インタビュイー:株式会社保険見直し本舗 代表取締役社長 遠山拓馬様株式会社保険見直し本舗は、全国に約350店舗を構え、年間10万件以上の相談実績を有する保険代理店事業を展開している。保険の新規契約や見直しにとどまらず、顧客一人ひとりのライフステージに寄り添い続ける「担当制」を強みとし、生涯にわたる安心の提供を目指している。同社の特徴は、かつての経験や勘に依存した運営から脱却し、ホスピタリティとテクノロジーを融合させることで、新たな業界標準の確立を目指している点にある。従業員の価値の最大化とDXによる業務効率化を両立させることで、顧客体験の質向上を追求している。代表取締役社長を務める遠山拓馬氏は、早稲田大学先進理工学部を卒業後、2013年に株式会社シグマクシスへ入社。航空会社の大規模システム刷新プロジェクトなどで100名を超えるチームをリードした経験を持つ。その後、株式会社ジェネックスパートナーズにて金融や小売業界などにおけるハンズオン型の事業変革をリードし、2024年に株式会社保険見直し本舗の代表取締役社長に就任。「凡事徹底・150%アウトプット」をモットーに、現場と一体となった組織変革を牽引している。後編では、株式会社保険見直し本舗 代表取締役社長 遠山拓馬氏に、代表就任後の組織改革の舞台裏や、ホスピタリティとDXを掛け合わせた「勝利の方程式」、保険業界全体の発展を見据えたプラットフォーム構想について、お話を伺った。「会社の現在地」が見えない危機感からの脱却。対話と数字が変えた組織の空気感<キッズスペースにデジタル黒板を備えた店舗>成長期の勢いで覆い隠されていた「感覚経営」の壁。遠山代表が最初に着手したのは、自ら全国を回って自身の想いをさらけ出し、経営を「数字」で語る文化を根付かせることだった。遠山代表:社長に就任して最初に感じたのは、「会社の現在地が見えにくい」という課題でした。事業としては全国に350店舗を展開するまでに成長する一方、その成長の過程で、経営の判断や現場の運営が経験や感覚に依存している部分も少なくありませんでした。象徴的だったのは、昨日の売上をすぐに把握できる状態ではなかったことです。経営陣も現場も含めて、事業の状況をリアルタイムに共有しながら意思決定する仕組みは十分とは言えませんでした。私はこれまで、事実に基づいて議論することの重要性を学んできました。まず現状を正しく把握しなければ、課題を捉えられず、改善のしようがありません。だからこそ、社長就任後は数字を見える化し、感覚ではなく事実をもとに会話ができる組織へ変えていきたいと考えました。ただ、仕組みを導入すれば組織が変わるとは思っていません。数字を活用した経営を進めるにしても、まずは社員の皆さんとの信頼関係が必要です。外部出身の社長が突然現れて、「今日からこう変えます」と言ったところで、人は簡単には動きません。そこで私が最初に行ったのが、全国を回ることでした。当時、営業職だけでも約550人が在籍していましたが、私は全国を訪問し、できる限り多くの従業員と直接対話する機会をつくりました。その場では、経営方針を説明するだけではなく、自分自身のこれまでのキャリアや考え方、この会社で何を実現したいのかについて率直にお話ししました。組織を動かすためには自己開示が欠かせないと思っています。社員の皆さんに変化を求めるのであれば、まずは経営者である自分自身が何を考え、何を目指しているのかを伝えなければなりません。だからこそ、できるだけ飾らずに自分の言葉で話すことを意識しました。そうした対話を重ねる中で、少しずつ共通認識が生まれていったように感じています。その後、経営企画室を新設し、データ活用を推進する体制づくりにも着手しました。重要だったのは、組織のあらゆる場面で数字を見える化し、事実をもとに対話できる環境をつくることです。これは数字で人を管理するという意味ではありません。日々の事業活動の結果を正しく共有し、共通の事実をもとに議論できる状態をつくることが目的でした。私は、数字と人は対立するものではないと思っています。数字は人を評価するためのものではなく、お客様への提供価値を高めるための共通言語です。だからこそ、感覚ではなく事実を見ながら、全員でより良いサービスを目指していく。その文化を根付かせ、次の成長に向けた第一歩を生み出すことが、社長就任後に最初に取り組んだ改革でした。仕組みで伸ばす。ホスピタリティとDXを掛け合わせる「勝利の方程式」<DX推進店舗>営業力という「属人化」の罠から、組織をいかに解き放つか。遠山代表が目指したのは、一部の優秀な人材に依存しない組織づくりだった。遠山代表:私は、組織が成長し続けるためには再現性が必要だと考えています。優秀な営業担当者の存在は非常に重要ですが、一部の人だけが感覚や経験に依存して成果を出せる状態では、組織全体として持続的な成長は実現できません。誰もが一定水準以上の価値を提供できる仕組みをつくることが、経営の役割だと思っています。そこで私たちが掲げているのが、「提案力 × ホスピタリティ × DX」という勝利の方程式です。保険ショップの価値を考えたとき、まず必要なのは提案力です。お客様一人ひとりの状況を理解し、最適な保険商品を提案する専門性は欠かせませんが、それだけでは十分ではないと思っています。そこで私たちが大切にしているのは、ホスピタリティです。保険は形のない商品ですし、多くのお客様にとって決して身近なものではありません。だからこそ、安心して相談できる環境をつくることが重要です。お客様の不安や悩みに寄り添い、信頼関係を築くという積み重ねが、保険ショップとしての価値につながると考えています。象徴的な取り組みの一つが、「LOOK UP!」です。これは非常にシンプルな取り組みで、お客様が来店された際にしっかり顔を上げてお声がけをするというものです。言葉にすると当たり前のことですが、忙しい店舗運営の中では意外と徹底することが難しい部分でもあります。