インタビュイー:株式会社ロジック・ブレイン 代表取締役社長 服部 真人様株式会社ロジック・ブレインは、「パーソナリティ分析」を軸に、組織と人の課題解決を支援する福岡発の企業である。同社が開発するのは、社員一人ひとりの個性や強みをAIで分析するHRクラウド「TOiTOi」と、顧客の傾向を分析する営業支援クラウド「TENPiN」。世界で最も研究論文数が多いとされる性格分析理論「ビッグファイブ」と、独自の「ISDロジック」を掛け合わせ、「働くことが楽しいと思える組織の構築」を目指している。代表取締役社長の服部真人氏は、約30年にわたり「人間理解」というテーマを追い続けてきた人物である。かつて「動物占い」の開発に携わり、個性の研究を重ねたのち、その知見を企業向けの分析システムへと昇華させた。占いや心理学が積み上げてきた知見を、AIの発展とともに「再現性のある技術」へと進化させてきた、いわば人間理解のパイオニアである。前編では、株式会社ロジック・ブレイン 代表取締役社長 服部真人氏に、パーソナリティ分析という事業の本質や「教育とマネジメントの属人化」という課題への向き合い方、そして現場で起きている組織変革の実例について、お話を伺った。「ふるい落とす」から「強みを引き出す」へ。パーソナリティ分析の本質多くの企業が「合わない人を見極める」ために適性検査を使う。だが、すでに在籍する社員の強みは、どこまで把握できているだろうか。ロジック・ブレインの「パーソナリティ分析」は、人を選別する技術ではなく、人を伸ばす技術である。服部代表:私たちが一貫して取り組んでいるのは、「パーソナリティ分析」という分野です。これは、従来の適性検査とは根本的に発想が異なります。適性検査というのは、いわば自社に合わない人を見つけ出すためのもの。スクリーニングをかけて、ふるいにかけるという使い方が中心でした。しかし私たちが見ているのは、その逆です。いま目の前にいる、この人の最大の長所は何か。どんな能力や強みを持っていて、どのように声をかければ一番伸びるのか。教育やマネジメントに最も活かしやすいと言われているのが、このパーソナリティ分析なのです。たとえば採用の場面でも、「この人を落とすかどうか」ではなく、「この人の持っている力は、当社のなかで発揮できるのか」「研修や教育で伸ばすことができれば、組織にとってプラスになるのか」という見方をします。今いるメンバーの強みを分析することにも使えますし、視点そのものが、人を切り捨てるのではなく、いかに伸ばすかというところに置かれている。これが私たちの考え方の出発点です。そして、このパーソナリティ分析を実際の現場で使えるようにしたのが、HRクラウド「TOiTOi」です。この分析の精度を支えているのが、科学的な裏づけと独自ロジックの掛け合わせです。ベースにしているのは「ビッグファイブ」という性格分析。これは、人の個性は大きく5つの要素の組み合わせで分かる、と提唱された理論で、心理学において世界で最も多くの論文で実証されています。「科学」として認められた分析でもあり、企業のコンプライアンス上も安心して使えるという強みがあります。私たちはこれを土台に、長年積み上げてきた独自の「ISDロジック」という統計学を掛け合わせています。設問は60問ですが、その掛け合わせによって、TOiTOiが出力するパターン数はおよそ864万通りにのぼります。ただ、こうした分析自体は、実は昔からあるものなんです。問題は、パターン数が増えれば増えるほど、それを正しく読み解ける人が限られてしまうことです。かつては、きちんと教育を受けて理解した人でなければ分析できませんでした。それが、AIのおかげで誰もが分析できるようになり、整理して分かりやすく出力できるようになった。これが、ここ数年で大きく変わった点です。私たちが目指しているのは、「働くことが楽しいと思える組織の構築」です。一人ひとりの個性が理解され、その強みが活きる場所で働けること。それが、組織全体の力にもつながっていくと考えています。勘と経験に頼らない、再現性のあるマネジメントへスタートアップや中小企業が直面する、教育とマネジメントの壁。熟練のマネージャーが持つ「勘と経験」を、テクノロジーはいかにして代替し、再現性のある組織づくりを実現するのだろうか。服部代表:私たちがこの事業をやってきて強く感じたのは、教育とマネジメントは、経験値に最も左右されるということです。だからこそ、スタートアップがつまずくのも、この教育とマネジメントなんです。たとえば入社2年目の社員が、部下を教育し、マネジメントする。これは、なかなかできることではありません。たまに、何も教育しなくても活躍する人がいます。けれど、そんな人材を探し当てることは難しい。だとすれば、教育とマネジメントでクリアしていくしかありません。ところが、その教育とマネジメントこそが、勘と経験値に左右されすぎているのです。私は、ここにこそデータを活用できるはずだと考えていました。どのように伝えて、どのように教えれば効果的なのか。それを、私たちのパーソナリティ分析なら導き出せる。そう確信していたのです。実際、いまこの分野には大きな追い風が吹いています。理由は3つあると考えています。1つ目は、人を資本として捉える「人的資本経営」への流れです。人を切り捨てるのではなく、いかに伸ばすかという視点が、これから圧倒的に重要になっていく。2つ目は、協業の増加です。自分の苦手は相手の得意、自分の得意は相手の苦手。それを見極めてチームを組むことが求められるようになりました。