インタビュイー:株式会社日本デザイン 代表取締役 大坪 拓摩様 「日本人の生き方・働き方をより幸せにし、日本をより良い国にする。」このミッションを掲げ、2013年の創業以来、教育を通じた個人のキャリア変革と社会の底上げに取り組んでいるのが、株式会社日本デザインである。完全オンライン型WEBデザインスクール「日本デザインスクール(デザスク)」では、卒業生がすでに5,000名を超え、多くの方々が副業・フリーランス・転職といった形で自分の理想とする働き方を実現している。同社を率いるのが、代表取締役の大坪拓摩氏である。スーパーゼネコンの現場監督を経て、独学でデザインを習得。半年で月収150万円を達成するフリーランスデザイナーとして独立し、2013年に株式会社日本デザインを設立した。その原点にあるのは、「教育を通じて国力と幸福度を上げる」という使命である。後編では、株式会社日本デザイン 代表取締役 大坪 拓摩氏に、累計300以上の福利厚生に込められた組織カルチャーや多様な価値観を肯定するマネジメントの考え方、そして2055年「売上1兆円」に向けた未来図について、お話を伺った。300以上の試行錯誤。手渡し給与と「就職披露宴」がもたらす温かさ〈2026年に開催された就職披露宴の様子〉累計300以上の福利厚生。社員数25名の同社は、人生の大半を過ごす職場をいかに豊かな場にするかを問い続けている。 大坪代表:当社では、創業時からこれまでに累計300を超える福利厚生を試してきました。多くの時間を過ごす職場だからこそ、社員に楽しんで欲しい。その想いから、社員数や文化、社風を活かした、独自の福利厚生に取り組んでいます。例えば、給与の支払いは銀行振込ではなく、現金手渡しです。世の中ではデジタル振込の導入も進んでいますが、当社では創業時から現金支給を続けています。一時期、振込に変更したこともありましたが、物理的に受け取ることで「働くことへの対価」を実感しやすいという声が多く、現在まで現金支給を貫いています。そして、給与袋には、社員一人ひとりに向けた手書きの手紙を添えています。「今月は◯◯ができたね。次は△△を目指そう」「〇〇の案件、うまくいってよかったね。いつもありがとう」といった、その月の働きぶりに対する個別のメッセージです。社員には、給与と一緒に、自分への言葉を噛み締めてもらいたいと思っています。もう一つ、当社のカルチャーを象徴する取り組みが、新卒社員のご両親を招いて開催する「就職披露宴」です。2026年度の入社式は、3月28日に池袋オフィスで開催しました。新卒社員4名とご両親8名、そして全社員が参加し、新卒社員からご両親への手紙の朗読や、絵の具の流し込みや傾けを共同で行い、世界に一つだけのアート作品を制作する「たらしこみアート」、シャンパンタワー、社員による余興、そして「入社証書」と「名刺」の授与といったプログラムで、家族のように新たな門出を祝います。背景には、新卒社員が抱きがちな不安を払拭したいという想いがあります。マイナビの調査によると、2026年卒の大学生のうち、入社予定先が決まった後に「本当にこの会社でいいのか」と不安を感じたことがある学生は56.7%にのぼります。当社でも「やっていけるのか」「業務についていけるのか」といった声を耳にすることがありました。当オフィスは、靴を脱いで上がり、家庭のようなキッチンがあって、社員で食事を囲む機会も多い場所です。人生の時間の大半を過ごすこの空間を、ある意味で「家」に近いものにしたいと考えてきました。だからこそ、家族のように仲良く、かつ切磋琢磨しながら過ごしてほしい。披露宴にご家族を招くことで、実際に働く環境や仲間の姿を見て安心してもらい、社会人として頑張る気持ちを応援してもらえる関係性を築きたいと思っています。過去の披露宴に参加した新入社員の多くは「この会社に決めてよかった」と話してくれます。両親の前で手紙を朗読することで「日本デザインでやっていきたいという気持ちが確信に変わった」という声もありました。ご両親からも「良い会社に入ったね」と仰っていただくことが多く、入社後も社員と家族のあいだに、当社への共通の話題が生まれている感覚があります。アナログなコミュニケーションを大切にしているからこそ実現できる、当社らしいカルチャーだと考えています。「頑張りたい人」も「自分のペースで働きたい人」も尊重する組織へ社員の働き方の価値観が多様化する現代。様々な価値観の社員が混在する組織を、大坪代表はどうまとめているのか。 大坪代表:社員のなかには、会社に泊まり込んででも全力で働きたいタイプもいれば、定時できっちり帰りたいタイプもいます。私自身は長時間働く方が性に合っていますし、創業期は取引先と旅行に行くような感覚で、仕事とプライベートの境目もありませんでした。けれども、現在はさまざまな価値観の社員がいて、それは社会のあり方として自然なことだと受け止めています。ですから、どちらが正しいという押し付けはせず、双方の働き方をともに尊重する立場で運営しています。それぞれの社員にとって、それは自分自身が選択した働き方ですから、当時の自分や創業メンバーと同じ水準を勝手に求めるようなことは控えています。