インタビュイー:株式会社STORY plus 代表取締役社長 畑 圭一郎様株式会社STORY plusは、経営幹部層を中心とした採用支援事業と50代以上の女性向けダンスコミュニティ「らくリズ」を展開している。採用支援事業では、経歴やスキルだけでなく、企業と個人の想いや価値観を捉える「Will matching」を掲げ、採用を通じた経営課題の解決と、入社後の活躍を支援している。らくリズでは、「今が青春」をコンセプトに、懐かしい歌謡曲やソウルミュージックに合わせたダンスを通じて、人とつながり、自分らしく過ごせる心の居場所を育んでいる。一見異なる2つの事業に共通するのは、「一人でも多くの人が豊かな人生を歩むきっかけを創る」という想いである。STORY plusにとってのウェルビーイングとは、心身の健康だけではなく、一人ひとりが自らの意思で人生を選び、豊かさを実感できること。2つの事業を通じて、一人でも多くの人にそのきっかけを届けることを目指している。代表取締役社長を務める畑圭一郎氏は、京都府で生まれ、大学まで野球に打ち込み、卒業後は大手百貨店の株式会社三越伊勢丹に入社。その後、人材開発・組織開発を手掛ける株式会社レアリゼ、エグゼクティブサーチ事業を行う株式会社経営者JPで、組織と経営に関する経験を重ねた。約5,000名の経営者やリーダー層の想いに触れる中で培った知見をもとに、2020年にSTORY plusを設立した。後編では、株式会社STORY plus 代表取締役社長 畑圭一郎氏に、採用や転職の目的に向き合う仕事観や、野球チームの構想から「らくリズ」が生まれた経緯、豊かな人生を支えるための今後の事業構想について、お話を伺った。「どんな人が欲しいか」ではなく、「なぜ必要なのか」。採用の本質を捉える仕事観採用の背景にある「なぜ」を問い、企業が本当に必要とする人材を提案する。その姿勢に、STORY plusが提供する価値が表れている。畑代表:私たちが企業から採用の相談を受けた際、最初に確認しているのは、「どのような人が欲しいのか」ではなく、「なぜ、その人が必要なのか」ということです。求める経歴やスキル、年収などの条件を確認することも必要ですが、それだけでは、採用を通じて何を実現したいのかまでは見えてきません。例えば、同じ役職の人材を求めていたとしても、その背景にある経営課題は企業によって異なります。採用の目的を正しく理解できれば、企業が当初想定していた人物像が、本当に課題の解決に適しているのかを改めて検討できます。そのため、経営幹部層の採用では、可能な限り経営者や役員陣から直接お話を伺うようにしています。現在どのような経営課題を抱えているのかだけでなく、これからどのような組織をつくりたいのか、どのような考え方を大切にしているのかまで理解しなければ、その企業に合う人材を提案することは難しいからです。採用の目的まで踏み込んで考えると、企業が当初想定していた人物像とは異なる方が、実は課題の解決に適していることもあります。実際に、「当初は想定していなかった経歴の方だったが、入社後に非常に活躍している」と評価していただくこともあります。条件に合う人を探すだけではなく、企業が本当に必要としている人材を考え抜くことに、私たちが介在する価値があると考えています。これは、転職を希望する方との面談でも同じです。ご本人が希望する転職先や条件をそのまま受け取るのではなく、なぜ転職したいのか、その先でどのような人生を実現したいのかまで伺います。その結果、転職を急ぐのではなく、まずは現職で取り組むべきことがあるとお伝えする場合もあります。もちろん、ご本人の希望と異なる提案をすれば、すぐには理解していただけないこともあります。それでも、私たちの役割は、採用や転職を成立させることだけではありません。企業の経営課題が解決され、入社した方が長く力を発揮できる状態をつくることが、最終的な目的です。社内のコンサルタントにも、目の前の要望だけを見るのではなく、その背景にある目的まで考えるよう伝えています。相手にとって本当に必要なことを考え抜いた結果であれば、たとえ期待されている答えとは異なっていても、信念を持って提案することが大切です。採用支援は、条件に合う人を紹介するだけの仕事ではありません。企業と個人の双方を深く理解し、個人が長く力を発揮し、企業の成長にもつながる関係をつくる仕事です。「なぜ」という問いを重ね、採用や転職の目的を見失わないことが、プロフェッショナルとして提供すべき価値だと考えています。