そして3つ目が、AI技術の発達です。正直に言えば、それまでは占いに近い、「当たっているね」というレベルでしか使えませんでした。それがいま、技術的に可能になった。感覚的にしか捉えられなかった人と人の相性を、定量的に示せるようになったのです。たとえば、教育とマネジメントに数十年と取り組んできた方の勘を、入社数年目の人でも高い精度で再現できるようになるのです。具体的には、その人の特性に合わせて、マネジメントのポイントまで示されます。たとえば、「物事を後回しにしてしまう傾向があるので、長期的な目標を持ち、優先順位をつけて習慣づけましょう」「集中力が途切れないよう、合間に休憩を挟むことが大事です」といった形で、教育方針が一人ひとり変わってきます。さらに、私たちは「バイオリズム」も取り入れています。これは、この時期に何をして成果を出した人が多いか、というデータを蓄積したもので、その人が結果を出しやすいタイミングまで見えてきます。30年近く積み上げてきた性格のデータベースを、AIが直接読み込んで、「この人に今月アドバイスをするなら」という形で言語化してくれるのです。こうした分析は、人材育成計画にも活きてきます。数年単位で、その人をどう伸ばしていくか。いまでは人事の方が、実際にこうした使い方をされています。経験の浅い若手社員であっても、相手に最適な言葉がけや指導ができる。膨大なパターンの言語化をAIが担うことで、それが現実になりました。これこそ、私たちが提供したい価値の核心だと考えています。人が辞めない、人が人を呼ぶ。データが変えた現場ツールの真価は、現場でどのような変化を起こせるかで決まる。ロジック・ブレインのパーソナリティ分析は、離職防止にとどまらず、リファラル採用という変化をもたらしていた。服部代表:私たちのパーソナリティ分析が現場で何を生んでいるのか。実際の事例をお話しします。離職の多くは、突き詰めれば人間関係から生まれます。だからこそ、相性の良くない者同士で無理に仕事をさせない。タイプ別に分かれてコミュニケーションを学ぶ研修を受けていただくことで、離職を大幅に減らした会社もあります。現代は人材が不足し、紹介会社を頼っても良い人がなかなか来ない、来てもすぐ辞めてしまうという声をよく聞きます。そうしたなかで、離職をいかに減らすかは、企業にとって本当に重要なテーマになっています。なかでも印象的なのが、九州のある企業の事例です。スタッフのコミュニケーション改善に取り組んでいただいた結果、40名だったスタッフが180名にまで増えました。しかも、その大半が社員からの紹介による採用で、採用にかけた費用はほとんどありません。驚くべきは、その立地です。福岡のなかでも、決して地の利が良いとは言えない場所です。それでも、これだけのリファラル採用が起きた。さらに、国立大学を卒業した学生が、店長を目指して入社してくれたのです。働く人がそこまで魅力を感じる職場が生まれたということだと思います。教育の現場でも、同じことが起きています。ある短期大学では、途中で学校を辞めてしまう学生に、課題の提出が遅れがちな子が多いという傾向がありました。そこで、辞めやすい学生にはどんな属性があるのかを分析したところ、ある共通点が見えてきたのです。ビッグファイブで言えば、誠実性が低く、外向性や協調性が高いといったタイプの割合が多かった。アルバイトに一生懸命になってしまうような子が、一定数いるわけです。その特徴が分かれば、入学した時点から手厚くフォローでき、実際に退学者が少なくなりました。パーソナリティ分析は、離職を防ぎ、チームの力を高め、さらには人が集まる組織を構築します。私たちが大切にしている「働くことが楽しいと思える組織の構築」が、現場で形になりつつあるのを実感しています。前編では、パーソナリティ分析という事業の本質や「教育とマネジメントの属人化」という課題への向き合い方、そして現場で起きている組織変革の実例について、お話を伺いました。後編では、営業支援クラウド「TENPiN」が切り拓く新たな顧客分析やAI時代に人間が担うべき役割、そして同社が見据える「人間理解OS」という壮大な構想について、お話を伺っていきます。服部真人/1995年ロジック・ブレインエンジンの基礎となる性格情報のデータベースの開発をスタートし、性格分析データベース「ISDロジック」を体系化。1997年4名のチームで「動物占い」を開発。コンテンツとして周知される。2010年~20年一般社団法人ISD個性心理学協会を設立。2000名を超える認定者。会員は1.8万人を超える。産官学連携に取り組む。2015年韓国で開催された「Plat Con-15」で個性と能力を題材にした論文を発表し、「最優秀論文賞」を受賞。2018年「企業の性格情報分析」の分野で世界一を目指すために株式会社ロジック・ブレインを設立。性格情報のデータベースにAIを搭載したロジック・ブレインエンジンを開発。現在250社の企業が導入している。企業の人事業務領域が抱える課題を解決へと導く「TOiTOi」を2020年3月にリリースし、すでに50社の企業が導入している。【会社概要】会社名株式会社ロジック・ブレイン設立2018年7月23日代表取締役社長服部 真人事業内容営業力を最大化するクラウドサービス【TENPiN】の製造・販売・サポート組織のコミュニケーション改善クラウド【TOiTOi】の製造・販売・サポート所在地 福岡本社福岡県福岡市中央区渡辺通5-14-12 南天神ビル3F