インタビュイー:株式会社MAGMA 代表取締役社長 福永 祐大様株式会社MAGMAが運営する「MAGMA RESORT Shimobe」は、宿泊とアクティビティを融合させた体験型リゾートの新たなモデルだ。舞台は、山梨県・身延町に佇む老舗温泉旅館「下部ホテル」。その使われていなかったスペースを活用し、“ホテルの中にホテルをつくる”という前例のないスタイルで、伝統と革新が共存する空間を生み出している。この構想を手がけたのが、株式会社MAGMA 代表取締役社長・福永祐大氏。体験によって人の価値観を揺さぶり、心を動かす時間を届けたい—そんな想いを原点に、宿泊業と体験事業をかけ合わせたまったく新しい滞在体験をつくり上げてきた。施設内では、「自然」「エンターテインメント」「伝統文化」「知育」の4カテゴリーを軸に、ハイキングや釣り体験、脱出ゲームやシューティングゲーム、さらには和紙づくりや花火体験まで、200〜300種類にも及ぶ多彩なアクティビティを用意。一日10〜20種のプログラムを通じて、親子で、仲間で、あるいは自分自身のために、非日常の中で感情を揺さぶる時間を味わえる。“ホテルの中にホテル”という革新的な事業を実現した福永社長に、起業を決意した背景から構想転換の裏側、そしてMAGMA RESORTが大切にする組織づくりの哲学、さらに今後の展望までを伺った。前例のない“ホテルの中のホテル”─ご縁が紡いだ挑戦の連鎖「自分の手で、人の心を動かす場をつくりたい」—。その思いが抑えきれなくなったのは、2024年元旦の朝だった。資金も場所も、まだ何ひとつ形になっていない。けれど、その背中を強く押したのは“人とのつながり”だった。そしてわずか数ヶ月後、“ホテルの中にホテルをつくる”という前例のないビジネスモデルが、山梨の地に誕生することになる。福永社長:私が独立を決意したのは、2024年の元日でした。年が明けたその朝、ふと湧き上がってきた思いがありました。それは「やっぱり、自分の手で、心を動かすような体験を創りたい」って。それまで頭の片隅にあった“いつか起業を”という考えが、その瞬間に輪郭を持って、はっきりとした“選択”に変わったんです。決意はしたものの、すぐに何かが動くわけではありません。事業計画も、資金も、場所さえ決まっていませんでした。でも、そんな時にふと前職時代にお客様として接していた方の顔が思い浮かんだんです。何気ない年始のご挨拶の流れで「実は、こんなことを考えていて…」と話したら、「やりたいと思うなら、やってみなよ。」と言ってくださいました。あの一言で、それまで抱えていた迷いが一気に吹き飛びました。私は2月には会社を辞め、独立に向けての準備を本格的に始めました。そして、後押ししてくれたお客様がいまでは弊社の出資者です。あのときの“雑談”が、こうして私の人生を動かしてくれるとは思ってもいませんでした。さらに驚いたのは、普通なら競合関係になってもおかしくない前職の会社の代表までが、「業界を一緒に盛り上げよう」と言って、私の挑戦に出資してくださったことです。「頑張れよ」と背中を押してくれるその姿勢に、心から感謝しています。思えば、独立の最初の一歩は、資金でもビジネスモデルでもなく、“信頼の連鎖”から始まっていました。人とのつながりが、見えない扉を次々に開いてくれています。そしてそのご縁が、“ホテルの中にホテルをつくる”という常識外れの挑戦へとつながっていきました。「廃校」から「温泉旅館」へー構想の転換が生んだ逆転のスタート起業を決めた福永代表がまず描いていたのは、廃校を活用した体験型リゾートだった。地域に眠る空き資産をリノベーションし、子どもたちや家族が自然体験や文化に触れられる拠点にする—そのビジョンは、彼の「体験には人を変える力がある」という信念に直結していた。しかし、理想と現実の間には想像以上に大きなギャップが待ち受けていた。福永社長:独立後、最初に思い描いたのは、グランピングでも温泉宿でもありませんでした。