野球チーム構想から生まれた「らくリズ」。世界観を運営の軸に人が豊かに生きる力を、幼い頃から育む場をつくりたい。恩師と進めた野球チームの構想は事業化に至らなかったが、その過程で見いだした新たな可能性が、「らくリズ」の誕生へとつながった。畑代表:STORY plusを創業してからは、まず、自分がこれまで培ってきた経験を生かせる採用支援事業に取り組みました。事業が少しずつ成長し、会社の基盤が整い始めた頃、「豊かな人生を支えるために、ほかにどのような事業ができるだろうか」と考えるようになりました。私が人の豊かさを考えるうえで、重要だと捉えているものの1つが教育です。究極的には、一人ひとりが幸せを感じられるものの見方を身につけていれば、置かれた環境に左右されず、自分の人生を豊かなものとして受け止めやすくなると考えています。大人になってから学ぶことも大切ですが、人格形成の土台がつくられる子どもの頃から、そうした力を育むことには大きな意味があります。そのため、将来的には、学校のような教育の場をつくりたいと考えていました。一方で、学校をすぐに事業として立ち上げることは難しいとも感じていました。そこで着目したのが、私自身が大学まで続けてきた野球です。指導方針やチーム運営の在り方を工夫すれば、子どもたちが野球の技術を身につけるだけでなく、自分で考え、選択し、行動する力も育めるのではないか。そう考え、野球チームの立ち上げに向けて動き始めました。この構想を周囲に話していたところ、高校野球時代の恩師が「面白いから一緒にやろう」と声をかけてくれました。私が京都へ帰省するたびに話し合いを重ね、恩師は奥さまとともに東京へ移り、本格的に準備を進めることになりました。しかし、想いだけで事業を継続することはできません。約1年をかけて、チームの運営方法や必要な費用、収益性などを検討しましたが、事業として成立させるには難しい点が多くありました。そこで、その時点での事業化は見送ることにしました。その頃、恩師から、奥さまが京都で高齢者向けのダンスを教えていると聞きました。話を聞く中で、取り組み方次第では事業として成り立つだけでなく、人が生き生きと過ごし、人とのつながりを感じられる場をつくることにもつながるのではないかと感じました。そこで、まずはダンス事業に取り組み、その経験を将来的な野球や教育の事業にもつなげていこうと考えました。こうして生まれたのが、シニア女性向けダンスコミュニティ「らくリズ」です。らくリズの運営では、細かなルールを一律に設けるのではなく、私たちが大切にする世界観を判断の基準にしています。そのため、インストラクターには、ダンスを教える技術だけでなく、どのような場をつくりたいのかを理解し、その考えに沿って行動することが求められます。運営する側にとって、状況に応じて考え続けることは簡単ではありません。それでも、共通する価値観を持って一人ひとりに向き合うからこそ、マニュアルだけでは生まれない血の通った場をつくれると考えています。こうした運営を続ける中で、らくリズは、単にダンスを楽しむスクールではなく、参加者同士がつながり、その場にいること自体を楽しめるコミュニティへと育ってきました。継続して通ってくださる方も増え、現在では約800名が参加する規模になっています。多くの方が、らくリズの世界観に共感し、自ら足を運んでくださっていることに、この事業の価値を感じています。提供するサービスの内容だけでなく、そこに流れる空気や人との関係性まで含めて選んでいただける場をつくることが、コミュニティ事業において何より大切なのだと実感しています。「肩書」という鎧を脱ぎ、想いを語れる場へ。豊かな人生を支える事業の広がり所属や役職にとらわれず、一人の人間としてつながれる場をつくる。人が豊かに生きるために必要なものを見つめながら、STORY plusは事業の可能性を広げている。畑代表:これから取り組みたいことの1つが、大人になってから新たな友人をつくれるコミュニティです。大人になると、「どの会社に勤めているのか」「どのような役職に就いているのか」といった肩書を背負って人と接する場面が増えていきます。社会で働くうえでは必要なものですが、その鎧を着たままでは、自分の本音や想いを素直に語ることが難しくなる場合もあります。小学生の頃の友人とは、相手の会社や立場を意識することなく、自然に関係を築くことができました。大人になってからも、肩書を外し、一人の人間として向き合える場をつくれないかと考えています。