一方で、意欲的に取り組みたいタイプの社員には、その意欲に応えるような機会を積極的に提供するようにしています。注意しているのは、意欲的に取り組みたいタイプの社員が、そうでないタイプの社員を軽んじるような空気を作らないことです。経験上、他者を軽んじる人ほど、後で自身が落ち込んだ瞬間に折れて辞めてしまうケースが多い。立場が変わった瞬間に立ち上がれなくなってしまうのは、本人にとっても周囲にとっても望ましくありません。だから社員には、「どちらの状態でも構わないのだ」という話をよく伝えています。「みんなもっと頑張ってくれたらいいのに」と先輩社員が言いたくなる場面があるかもしれません。けれども、「日本の人口全員が自分の対極に立ったらどうするのか」という想像をしてみてほしいのです。社会全体が全員強者であれば、自分のほうが弱者の側に回るかもしれない。これは単純な算数と国語の問題ですから、誰かに対して優位に振る舞う理由はそもそもない、というのが私の考えです。このスタンスに辿り着く前提として、私自身が十代の頃からアンガーマネジメントに取り組んでいたことがあります。二十代前半では心理学や脳科学、NLP(神経言語プログラミング)といった分野を集中的に学びました。当時は心理学の世界的な権威を日本に招いて講演会を開いたり、NLPを立ち上げたご本人たちを呼んだり、催眠術の始祖のお孫さんに会いに行ったりもしました。そうした学びを重ねた結果、三十歳ぐらいからはほとんど怒らなくなりました。誰かが期待外れの動きをしたとしても、それは相手の事情であって、こちらが勝手に苛立つのは筋違いだという整理がつくようになったのです。スクール事業でも同じです。受講生のなかには、人生を変えるつもりで睡眠時間を削ってでも本気で取り組む方もいれば、もっと気軽に始められると思っていたという方もいらっしゃいます。二極化が激しくなっているのを感じますが、それぞれの方にとっての最適解があるのだと受け止めるようにしています。価値観を強要しない。けれども、伸びたい人にはその意欲に見合う機会を惜しまず提供する。当社のマネジメントは、その両輪で回しています。2055年に「売上1兆円」を目指す日本デザインの未来図 最後に、今後の展望について、お話を伺った。大坪代表:最近、社員に向けて、「2055年までに、売上1兆円」という新しい目標を掲げました。この数字自体が目的というわけではありません。売上は一つの指標に過ぎないので、1兆円が達成できたかどうかよりも、その規模の事業を健全に回せるような従業員の集合体になっているかというのが本当の関心事です。1兆円規模の組織に育っていれば、当社が掲げる「日本人の生き方・働き方をより幸せにし、日本をより良い国にする」というミッションに対して、今よりもずっと大きな影響力を社会に及ぼせるはずです。国力と幸福度を上げるという目的に向き合うとき、教育事業だけで完結させるのは難しいと感じています。たとえば、人口減少という課題はスクール事業だけでは解決できません。そこで当社では、「日本妊活協会」という、子供を増やす活動にも取り組んでいます。国力とは何か、それを構成する要素は何か、と紐解いていったときに、着手すべき順番から手をつけていく、というのが基本的な考え方です。そう考えていくと、当社は単に「いい会社」であろうとしているのではなく、目的を達成するための一つの装置であるという見方になります。状況によっては、もっとシビアな旗印を掲げる可能性もあると考えています。サンプルのないものを試行錯誤しながら、毎週少しずつ調整を重ねています。国を変える側と、変えてもらう側は、やはり違います。日本デザインは、国を変える側でありたい。そのために必要な組織のかたちを、これからも探り続けていきます。「日本人の生き方・働き方をより幸せにし、日本をより良い国にする」このミッションは、創業時から一貫して変わっていません。形を変え、規模を変えながら、2055年に向けて愚直に歩みを進めていきます。編集後記今回は株式会社日本デザイン 代表取締役 大坪拓摩氏にお話を伺いました。「教育で国力を上げる」というスケールの大きな使命を掲げる一方で、社員一人ひとりに手書きの手紙を添えて給与を手渡し、新卒社員のご家族を招いて披露宴を開く。社会を動かそうとするマクロな志と、目の前の社員を大切にするミクロな手触り。この両者が矛盾なく地続きになっている独自の経営のあり方を学ばせていただきました。 大坪 拓摩/1986年生まれ。武蔵野美術大学建築設計学科を中退後、大手建設企業の現場監督として東京ミッドタウン計画に従事。2011年、未経験からデザインを独学し、ゼロ日で起業。6ヶ月目に150万円稼ぐフリーランスに。2013年、株式会社日本デザイン設立。マーケティングからクリエイティブをワンストップで提供する受託・プロデュース事業を展開。現在は、教育事業・顧問/受託事業・空間/健康事業・新規事業に事業拡大。【会社概要】会社名株式会社日本デザイン設立2013年代表取締役大坪 拓摩事業内容スクール事業、セミナー事業、クリエイティブ事業、マーケティング事業所在地東京都豊島区東池袋1-35-3 池袋センタービル2F