インタビュイー:マークスライフ株式会社 代表取締役 花原 浩二 様事故物件や空き家は、一般的に「扱いが難しい」とされて敬遠されがちである。しかし、その背景にある「困りごと」に着目し、不動産の価値そのものを再定義しているのが、マークスライフ株式会社 代表取締役 花原浩二氏である。同社は「不動産の可能性を追求し、世の中の困りごとを解決する」というビジョンのもと、不動産再生を起点に、住まいや暮らし全体の課題解決へと事業領域を広げてきた。花原氏はハウスメーカーで17年半にわたり街づくりに携わる中で、人口減少下において住宅を供給し続ける構造的な矛盾に直面する。さらに、ふるさとの衰退という現実と向き合う中で、「困っている人を助ける」という原点に立ち返り、起業を決意した。事故物件に特化した「成仏不動産」の立ち上げを皮切りに、葬儀業界との連携による独自のビジネスモデルを構築し、情報の“源流”から価値を創出する仕組みを確立している。前編では、マークスライフ株式会社 代表取締役 花原浩二氏に、同社独自の事業モデルや創業に至る二つの想い、成仏不動産を始めたからこそ生まれた葬儀業界との連携ビジネスについて、お話を伺った。「負動産を富動産へ」ー不動産再生を起点に、住まいと暮らしの総合支援へ負の不動産を富の不動産へ。独自の視点で不動産業界に切り込んできたマークスライフ。事故物件や空き家の再生にとどまらず、住まいと暮らし全般の課題解決へと事業を広げてきた原点には、花原代表の「困っている人を助ける」という想いがあった。花原代表:マークスライフは、事故物件や空き家など、一般的には扱いが難しいとされるいわゆる“負の不動産”を、“富の不動産”へ転換していく、不動産再生を軸としたサービスからスタートしました。そこから徐々に不動産の周辺サービスへと領域を広げ、現在では住まいや暮らしに関わる課題解決まで担う、ライフソリューション企業へと進化しています。「負動産を富動産へ」という考え方自体は創業当初からありましたが、その言葉を最初から掲げていたわけではありません。というのも、私たちの出発点はあくまで「困っている人を助ける」というスタンスにあったからです。困りごとの背景を辿っていくと、結果として“負の不動産”に行き着いた。つまり、「負の不動産だから扱う」のではなく、「困っている人がいて、その要因の一つに“負”とされる不動産があった」という順番です。その最初の一歩が、事故物件に特化したサービスの立ち上げでした。当社が事故物件を扱う「成仏不動産」というサービスを開始したのは2019年ですが、当時の事故物件のイメージは、現在とは明らかに異なっていました。事故物件を扱うこと自体を公にすることが、「企業としてどうなのか」と受け止められかねない、いわばタブー視される雰囲気があったのです。それが近年では、「触れてはいけないもの」ではなく、社会課題として向き合い、解決していくべき対象へと認識が変わりつつあると感じています。空き家についても同様に、社会的な捉え方は変化しています。都市部における新築価格の高騰を背景に、中古住宅へと需要がシフトしています。その影響で、都市部の不動産事業者における仕入れ競争は一層激化しています。結果として、従来の手法では仕入れが難しくなり、業態を転換して空き家に注力する事業者も増えてきました。ただし、依然として未開拓な領域は多く、解決すべき論点も残されています。今後、本格的に取り組みが進んでいく分野だと捉えています。仕事で感じた矛盾と故郷への想いが起業につながった花原代表は、ハウスメーカーでの17年半を経て39歳で起業した。その決断の裏には、仕事を通じて感じた矛盾とふるさとへの想いがあった。花原代表:私は前職でハウスメーカーに17年半勤務し、街の開発や住宅建設に携わっていました。入社当初は神戸支店に配属され、ゴルフ場が多く、いわゆるベッドタウンのような場所を担当していました。その担当していた地域に12年後に戻った際、街がゴーストタウン化している現実を目の当たりにしました。その光景が忘れられない中、街の再生の依頼を受け、責任者としてプロジェクトに関わることになりました。しかし途中で横浜への転勤が決まり、再生の取り組みは自分の手を離れることになってしまいました。横浜で日々の業務に向き合いながらも、「やり切れなかった」という思いは心の奥に残り続けていました。その感情の正体を突き詰めていく中で、業界の構造的な矛盾に目が向くようになりました。開発や住宅供給はもちろん重要です。しかし、人口が減少しているにもかかわらず住宅を建て続ければ、空き家が増えるのは避けられません。その矛盾に向き合う中で、「いずれ空き家になる可能性のあるものをつくり続けている」という感覚に、罪悪感にも似た想いが強まっていきました。そうした葛藤を抱える中、2013年に父が亡くなりました。この出来事をきっかけに、自分の残りの人生を「誰かの役に立つこと」に振り切りたいと強く思うようになりました。人生の最期に「やり切った」と言える生き方をしたい。そのために行動しようと決意しました。何をやるべきかと考えたとき、頭に浮かんだのは、ふるさとである兵庫県豊岡市の風景でした。鳥取県に近く、田園風景が広がる地域です。過疎化が進み、小学校の統廃合が進んでいる現実も耳にしていました。仕事で感じていた業界の矛盾と、ふるさとへの想い。その両方を解決するために起業を決意し、2016年9月末、39歳で退職しました。