インタビュイー:マークスライフ株式会社 代表取締役 花原 浩二 様事故物件や空き家は、一般的に「扱いが難しい」とされて敬遠されがちである。しかし、その背景にある「困りごと」に着目し、不動産の価値そのものを再定義しているのが、マークスライフ株式会社 代表取締役 花原浩二氏である。同社は「不動産の可能性を追求し、世の中の困りごとを解決する」というビジョンのもと、不動産再生を起点に、住まいや暮らし全体の課題解決へと事業領域を広げてきた。花原氏はハウスメーカーで17年半にわたり街づくりに携わる中で、人口減少下において住宅を供給し続ける構造的な矛盾に直面する。さらに、ふるさとの衰退という現実と向き合う中で、「困っている人を助ける」という原点に立ち返り、起業を決意した。事故物件に特化した「成仏不動産」の立ち上げを皮切りに、葬儀業界との連携による独自のビジネスモデルを構築し、情報の“源流”から価値を創出する仕組みを確立している。後編では、マークスライフ株式会社 代表取締役 花原浩二氏に、理念を軸にした組織づくりと地方創生への展望について、お話を伺った。任せる文化が支える、組織づくりと拠点拡大マークスライフの拡大を支えているのは、独自の事業モデルだけではない。その裏側には、「任せる文化」を基盤とした組織設計と採用戦略がある。花原代表:当社では、服装はオフィスカジュアルを基本としています。ただし、ご葬儀会社様を訪問する際にはネクタイを着用するなど、TPOは徹底しています。また、不動産業界には「ノルマが厳しい」というイメージがありますが、当社ではチームで目標を持ち、全員で達成を目指すスタイルです。働き方については、週2日の公休取得日を自由に選択できるようにしたり、フレックス制も導入しています。そのうえで、自由である分、成果にしっかり向き合うことを求めています。こうした働きやすい環境をつくりたいという想いは、創業当初から持っていました。私自身、前職ではやり方を1から10まで指示され、本来は別の方法を試したいと感じていても、その通りに動かざるを得ないことがありました。指示通りに動いても、結果が出なければ責任は自分が負う。その不条理さに強い違和感を覚えていたのです。だからこそ当社では、同じような状況を生まない組織にしたいと考えてきました。そのため、社員が「やりたい」と手を挙げたことについては、倫理やリスクの観点で大きな問題がない限り、基本的に任せるようにしています。任せることで、現場の一人ひとりが主体的に判断し、行動できるようになるからです。その結果は社内にも表れており、「入社して良かったか」という問いに対して約99%以上の社員が「はい」と回答しています。任されているからこそ、自ら考えて動ける。その実感が納得感につながっているのだと思います。こうした任せる文化を現場で機能させるためには、仲間づくり、すなわち採用も重要です。現在は支店拡大のフェーズにあるため、採用は同業界からのキャリア採用が中心となっています。一定の経験や知識がなければ、拠点の立ち上げに時間がかかってしまうためです。支店は現在(2026年4月時点)で18拠点まで拡大しています。継続的に増えている背景には、提携先の存在があります。事業者様と提携が決まると、「このエリアにも支店を開設してほしい」という要望をいただくことがあり、実際に出店することでニーズが確認できたケースも多くあります。年内にも複数の拠点開設が決まっています。新規拠点の立ち上げにあたっては、まず既存の支店からメンバーを送り込み、一定の軌道に乗った段階で現地採用を進め、現地の支店長へと引き継いでいくケースが多いです。立ち上げ初期の支店長は、当社の方針や文化を深く理解しているメンバーが担います。こうした立ち上げフェーズでは、短期間で成果を出しながら、当社のやり方や文化を現場に定着させていく必要があります。そのため採用においては、どうしても即戦力の比重が高くなりがちです。本音としては、新卒社員や異業種の方にも参画いただき、時間をかけて育成していきたいという想いもあります。今年は20名の新卒社員を迎えるので、当社の理念や文化を一から身に着けてもらい、将来の会社を担うポジションに成長してくれることを期待しています。理念は「掲げる」ものではなく、実行するもの。一気通貫の組織づくり拠点拡大が進む中で、理念と現場のずれをどう防ぐかは大きな経営課題になる。花原代表は、理念を最上位に置く仕組みづくりと、顔を合わせる機会の両面から組織運営に向き合っている。花原代表:最近とくに意識しているのは、理念が生まれた原点と、それが単なるスローガンで終わっていないかという点です。事業・採用・評価、そして社員一人ひとりの振る舞いが理念に沿っているか。そこを意識し続けなければ、いずれ組織にズレが生じ、機能しなくなると考えています。世の中には、理念が社員を動かすための“道具”になってしまったり、そもそも理念を忘れられてしまっている企業もあります。当社ではそうならないよう、採用・評価・人事配置を理念に基づいて一貫させています。採用は理念への共感を前提とし、評価も理念ベースで行います。成果は報酬で適切に報い、役職は「人格者」に与えるという考え方です。どれだけ数字を出していても、人格者でなければ責任者にはしない。理念に基づく一貫性こそが重要だと考えています。また、私自身の「言っていること」と「やっていること」がずれた瞬間に、すべてが崩れるとも感じています。たとえば「社会に貢献したい」と言いながら、その姿勢と矛盾する行動を取れば、社員は違和感を覚え、離れていくでしょう。だからこそ当社では、序列の最上位に代表ではなく理念を置いています。その全体を担保するために10の行動指針を定め、実践できているかを無記名の360度評価で運用しています。私自身も全社員から評価を受け、その結果を通じて自らを律しています。