インタビュイー:酒田米菓株式会社 代表取締役社長 佐藤栄司様米作りに恵まれた環境である庄内平野の米を使用し、原料や製法にこだわった商品を展開している酒田米菓株式会社。主力商品として日本で初めて薄焼き煎餅「オランダせんべい」を開発し、その他にも数々の米菓商品を展開してきた。しかし、人口減少や炭水化物の摂取制限などによる米菓商品の市場流通量の減少を受け、完全栄養食や健康食といった新たな市場のニーズに応じた商品シリーズとして「Comefit(カムフィット)」を展開している。アスリートの食をサポートするMIRAI Onigiri(ミライオニギリ)を始め健康を意識した商品ラインナップが特徴の同シリーズ。新商品として、食べるだけで手軽に噛む力をはかることのできる「咀嚼チェックせんべい」の開発に取り組んだ酒田米菓の代表取締役社長を務める佐藤栄司氏に、新規事業に挑戦した経緯や想いについて話を伺った前編に引き続き、後編では販路開拓までの道のりや、新規事業に取り組む上で持つべき意識について伺った。咀嚼チェックせんべい販路獲得までの長い道のり主に歯科医院向けに患者の噛む力がどれくらいあるかを調べることができる「咀嚼チェックせんべい」を開発した佐藤代表。医療施設に商品を販売するにあたっては、いくつもの実証実験やエビデンス調査を乗り越える必要があった。佐藤代表:咀嚼チェックせんべいの前身商品「パタカせんべい」を販売するにあたって、まずは歯科医院でのニーズを把握するために毎日歯医者さんに100件から150件ほど電話をかけ調査しました。約5割の歯科医院が利用してみたいという、いい反応は得られた一方で、臨床現場で本格的に使用してもらうには、食べやすいせんべいの形や、固すぎたり柔らかすぎたりしない焼き具合など様々なことを考慮しなければいけませんでした。ある時、たまたま秋田市の歯科医師会長に電話をかけた際に、「この商品アイデアはすごいから、臨床現場で実際に使えるか実証実験をしませんか。」とご提案をいただきました。そこで、パタカせんべいからよりスクリーニングに適した商品「咀嚼チェックせんべい」の開発をするため、山形県、秋田市と秋田県の歯科医師会長のバックアップを受けながら、秋田県内で約850人を対象に咀嚼チェックせんべいが咀嚼機能のスクリーニング検査として有効かを検証するための実証実験を半年間かけて行い、30回という基準がおおよそ妥当だということが分かりました。しかし歯科医院向けに販売するとなると、科学的根拠を論文にまとめるといったエビデンスが必要だというアドバイスをいただきました。我々としても、直販という形で咀嚼チェックせんべいの意義を歯科医院にしっかり伝えていきたかったため、エビデンスで商品の信頼性を担保することが必要になると感じていました。現在、専門機関に相談しながら、エビデンス強化の準備を進めています。新規事業を進めるためには使命感とマーケティング知識が必要不可欠様々なステークホルダーの協力を得ながら、「咀嚼チェックせんべい」の販売に奮闘する佐藤代表。商品の開発から販路開拓まで取り組んでいる経験をもとに、新規事業に取り組む際に必要な意識と行動について伺った。佐藤代表:新規事業をやる上ではやっぱり使命感を持つことが本当に大事だと思います。私自身、咀嚼チェックせんべいの事業に関して、噛む力の向上という角度から、より多くの人々の健康を支えていくという使命感を強く持っています。噛む力の低下は、身体能力の低下の前触れであり、その早期発見と改善は健康寿命の延長に繋がります。私は歯科医師などの専門家ではありませんが、私たち事業者がこのような社会課題の解決に少しでも貢献することができるのであれば続けていこうという強い想いがあります。想いがあるからこそ、情熱を持って主体的に事業に取り組めると思います。一方で、もちろん想いを持つだけでなく新規事業を行う中でマーケティングの重要性やエビデンス獲得の必要性を強く感じました。今はマーケティング戦略策定のためにしっかりとリサーチを行うことを重要視しています。インタビュー後記今回のインタビューは、佐藤代表の実体験から新規事業に取り組む際にはサービスのニーズ調査を綿密に行うことで適切な販路開拓に繋げていくことの重要性が伝わってきた内容でした。「人口減少の時代に米菓会社として業界に残り続けるためには、おせんべいを食べる意味を伝えていく必要がある」と語った佐藤代表。現在は将来を担う若者世代も巻き込んだ新たな取り組みとして、都内の中高生と共同で米菓のマーケティング調査をアメリカで行うといった活動も行っているそうです。今後、どういったアプローチで米菓の価値を社会に伝えていくのか、これからの取り組みにも期待が高まります。