも確実にあり、今はその手ごたえを感じています。また、私は最近になって、「経営者の仕事とは何か」を自分なりに定義することができました。①方向性を決めること、②判断すること、③決断すること、④資本をどう配分するかを考えること、⑤学び続けること、⑥後継者をつくること。この6つが、経営者の仕事だと思っています。今は、経営者としてこれらを徹底することに意識を向けています。一方で、部長として兼任している部署もあり、そこでは部長の仕事とは何かを整理している段階です。他の役員に意見を聞きながら、自分自身も学んでいる最中です。100年100億プロジェクトに込めた長期ビジョンと価値提供同社は2030年の創業100周年という節目に向けて売上100億円を目指す、「100年100億プロジェクト」を掲げている。本プロジェクトへの想いについて、お話を伺った。塚本代表:2030年の創業100周年に向けて、ハタスは「売上100億円」を掲げています。これは「100年100億プロジェクト」と呼び、私たちが描く新たなビジョンである「ファミリーオフィス構想」と強く結びついた指標です。これまでのように、一方的に売上を積み上げるのではなく、お客様の資産価値を高め、その成長に伴って私たちも共に成長していく。「顧客利益の最大化」を起点に、その結果としての売上100億円を目指す。それがこのプロジェクトの本質です。これまでハタスは、地主を中心に不動産に関するソリューションを提供してきました。ただ、視野を広げて富裕層全体を捉えた時、特に経営者層、つまり自分たちと同じ立場にある人たちへの支援をもっと強化したいという想いが生まれました。私たちは現在、不動産に特化したサービスを提供していますが、経営者や富裕層が直面する課題は不動産だけに限りません。資産の承継、事業の継続、さらには想いや企業文化といった無形資産まで、何十年、何代にもわたって引き継がれていくべきものがあります。こういったものを、統合的に支援できるプラットフォームをつくれたら面白いと考えています。とはいえ、事業展開の軸は明確で、不動産が中核にあることは変わりません。日本の富裕層は、国際的に見ても不動産の保有比率が非常に高く、そこに私たちの競争優位性があります。一方で、経営者層はより多様で複合的なニーズを持っています。だからこそ、サービスの拡大余地も大きい。その広げ方は、走りながら考えていくつもりです。「100年100億プロジェクト」は短期的な施策ではなく、長期的なビジョンに基づいた取り組みです。2030年に迎える創業100年を1つのマイルストーンとしながら、その先の10年、15年後の姿も視野に入れています。私は、売上や利益といった数字そのものに、強いこだわりはありません。もちろん重要ではありますが、それらはあくまで経営の結果として後からついてくるものだと考えています。むしろ重視しているのは、お客様の悩みやニーズににどれだけ価値を提供できているかです。ハタスの価値観をもとに、どこまで支援の領域を広げていけるのか。その試行錯誤こそ、私たちがやるべきことであり、その過程に「100年100億」という目標があると考えています。株式会社ハタスが描く未来像と次世代起業家への想い最後に、今後の展望について、お話を伺った。塚本代表:入社して4ヶ月で不動産会社を事業承継して経営しているケースは、日本中を探してもまず存在しないと思っています。かなり希少な存在です。だからこそ、会社がこれからどのように発展していくのか、どの方向に進んでいくのかを、社内のメンバーも強い関心を持って見ていると思います。期待も寄せてくれているでしょう。この特殊な環境に身を置いているからこそ、メンバー一人ひとりにも多様な可能性が広がっています。普通の企業では味わえないような変化や挑戦もありますし、どんな未来に向かっていくのか予測がつかない。そのワクワク感を、組織全体で共有できていることが、今のハタスの面白さだと思っています。一方、社外からは、違った捉え方をされることもあります。スタートアップの経営者と比較して「基盤があるのは有利だ」と言われることがあるからです。ゼロから会社を立ち上げる人たちからすると、すでに事業や組織の基盤があることは、恵まれていると映ります。その感覚はもちろん理解できます。ただ、基盤があることが、そのまま優位性につながるわけではありません。大切なのは、その基盤をどう活かすかです。基盤にレバレッジをかけ、事業と組織を動かしていくには、戦略的な思考が不可欠です。日本全体の成長を考えても、既存の基盤をうまく使いながら、スピード感を持って事業を推進していくことは、非常に重要だと感じています。私たち自身も含め、次の世代と共に、この点に向き合いながら、より良い日本をつくっていけたらと思っています。また、2代目、3代目として経営を担う人たちに対して、自分なりの考えを伝えたいと思うようになりました。親がつくった会社だから続ける。これまでやってきたから続ける。そうした理由で承継してしまうと、親のやり方をなぞってしまうことが多く、時代の変化に対応することが難しくなるでしょう。大切なのは、常にお客様の方を向くことです。自分たちは何をしたいのか、顧客のどんな課題に応えたいのか、そして社会にどう貢献していきたいのか。こうした問いに対して、自分なりの明確な答えを持つことが重要だと思います。そのためには、知ること、学ぶこと、行動すること、この3つを繰り返しながら、自分たちの考え方を形づくっていく必要があります。そのプロセスを経てこそ、本当の意味での経営理念が生まれるのだとも思っています。もし、その過程で力になれることがあれば、ぜひ関わっていきたいですね。インタビュー後記今回は、株式会社ハタス 代表取締役 塚本 龍生様に、お話を伺いました。入社からわずか4カ月での事業承継。大量離職という痛みを伴う改革。その背景にあったのは、単なる世代交代ではなく、「会社をどう進化させるか」という覚悟でした。印象的だったのは、売上100億円という数字よりも、顧客利益の最大化を起点に据える姿勢です。継承を守りにせず、創造へと転換する。その意志こそが、突然の事業継承を経た株式会社ハタスの確かな推進力となっていると学ばせていただきました。塚本龍生/2000年 2月26日生まれ(25歳)2016年 刈谷市立富士松中学校 卒業2019年 名城大学付属高等学校 卒業2019年 中京大学 心理学部 心理学科 入学2023年 中京大学 心理学部 心理学科 卒業2024年 1月 ハタス株式会社 代表取締役社長 就任【会社概要】会社名株式会社ハタス設立1987年9月代表取締役塚本龍生事業内容建設業・賃貸仲介業・不動産管理業所在地愛知県刈谷市熊野町4丁目75-1サイトURLhttps://hatas-g.net/