インタビュイー:株式会社河野組 代表取締役 河野 将弥様 巨大な製鉄所プラントや100メートルを超える高層煙突など、老朽化した産業インフラの撤去を担う「特殊解体」。火災や爆発の危険、構造物の劣化による倒壊リスクなど、常に命と隣り合わせの現場で高度な技術と緻密な判断が求められる領域である。愛知県津島市に本拠を置く株式会社河野組は、こうした高難度の特殊構造物解体を主軸に実績を重ねてきた企業だ。2018年に代表取締役に就任した河野将弥氏は、創業者である兄の情熱を受け継ぎながら、それを具体的な戦略へと落とし込み、組織としての成長を推し進めている。多能工による合理的な現場運営や、現場の品質そのものが信頼を生む営業哲学は、同社の大きな強みとなっている。前編では、同社の事業内容や多能工による合理的な現場運営、現場そのものが信頼を生む営業哲学について、お話を伺った。本編では、株式会社河野組 代表取締役 河野将弥氏に、100億宣言への想いや同社の育成哲学、今後の展望について、お話を伺っていく。100億企業への設計図―河野組の成長戦略河野組は2025年、売上100億円の達成を目指す「100億宣言」を掲げた。創業者である兄が掲げたその目標は、当初、現場の社員にとってあまりに遠い目標だった。しかし河野代表は、その夢を具体的な戦略へと落とし込み、設備投資と人材育成を軸にしたロードマップを描いていく。河野代表:「売上100億円を目指す」という言葉を最初に口にしたのは、私の実兄であり、河野組をゼロから立ち上げた創業者でもある会長でした。兄は生粋の技術者で、誰よりも解体という仕事を愛し、「河野組を日本一の組織にしたい」という純粋で熱い想いを持っています。しかし、その構想を初めて聞いたとき、現場の社員たちが戸惑ったのも事実でした。あまりに遠く大きな目標に、「自分たちは明日から何をすればいいのか」という具体的な道筋が見えづらかったのでしょう。私の役割は、兄の夢を、社員全員が「これなら自分たちにも到達できる」と思える確信へと変えていくことでした。売上100億円という目標に到達するために、いつ、どのエリアで、どれだけの大型重機と人員が必要になるのか。兄の想いを大切にしながら、それを5カ年計画のロードマップとして整理し、年次・月次、さらには日々の現場作業にまで落とし込んでいきました。例えば、1000tクラスの超大型解体機をどのタイミングで導入するのか。その操作を担うスペシャリストを社内で何名育成していくのか。設備投資と人材育成を連動させながら、一つひとつの計画を数字とともに示していきました。具体的な道筋が見えたとき、社員の表情は明らかに変わりました。階段を一段ずつ登れば、本当に目標までたどり着ける。その納得感が、現場に前向きな活気をもたらしたのだと思います。私にとって「100億」という数字は、単なる売上目標ではありません。そこへ至る過程で、どれだけ強い組織をつくれるかという、会社としての覚悟の表明でもあります。売上が伸びれば、福利厚生をさらに充実させ、社員とその家族をより手厚く守ることができます。また、高性能な機械への投資によって、現場の危険を少しでも減らし、全員を無事に家へ帰すことにもつながるでしょう。兄の情熱を、私が戦略という形に変えていく。その役割分担こそが、河野組を前へ進める原動力なのだと思います。そして、100億を目指す過程で得られる社員一人ひとりの成長と自信こそが、私たちにとって最も価値ある利益です。昨日より少し高い景色を目指して―昨日の自分を超える組織急成長を遂げる河野組において、経営の核心にあるのは現場を支える「人」の成長である。最初から完成された人材を求めるのではなく、一人ひとりの歩幅に合わせ、昨日より一歩でも前へ進むことを促す独自の育て方を貫いている。河野代表:私は社員たちに、いきなり「完璧を目指しなさい」とは言いません。今の自分にできることを、一つずつ丁寧に増やしていけばいい。大切なのは、昨日までの自分を少しずつでも超えていく実感を、本人が持てるかどうかです。だからこそ、現場での失敗も、単に注意して終わらせることはありません。「なぜそうなったのか」「次はどうすれば防げるのか」を一緒になって徹底的に振り返る。その時間を何より大切にしています。当社の仲間には、自ら考え動けるプロであってほしいと常に伝えています。ただ指示を待って作業をこなすのではなく、自分が担当する現場の工程や状況を理解し、どう動けば最も効率的で安全かを自分で判断する力です。