こうした仕組みがなければ、経営者は容易に裸の王様になってしまうと思います。社員の声を拾う取り組みも、4〜5年前から続けています。言語化されていなくても課題はすでに存在していると捉え、社員から挙げられた問題を経営会議で共有し、「できる・できない・その理由」を整理したうえで、一つずつ解消していきます。社長や経営陣が本気で改善に向き合う姿勢を示すことで、社員も主体的に動くようになる。そうした当たり前の感情を大切にしています。一方で、会社が成長し拠点が増えるほど、理念や文化は意識的に伝えていかなければ薄れていきます。そのため、顔を合わせる機会も重視しています。全国に拠点が広がる中で、私自身も現場を回っていますが限界があるため、全社員が集まる場を定期的に設けています。現在は3カ月に1回、対面での全体会議と懇親会を実施し、社員旅行も行っています。こうした場でしか得られないコミュニケーションがあると考えています。顔が見えなくなった瞬間に距離が生まれ、組織はちぐはぐになりやすい。だからこそ「集まる文化」を現在のフェーズでは重視しています。これから1000人、さらにその先の規模へと成長していく中で、いまのメンバーが中核を担う存在になります。一体感を醸成し、規模が拡大しても崩れない組織をつくる。そのための今だと考えています。地方にこそ可能性がある―未来視点と逆張りで見出す次の一手地方創生への取り組みは、単なる事業ではなく、使命だと語る花原代表。未来から逆算する視点と、逆張りの発想は地域に新たな可能性を見出している。花原代表:地方創生は、私にとっての使命だと捉えています。実際に、故郷である兵庫県豊岡市に企業版ふるさと納税を活用し寄付を行ったり、町の再生にも関わっています。たとえば「旅館をつくってほしい」という声を受け、宿泊施設の開発を検討していますし、観光客や関係人口を増やす取り組みも進めています。そのために、市長や観光協会、地域振興局といった各所と連携をしながら進めています。地元の但馬牛の生産者にも支援いただき、地域全体で盛り上げようとしているところです。こうした取り組みは不動産だけでは完結せず、人材の確保や、食や文化の整備、マーケティング、さらには地域企業の再生まで、幅広い対応が求められます。こうした地域再生に取り組むうえで意識しているのは、未来から逆算して考えることです。とくに「10年後のAI」を前提に、「いま何をすべきか」を考えることが重要だと考えています。未来をどこまで具体的に描けるかによって、打ち手の精度は大きく変わる。一方で、その前提が外れれば、結果も大きく変わると感じています。ただ、世の中の多くは「いまのAI」を基準に考えている印象があります。2〜3年先を見ている人はいても、10年、20年先まで具体的に描けているケースは多くありません。だからこそ、できるだけ先の未来を具体化することで、見える景色が変わってくると感じています。もう一つ大切にしているのが、逆張りの視点です。私はもともと、人と逆のことを選ぶ傾向があり、結果として誰もやっていない領域に進んできました。前職時代も「お願いをしない営業」を貫くなど、一般的とは異なるやり方を取っていました。意図的というより、「困っている人を助けたい」と動いた結果、他の人がやっていない領域にたどり着いていたという感覚です。最近では「成仏不動産」という言葉も広まり、社会に浸透してきた実感があります。そうなると、次の逆張りをしたくなる。何かを判断するときも、「多くの人が向かっている方向ほど、一度立ち止まって考える」ようにしています。同じ方向に人が集中するほど、リスクが高まると考えているからです。そのうえで、20年後、50年後のAIを想像したときに、その領域で勝負できるかどうかを重視しています。地方創生や不動産のように「人の感情」を扱う領域は、簡単にはなくならない。企業や街の再生においても、住民との合意形成など、人にしかできない部分が残り続けると考えています。いまは「地方は厳しい」という見方が強まっていますが、多くの人がそう考えるからこそ、私はそこに可能性を感じています。未来を見据えたときに、まだ価値を生み出せる余地がある。だからこそ、地方創生に本気で取り組みたいと思っています。インタビュー後記今回は、マークスライフ株式会社・代表取締役・花原浩二氏にお話を伺いました。不動産という領域にありながら「物件」ではなく「困りごと」を起点に価値を再定義し、情報の源流からビジネスを構築する視点に強い独自性を感じました。さらに、理念を事業・採用・評価・人事配置まで一貫して落とし込み、未来から逆算して意思決定を行う姿勢が、事業と組織の双方において競争優位を生み出しているのだと学ばせていただきました。花原浩二/流通科学大学卒業。阪神淡路大震災を経験したことから、地震に負けない家づくりをしたいと新卒で大手ハウスメーカーに入社後、分譲住宅営業に従事し、横浜支社では営業所長を歴任。父の死をきっかけに「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強め、2016年にNIKKEI MARKS(現:マークスライフ株式会社)を創業。「世のために。人のために。」を企業理念に掲げ、事故物件を扱う「成仏不動産」をはじめ、空き家や相続不動産などの買取再販、売買仲介を行う。現在は総合生活支援へと事業を拡張し、他業種や自治体と連携して不動産の枠を超えた社会課題の解決に取り組む。【会社概要】会社名マークスライフ株式会社創業2016年代表取締役花原浩二事業内容不動産買取事業不動産仲介事業(売買仲介および賃貸仲介)不動産活用コンサルティング事業生活関連サービス業所在地東京都中央区日本橋本石町3-1-2 大阪ガス都市開発日本橋ビル4階サイトURLhttps://marks-house.jp/