インタビュイー:株式会社エプリ 代表取締役社長 牛尾 佳子様株式会社エプリは、「自信と誇りを取り戻そう」というメッセージのもと、八王子に本店を構える美容サロン「ニキビ研究所」を展開している。同社は、「これまで何をしてもニキビが改善されなかった」というお客様に対し、皮膚科や医療機関とは異なる立場から、徹底したカウンセリングと最先端のニキビケアを提供している。ただ施術を行うだけでなく、肌の正しい扱い方を学び、体の内側から美しさを育むことで、自分に自信を持てるようになることを目標としている。この理念は、牛尾社長自身が20年間にわたる肌荒れの悩みを抱え、それを克服した経験から生まれたものである。また、患者だけでなく社員も幸せになれる職場をつくるため、同社では選択理論心理学を取り入れた教育体制を整えている。前編では、美容サロン「ニキビ研究所」を通して多くの人々の人生を変えてきた株式会社エプリの代表取締役社長・牛尾佳子氏に、同社設立の背景や経緯について伺った。肌と心の両面から支える、自分再生のケア肌の悩みに真摯に向き合い続ける株式会社エプリ。全国14拠点で展開するニキビ専門サロン「ニキビ研究所」は、“正しいケアを届ける”ことを使命に掲げている。牛尾社長:現在、当社はニキビ専門のエステサロン「ニキビ研究所」を運営しております。直営店が7拠点、フランチャイズが7拠点、合計で14拠点展開しています。お客様にはニキビケアに特化した施術を提供し、美容業に携わる方々には専用商材の提供やニキビケアスクールの運営、またフランチャイズ事業を通じて、パートナーとして共に事業を広げています。すべての軸に「ニキビケア」というテーマを据え、総合的なサポートを行っています。日々お客様と接する中で強く感じるのは、「情報が多すぎて、何が自分に必要なのか分からない・何をしても改善しない」という声です。ニキビができている方、ニキビ跡に悩んでいる方、それぞれに異なる原因がありますが、ほとんどの方が「自分の現在地」を正しく理解できていないんです。例えば、「ピーリングが良さそう」と聞いて試してみても、それが今の自分の肌状態に合っていなければ、逆に悪化することもあります。結果が出ずにお金だけが減ってしまう。まるでサイズの合わない靴を履いて歩いているようなものです。どんなに良い靴でも、自分に合っていなければ痛いし、歩きにくい。それと同じなんです。それに、医療の現場ではニキビはあまり重視されていないと感じます。命に関わるものではないからです。アトピーは重症化すれば命の危険もある一方で、ニキビは「死なない」から軽く見られがちです。でも、実際には体内の状態が反映されてできるものなので、根本改善をしなければ何度でも繰り返します。薬をやめた途端に再発してしまうのは、原因が解消されていないからです。結局、自分がどんな生活をしたらニキビが出るのか、その因果を理解していないと、いくら外側から対処しても解決にはつながりません。そして「これだけ頑張っているのに治らない」という経験は、自己肯定感を大きく下げてしまうんです。肌の問題のように見えて、実は心の問題でもある。何度も失敗を繰り返すうちに「どうせまたダメなんじゃないか」と思ってしまう。そうなると、肌だけでなく、人生全般に影響が出てしまいます。だからこそ、私たちは「肌をきれいにする」だけでなく、「自分を取り戻す」ための場所を提供したいと考えています。ニキビが改善される過程で、お客様が少しずつ笑顔を取り戻していく姿を拝見すると、本当にこの仕事をやっていてよかったと感じます。最初は下を向いていた方が、数か月後には堂々と前を向いて歩けるようになる。その変化は、肌以上に心の変化なんです。これからも、ひとりでも多くの方が自分を好きになれるように、ニキビケアを通して“自信の再生”を広げていきたいと思っています。20年の悩みが導いた、肌と自分を取り戻す道牛尾社長が「ニキビケア専門サロン」という道を選んだ背景には、20年にわたる深い苦しみがある。それは、思春期から続いた肌へのコンプレックスと、何をしても報われなかった年月だった。牛尾社長:私の実家は飲食店を経営していました。幼いころから“働く”ということがとても身近で、父や母の背中を見て育ちました。両親を心から尊敬していましたが、その分、自分をちっぽけに感じることも多かったです。特に母はとても綺麗な人で、思春期の私はいつも自分と比べて落ち込んでいました。実家が料理店だったこともあり、10歳の頃には着物を着て看板娘としてお客様の前に立っていました。完璧な立ち居振る舞いを求められる環境で、恥ずかしくない接客をしようと必死に努力しました。しかし、荒れた肌や食事の多い環境による体型の変化は、鏡を見るたびに自信を徐々に奪っていきました。大人になってからも、肌の悩みは消えませんでした。皮膚科、化粧品、エステ……ニキビに効くと聞けば、どんなものでも試しました。