地方の廃校をリノベーションして、体験型の滞在拠点にする—これが私の出発点でした。ちょうど良い物件にも出会えて、「2024年の夏にはオープンできる」と本気で思っていました。しかし、現実はそう甘くありませんでした。学校は行政が所有する資産のため、取得手続きや活用の許可申請など、あらゆる工程に予想以上の時間がかかりました。オープン予定は延期につぐ延期。半年以上が過ぎる頃には、資金面でも精神的にも限界が近づいていました。「このままじゃ、本当に間に合わないかもしれない」—そう腹をくくった私は、思い切って方向転換することに決めました。ゼロから拠点を立ち上げるのではなく、“既存の施設を再生する”という形で、計画を見直したんです。その判断が、次の大きなご縁を引き寄せてくれました。ある知人を通じて、山梨中央銀行の方を紹介いただきました。そこで「今、ちょうど面白い案件がある」と紹介されたのが、山梨県・身延町にある老舗温泉旅館「下部ホテル」でした。聞けば、そのホテル内にある使われていない別館や宴会場を活用し、新たなブランドとして体験型リゾートを立ち上げてみないかという提案でした。正直、最初は「本当にそんなことが可能なのか?」と戸惑いましたが、話を聞くうちに、これまで私が描いてきた構想とぴたりと重なる部分が見えてきたんです。この話が持ち上がったのは12月。そこからわずか3ヶ月後、2025年3月には「MAGMA RESORT Shimobe」としてプレオープンを果たしました。“ホテルの中にホテルをつくる”という、まったく前例のないモデル。資金も時間もギリギリでしたが、「今動かなければ、このチャンスは二度と来ない」と心に決めて、突き進みました。迷いはありませんでした。いま振り返ると、廃校でつまずいたことも、行政とのやりとりで悩んだことも、すべてこの“出会い”のために必要な時間だったのかもしれません。諦めずに動き続けていたからこそ、想像を超える舞台にたどり着けたのだと思っています。ど真剣に、前向きに。MAGMA RESORT Shimobeが大切にする二つの言葉。一日一日を全力で生きる。どんなに小さな仕事にも意味があると信じて取り組む。オープンから1年足らずのMAGMA RESORT Shimobeには、そんな熱量のこもったスタッフが集まっている。全員が体験づくりのプロであり、子どもと遊ぶことに本気で向き合い、ゲストの「楽しかった」の一言に心から喜べる仲間たち。その空気感の中心にあるのが、福永代表が組織づくりの土台として掲げる、ふたつの言葉だ。福永社長:MAGMA RESORT Shimobeをオープンして、もうすぐ1年が経ちます。まだスタートしたばかりの施設ですが、すでに多くのお客様に足を運んでいただいています。運営しているスタッフは、いわゆる“ホテルマン”ではありません。アクティビティづくりのプロ集団であり、誰よりも“体験”と“人”に向き合う集団です。彼らの中には、子どもと全力で遊ぶことにやりがいを感じている人もいれば、地方創生を目指す人、社会を変えたいと真剣に考えている人もいます。想いのベクトルは違っていても、「目の前の人を楽しませたい」という根っこの部分は共通しています。その熱量こそが、MAGMAらしさを形づくっているのだと思います。私自身がこの事業を通じて、組織運営で大切にしている言葉が二つあります。一つは「一日をど真剣に生きる」。もう一つは「成果=熱意 × 能力 × 考え方」という言葉です。どちらも、私の母校の大先輩である稲盛和夫さんから学んだものです。私が前職にいたとき、真夏の引っ越し作業や清掃といった“裏方”の仕事も多く経験しました。最初は「これが本当に自分のやりたいことなんだろうか」と思うこともありました。でも、ある日、同僚と本気で作業に取り組んだ瞬間、不思議とその時間が楽しく感じられたんです。「真剣にやれば、どんな仕事でも楽しくなる」という言葉の意味が腑に落ちた瞬間でした。だから私は、スタッフにもよくこう伝えています。