ただ、実際のスタートは完全なゼロからの独立ではありませんでした。雇われ社長として不動産業に入り、現場で経験を積む道を選びました。というのも、「ハウスメーカーと不動産では勝手が違う。不動産の知識や慣習を理解せずに起業するのはリスクが高い」と助言を受け、休眠会社を引き受けて2〜3年経験を積むことにしたのです。そして2019年、オーナーに独立の意向を伝えたところ、「株を渡すので残ってほしい」と打診を受け、MBOを実施しました。そこから、事故物件の買取を行う「成仏不動産」など、自身が本当に取り組みたかったサービスに着手していきました。成仏不動産を起点に、葬儀業界との連携で生まれた独自の不動産ビジネスマークスライフは、葬儀業界との連携を通じて、空き家や相続不動産の課題を支える独自のビジネスモデルを築いてきた。その取り組みは、不動産の売買にとどまらず、遺された人の困りごとに寄り添う支援へと広がっている。花原代表:事故物件と呼ばれる不動産のなかには、適正な価値よりも低く扱われてしまうケースが少なくありません。こうした状況の中で当社が着目したのが、“情報の源流”に入ることでした。ご逝去直後、ご遺族様や関係者が最初に接点を持つのはご葬儀会社様であり、住まいに関する情報もそうした場に集まりやすい。私たちは源流から情報を得て、適切な流通につなげるため、葬儀業界との連携を開始しました。ただ、単に「不動産情報をください」とお願いする関係性は望んでいませんでした。そこで、自社のビジョンである「不動産の可能性を追求し、世の中の困りごとを解決する」という考えを、葬儀業界の課題解決にも重ね合わせて業務提携の提案を行ったのです。ご葬儀単価が下がる中、ご葬儀後に約30%が空き家になるという現状があります。空き家に困る相続人の方々を当社が支援し、ご葬儀会社様にとっても新たな収益機会を生む。このビジネスモデルを提案したことで提携は一気に拡大し、現在では葬儀業界全体の17.7%にまで広がっています。当初は「ご葬儀の場で不動産の話をするのは難しい」との声もありましたが、私はご葬儀をエンディングではなく、「人が亡くなることで困りごとが発生し、支援が必要になるスタート」と捉えていました。実際、ご葬儀から数日〜1週間で住居の問題は顕在化し、対応が求められます。放置すれば「特定空家」などの社会課題にもつながっていきます。こうした考えのもと、見せ方も含めて整え、社名を「マークス不動産」から「マークスライフ」へ変更しました。不動産会社という枠にとどまらず、遺された方の暮らし全体に向き合う存在であることを、より正しく伝えるためです。一方で、本事業は収益化まで一定の時間を要します。相続整理や登記に2〜3カ月、その後販売開始まで約半年、収益化はさらにその先、約1年後となります。つまり、過去の提携が現在の収益となり、現在の提携が将来の収益につながる構造です。この点は、一般的な不動産業とは大きく異なります。通常は売却ニーズが顕在化したタイミングでスピード勝負となり、「どこが買い取るか」を競り合う構図になりがちです。しかし当社のモデルは、情報の入口に近い段階から関わるためリードタイムが長く、その分参入障壁も高くなります。初期から関係性を築いていることで相談もしやすく、結果としてサポートの質も高めやすいと感じています。競合は存在するものの、ご葬儀会社様との連携を軸に“情報の源流”から入るモデルは独特です。当社は空き家に限らず、農地・山林・事業用不動産まで幅広く対応し、『原則「断らない」』ことを掲げています。また、ご遺族様の困りごとは不動産にとどまりません。遺品整理や税金、各種契約の解約など多岐にわたります。そうしたニーズに応える中で、不動産売却に加えて周辺手続きまで支援する形へと発展し、結果としてライフソリューション企業へと変化してきました。さらに現在では、ご葬儀後にとどまらず生前対策にも領域を広げ、離れて暮らす親のみまもり、相続、不動産、終活といった生活支援全般を行う「じつまど-実家の相談窓口-」というサービスも展開し、関連事業者や金融機関との連携を通じて、事業の幅を拡張しています。前編では、同社独自の事業モデルや創業に至る二つの想い、成仏不動産を始めたからこそ生まれた葬儀業界との連携ビジネスについて、お話を伺いました。後編では、理念を軸にした組織づくりと地方創生への展望について、お話を伺っていきます。花原浩二/流通科学大学卒業。阪神淡路大震災を経験したことから、地震に負けない家づくりをしたいと新卒で大手ハウスメーカーに入社後、分譲住宅営業に従事し、横浜支社では営業所長を歴任。父の死をきっかけに「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強め、2016年にNIKKEI MARKS(現:マークスライフ株式会社)を創業。「世のために。人のために。」を企業理念に掲げ、事故物件を扱う「成仏不動産」をはじめ、空き家や相続不動産などの買取再販、売買仲介を行う。現在は総合生活支援へと事業を拡張し、他業種や自治体と連携して不動産の枠を超えた社会課題の解決に取り組む。【会社概要】会社名マークスライフ株式会社創業2016年代表取締役花原浩二事業内容不動産買取事業不動産仲介事業(売買仲介および賃貸仲介)不動産活用コンサルティング事業生活関連サービス業所在地東京都中央区日本橋本石町3-1-2 大阪ガス都市開発日本橋ビル4階サイトURLhttps://marks-house.jp/