でも結果はどれも同じ。むしろ悪化してしまうこともあり、気づけば20年もの間、ニキビと向き合い続けていました。長く悩み続けると、やがて「どうせ自分なんて」と思うようになります。肌だけでなく、人生そのものに対しても諦めのような感覚が染みついていきました。転機が訪れたのは34歳のとき。子育てにも少し余裕が出てきた頃でした。幼稚園の送り迎えのとき、すれ違った女性の肌があまりにも綺麗で、「あなたのような肌になりたいんです……!」と思わず声をかけてしまったんです。 その方が紹介してくれた化粧品を試し、正しいスキンケアを続けると、見る見るうちに肌が改善されていきました。担当してくれた方がとても綺麗で、その方を信じて使い続けたのも大きかったと思います。しばらくして、ニキビが本当にできなくなったんです。最初は嬉しさよりも悔しさが込み上げてきました。「どうして、もっと早く出会えなかったんだろう」「この20年を返してほしい」そう強く思いました。その化粧品は、最先端の技術というよりも、人間の肌が本来持っている組成に近い成分で、肌そのもののバランスを整えるものでした。価格は高かったけれど、「これで人生最後のチャレンジにしよう」と思い切って購入したんです。そして1年後、本当に肌が変わった。「正しく理解し、正しくケアすれば、人の肌は必ず応えてくれる」と確信しました。この経験を通して学んだのは、“肌をきれいにすること”以上に、“自分を信じ直すこと”の大切さでした。あの20年の苦しみがなければ、今の私はいません。 あの“悔しさ”こそが、私の原点です。挑戦と学びの連鎖。ニキビ研究所誕生の経緯牛尾社長は、20年にわたる肌の悩みと向き合い、自分自身を信じ直す経験を経て、その原点に立ち返った。そこから、どのような経緯でエプリを設立したのかを伺った。牛尾社長:私は、最初から会社を立ち上げようとは思っていませんでした。化粧品販売を、当時習い事くらいの感覚で始めました。訪問販売の会社で、販売員がお客様に直接化粧品を販売するという形態です。初めての仕事でしたが、実家が自営業だったこともあり、仕事に対するモチベーションは高かったと思います。お客様のために、やるからには全力を尽くす。その姿勢を常に意識し続けました。結果として、全国で表彰されるほど成績を伸ばすことができました。販売の仕事を続けるうちに、自分の下にチームができました。「私も牛尾さんのようになりたい」と言ってくれるメンバーが現れ、組織をまとめる立場になったとき、初めてマネジメントの難しさに直面しました。自分は一生懸命やっていても、チームメンバーの中には趣味程度に取り組む人や、モチベーションの低い人もいます。お給料を払って雇用しているわけではないため、個々の温度差を調整するのは容易ではありません。どうすれば全員が力を発揮できるのか、毎日悩む日々でした。そのとき、私はリーダーとしての自分のあり方や、人生の方向性について真剣に考え始めました。リーダーシップやマネジメントを学ぶ講義に参加し、「自分は本当にどういうリーダーになりたいのか」「人生で何を成し遂げたいのか」と向き合いました。講義を通して、自分が化粧品販売を続けたいのではなく、肌や美容で悩む人の力になりたいのだという原点に気づきました。「人の力になれる仕事をしたい。」その想いが、私の心の中心にあることを改めて実感しました。ニキビ専門のクリニックを作ろうと、学びをさらに深めるために行動を起こしました。未経験であったにもかかわらず、美容皮膚科に片っ端から履歴書を送りました。「働きたい」「学びたい」という気持ちを頼りに、何件も応募し、面接に臨みました。その行動力があったからこそ、美容皮膚科で働く機会を得ることができました。美容皮膚科での経験は、理想と現実のギャップを知る大きな学びになりました。先生が化粧品や日焼け止めのサンプルを配りますが、医師はビジネス色を嫌うため、使い方の講習会を開く提案をしても受け入れてもらえませんでした。また、業務も専門性が高まるものは少なかったです。「ここでは学びや理想が実現できない。」と感じ、退職しました。しかし、この経験こそが自分に必要な学びであり、「自分の手で本当に人を助けられる環境をつくろう。自分は医療人ではないので、医療をコントロールするのは難しい。美容なら経験があるのでサロンを設立しよう」と決意するきっかけとなったのです。こうして、私は美容の世界で自分の経験と知識を活かし、肌で悩む人に寄り添う道を選びました。美容皮膚科で働いた期間は短かったですが、独立してニキビケア専門サロンを立ち上げる決断につながりました。行動することで学び、挑戦することで道を切り拓く。この経験が、私の原動力であり、多くの人に寄り添い続ける力になっていると感じています。前編では、エプリ創業の背景や経緯についてお話を伺いました。後編では、選択理論心理学や今後企業を志す方へのメッセージを伺います。