組織の強さは特別な施策ではなく、当たり前のことを徹底できるかどうかで決まるという考えに基づいた取り組みです。そして、その提案力とホスピタリティをより高いレベルで実現するための手段がDXです。DXそのものが目的ではなく、お客様への提供価値を高めるために、テクノロジーを活用しています。現在は、店舗にAIカメラを設置し、「LOOK UP!」をどの程度実践できているのかを可視化しています。目的は従業員の監視ではなく、お客様との接点を増やし、機会損失を減らすためです。これまで感覚的に捉えていた行動を客観的に把握できるようになったことで、店舗運営の改善にもつながっています。また、生成AIの活用も進めています。保険業界では、お客様との商談内容を適切に記録し、管理することが非常に重要な一方、その記録作業には多くの時間がかかります。そこで生成AIを活用し、商談内容の要約や記録作成を支援する取り組みを進めています。これによって担当者の事務負担を軽減できるだけでなく、記録品質の向上やコンプライアンス強化にもつながっています。保険ショップの本質的な価値は、お客様と向き合うことにあります。だからこそ私たちは、DXを推進しながらも、ホスピタリティを中心に据えています。提案力を磨くこと。ホスピタリティを高めること。そしてDXによってその実践を支えること。その3つが掛け合わさることで、より多くのお客様に高品質なサービスを提供できるようになると考えています。業界の「プラットフォーマー」へ。Win - Winの構造が救う未来一企業としての成長に留まらず、保険業界全体の品質向上を目指す。人口減少や規制強化という環境変化の中で、遠山代表が描くのは、競争ではなく共創によって業界の未来を支える構想だ。遠山代表:当社は、保険ショップ業界の中で一定の事業規模を持つ企業へと成長することができました。しかし、私自身は当社だけが成長すれば良いとは考えていません。保険という商品は、人々の人生を支える非常に重要な社会インフラです。そして、その価値をお客様へ届ける代理店や保険ショップの存在もまた、社会にとって欠かせないものだと思っています。一方で、業界全体に目を向けると、さまざまな課題が存在しています。人口減少による市場環境の変化、コンプライアンスへの対応強化、人材確保の難しさ、そして後継者不足。特に地域に根差した代理店の中には、長年お客様との信頼関係を築いてきたにもかかわらず、経営基盤や人材面の課題によって将来に不安を抱えている企業も少なくありません。私は、そのような状況に対して「淘汰されるのは仕方がない」と考えるべきではないと思っています。地域で長年培われてきたお客様との関係性や信頼は、簡単に代替できるものではありません。だからこそ、そうした価値を残しながら、持続可能な形で事業を続けられる仕組みをつくることが重要だと考えています。当社が目指しているのは、保険業界のプラットフォーマーです。これまで全国展開を進める中で、システムやコンプライアンス体制、人材育成の仕組み、経営管理のノウハウなど、さまざまな経営基盤を構築してきました。今後は、それらを自社だけの強みに留めるのではなく、業界全体の発展につながる形で活用していきたいと考えています。例えば、地域の代理店や保険ショップが抱える課題に対して、私たちの持つインフラやノウハウを提供することで、事業継続を支援できる可能性があります。すべてをゼロから構築するのではなく、すでにある基盤を活用していただくことで、お客様との関係性を維持しながら事業を続けていただけるかもしれません。地域で長年お客様との信頼関係を築いてきた代理店の皆さんは、当社にはない強みを持っており、一方で当社には全国規模で培ってきた経営基盤があります。それぞれの強みを持ち寄ることで、より大きな価値を生み出せるはずです。私は、これからの時代は「競争」ではなく「共創」が重要になると考えています。市場環境が大きく変化する中で、一社だけで解決できる課題には限界があります。だからこそ、業界全体でお客様への提供価値を高めていくことが必要です。当社は、今後もお客様に安心を届けることはもちろんのこと、業界全体の発展にも貢献できる存在でありたいと考えています。保険ショップ業界のプラットフォーマーとして、業界全体の品質向上に貢献していきたい。そのために、最高のサービスプラットフォームを構築し、お客様にとっても、代理店にとっても価値のある持続可能な仕組みをつくっていきたいと思っています。編集後記今回は、株式会社保険見直し本舗 代表取締役社長 遠山拓馬氏にお話を伺いました。印象的だったのは、遠山代表が一貫して「人」を起点に語られていたことです。航空会社の変革プロジェクトで得た「組織を動かすのは人である」という原点は、担当制によるお客様との生涯にわたる伴走にも、全国の店舗を自ら回り自己開示から始めた組織改革にも、確かに貫かれていました。「提案力 × ホスピタリティ × DX」の勝利の方程式においても、DXはあくまで人の実践を支える手段として位置づけられています。どれだけテクノロジーが進化しても、最後に価値を生み出すのは人であることを、改めて学ばせていただきました。遠山 拓馬/1990年東京都生まれ。2013年、早稲田大学先進理工学部を卒業後、株式会社シグマクシスに入社。約8年間、航空業界のクライアントを主に担当。2021年、株式会社ジェネックスパートナーズに入社。金融、総合化学、小売業界を中心に、ハンズオン型の事業変革プロジェクトや経営企画機能の強化・推進をリード。2024年、株式会社GOESWELL(現・株式会社保険見直し本舗)代表取締役社長に就任。現在に至る。【会社概要】会社名株式会社保険見直し本舗設立年2020年代表取締役社長遠山 拓馬事業内容保険代理事業、銀行代理事業、介護関連事業、派遣事業所在地東京都新宿区新宿五丁目17番18号H&Iビル