「多能工」としてのスキル習得も、決して会社の成長のためだけではありません。複数の技術をプロレベルで扱えるようになることは、職人自身の市場価値を高め、自分や家族の生活を豊かにすることにもつながります。一人ひとりが今の自分を少しずつ更新していく。その積み重ねこそが、会社を強くし、お客様に選ばれる力になるのだと思います。だから後輩を育てる際も、一方的に正解を押し付けることはしません。本人がどこでつまずき、何を感じているのかを丁寧に聞き取ることを大切にしています。ときには現場の手を止め、膝を突き合わせて数時間話し込むこともあります。「昨日の自分より、ここが少し良くなったね」。そんな小さな変化を共に喜び、認める。その積み重ねが成功体験となり、社員は自ら考え、前へ進めるようになっていくのです。仲間たちが技術を磨き、昨日より少し高い景色を見られるようになっていく。その姿を一番近くで見守れることが、私にとって何よりの喜びです。等身大の自分から始まる、地道で誠実な歩みの先にこそ、私たちが掲げる「100億」という未来があるのだと確信しています。目指すは「カッコイイ・稼げる・けっこうモテる」。次世代へ誇れる新3Kへの挑戦最後に、今後の展望について、お話を伺った。河野代表:「売上100億」という目標を現実にするために、より多くの仲間を迎え入れ、一人ひとりが高い生産性を生み出し続ける強い組織をつくっていかなければなりません。そのために私が何より大切にしてきたのが、「現場ファースト」の待遇です。世の中には、現場の施工担当者よりも管理部門の方が高い給与を得るという構造も少なくありません。現場で働く人たちの価値が、十分に評価されない社会であってはならないと感じています。私自身、10代の頃に日給8,000円、交通費も支給されないという過酷な現場を経験してきました。その実体験から、全社員への月給制導入や年2回の賞与支給、さらには職人の給与を業界水準以上に設定するなど、現場が最も報われる仕組みづくりを進めてきました。私が守りたいのは、今ここで共に汗を流している社員だけではありません。社員の子どもたちが「お父さんの仕事、かっこいい」と胸を張って言える職業に変えたいのです。「河野組があってよかった。この会社のおかげで今の生活がある」と心から思えるような会社をつくることが、私の役割だと思っています。現在、若い世代の社員も現場の最前線で活躍しています。だからこそ、若い世代が解体という仕事を価値ある職業として胸を張って選べるようにしたい。そのための新しい3K、「カッコイイ・稼げる・けっこうモテる」を、本気で実現していきます。そして私にとって、100億という数字はゴールではありません。職人という仕事の価値が社会に認められ、子どもたちが「お父さんの会社で働きたい」と言ってくれる未来をつくる。そのための通過点にすぎないのです。逃げずに挑戦し続け、背中で示していく。これからも正直であることを大切にしながら、一歩一歩の積み重ねで社会の土台を支えていきたいと思っています。インタビュー後記今回は、株式会社河野組 代表取締役 河野 将弥氏にお話を伺いました 。100メートル級の巨大構造物と対峙する特殊解体の凄絶な現場と、それを支える緻密な戦略。その根底には、社員一人ひとりの成長を信じ、家族の未来まで守り抜こうとする、経営者としての強い覚悟がありました 。次世代のために、業界全体のイメージを変えるような新たなスタンダードの実現へ向けて、逃げずに挑み続ける実直な姿勢こそが、河野組が社会から信頼され指名され続ける理由なのだと深く学ばせていただきました。河野 将弥/高校卒業後、建設業界に身を投じ、現場の最前線において施工業務に従事。実務を通じて施工管理および安全管理の基礎を培う。その後、遊技機関連設備の設置・販売事業に携わり、事業統括として組織運営および事業マネジメントに従事。2018年4月、株式会社河野組入社。同年12月、代表取締役に就任。【会社概要】会社名株式会社河野組設立2011年7月14日代表取締役河野将弥事業内容石油関連施設解体工事、電力関連施設解体工事ガス関連施設解体工事、化学関連施設解体工事環境設備関連施設解体工事、ビル・マンション解体工事、大規模修繕工事所在地本社 愛知県津島市百島町字中割2番地1KAWANOビル1FサイトURLhttps://kawano-gumi.com/