「楽しい仕事を探すのではなく、今の仕事を“自分の姿勢”で楽しくする」。このマインドがあるかないかで、チームの雰囲気も、お客様に伝わる空気も全く違ってくると思うんです。そしてもう一つの「成果=熱意 × 能力 × 考え方」。熱意や能力は、努力によって伸ばせる。でも、「考え方」だけはプラスにもマイナスにも振れる要素だと稲盛さんは言っています。いくら能力が高くても、考え方が後ろ向きだと、成果はマイナスになる。一方で、まだ経験が浅くても、素直に吸収し、前向きに仕事に取り組める人は、必ず結果を出せると信じています。この考え方は、MAGMAの組織づくりの軸にもなっています。ど真剣に、前向きに。そして本気で人と向き合う。その姿勢があるからこそ、私たちは“心を動かす体験”を提供できるのだと思います。一人ひとりに寄り添う体験を。MAGMA RESORTが描く新たな挑戦。「この体験は、あの人のために設計されたものだ」—そう思ってもらえる時間を、どれだけ届けられるか。体験には人を変える力がある。だからこそMAGMA RESORTは、拠点を増やすこと以上に「一人ひとりに寄り添う体験」を磨き続けている。地域資源と人の心に根ざしたオーダーメイドの感動体験—その新たな挑戦が始まっている。福永社長:現在、下部に続く次の拠点として、木更津や熱海といった関東圏での展開が進みつつあります。いずれのエリアでも、ただ施設を展開するのではなく、「その土地ならではの文化や自然を活かす体験」を軸にしています。関東にとどまらず、沖縄や海外への進出も視野に入れています。世界にはその土地ならではのストーリーがあります。例えば、ブラジルであればサンバ、日本であれば和紙や花火。その地域の人たちの営みや文化と手を取り合い、そこに“MAGMAの体験設計”を重ね合わせていく。私たちは、日本の“おもてなし”の精神を根っこに持ちながら、世界各地でその土地の魅力と融合する形で、心を動かす体験を届けていきたいと考えています。そして、どれだけ拠点を広げても、MAGMAの真髄は“オーダーメイドの体験”にあります。私は大学時代にアルバイトしていた割烹料理店で、そのヒントを得ました。その店では、メニュー表に縛られず、その日の食材やお客様の好みに応じて、料理をその場で組み立てていくスタイルだったんです。それを、MAGMA RESORTのアクティビティ設計にも応用できるのではないかと考えました。例えば、あるご家族が滞在されたとして、お子さんの性格やその日の体調、親御さんの希望—そういった要素を踏まえて、「今日この人たちのためにベストな体験は何か?」を考える。そんなふうに、一人ひとりに寄り添った体験を組み立てる仕組みを、今後さらに強化していきたいと思っています。最近では、法人からの問い合わせも増えています。社員旅行やチームビルディングを兼ねた企業研修など、「体験を通じて組織に変化を起こしたい」というニーズが明確に感じられます。アクティビティ自体は童心にかえって楽しめるものが多いのですが、そこに“企業の課題解決”という目的をセットすることで、また違う価値が生まれると感じています。実際にご依頼を受けた企業様では、課題や関係性に合わせてアクティビティ内容をフルカスタマイズし、社員同士の相互理解や連携がぐっと深まる瞬間に立ち会うことができました。誰かと一緒に本気で遊び、本気で笑う時間は、大人になっても変わらず特別なものなんですよね。「体験が人を変える」と信じて始めたMAGMA RESORTだからこそ、これからも一人ひとりに寄り添う体験を、国内外問わず、必要としている場所へ届けていきたい。心の奥がふっとほどけるような時間を、もっと多くの人と共有していきたい。そう思っています。前編では、MAGMA RESORT設立当初のエピソードをはじめ、現在の事業展開や、福永社長が大切にされている想いについて伺いました。後編ではさらに、福永社長の少年時代のエピソードや、起業との出会い、そして前職での経験など、原点に迫ります。