具体的な形はまだ検討している段階ですが、まずは小さく形にし、参加する方々とともに育てていきたいと思っています。らくリズを運営する中でも、コミュニティが持つ可能性を感じています。人が集まり、互いにつながる場があれば、そこから新たな活動や挑戦が生まれていきます。人は、いつでも前向きでいられるわけではありません。苦しいときや迷ったときに、そこへ行けば少し元気になり、また前を向ける。新たなコミュニティも、そのように心のエネルギーを補える場にしたいと考えています。まずは、採用支援事業とらくリズをさらに多くの方へ届けるとともに、新たなコミュニティも継続的な事業として形にしていくことが目標です。定量的には、3年後に売上10億円、5年後には15億円ほどの規模を目指しています。ただし、売上は事業を継続し、より多くの方へ価値を届けるために必要な指標であって、それ自体が最終的な目的ではありません。私たちが中長期的に目指しているのは、「豊かな人生をつくる会社といえばSTORY plus」と認識していただける存在になることです。私は、人が豊かに生きるためには、いくつかの要素が必要だと考えています。まず大切なのは、自分の人生をどのように捉えるかという視点です。そのうえで、健康やお金などの生活基盤、自分が実現したい想い、想いを形にするための仲間、安心して自分らしくいられる居場所も欠かせません。STORY plusでは、こうした要素を事業を通じて一つずつ支えていきたいと考えています。現在の採用支援事業は、自分が実現したい想いに気づき、それを形にする仲間との出会いをつくるものです。一方、らくリズや今後立ち上げるコミュニティは、安心して自分らしくいられる居場所を育む役割を担います。さらに将来は、子どもたちの人格形成に関わる教育事業にも取り組みたいと考えています。学校や野球を通じて、自分で考え、進む道を選び、自らの想いに向かって行動できる力を育む場をつくることが目標です。採用支援事業、コミュニティ事業、教育事業は、それぞれ異なる事業に見えるかもしれません。しかし、私の中では、すべてが1つの目的につながっています。一人でも多くの方が、自分の想いに気づき、自らの意思で人生を選び、豊かに生きるきっかけを届けること。そのために必要な事業を1つずつ形にしながら、STORY plusとしてできることを広げていきたいと考えています。編集後記今回は、株式会社STORY plus 代表取締役社長 畑圭一郎氏にお話を伺いました。お話全体を通じて一貫していたのは、目の前の条件や要望だけで判断するのではなく、その背景にある一人ひとりの想いを捉え、豊かな人生を歩むために何が必要かを考え続ける姿勢でした。双方のWillの接点を探る採用支援も、世界観を大切にしながら心の居場所を育む「らくリズ」も、今後構想するコミュニティや教育事業も、すべて「一人でも多くの人が、自らの意思で人生を選び、豊かに生きるきっかけをつくる」という想いにつながっています。相手が求めているものをそのまま提供するのではなく、その先に実現したい人生や状態まで見つめ、本当に必要な手段を考え抜くこと。その一貫した姿勢が、事業の形を越えて人に価値を届ける力になるのだと学ばせていただきました。畑 圭一郎/1981年京都府生まれ。中京大学体育学部卒業後、株式会社三越(現・三越伊勢丹)に入社。小売の現場で、人が働くこと、組織が動くことのリアルに触れる。その後、人材・組織開発コンサルティング会社、経営幹部に特化したエグゼクティブサーチ会社を経て、5,000名以上の経営者・ビジネスリーダーと向き合う。多くの出会いを通じて、採用や転職において本当に大切なのは、スキルや経験の一致だけではなく、「仕事において何を大切にしたいのか」「どんな未来に向かいたいのか」というWillの重なりであると実感。2020年に株式会社STORY plusを設立し、「一人ひとりが想いを持ち、希望あふれる社会を実現する」という理念のもと、個人と企業の想いをつなぐ「Will matching」を軸にした人材紹介事業と、シニア女性向けダンスコミュニティ事業を展開している。【会社概要】会社名株式会社STORY plus設立2020年3月3日代表取締役社長畑 圭一郎事業内容・エグゼクティブサーチ事業/人材紹介事業・採用コンサルティング事業・経営理念浸透・企業風土改革コンサルティング事業・コミュニティ事業/研修・講演事業・野球教育事業・らくリズ事業所在地東京都千代田区二番町9-3 THEBASE麹町 W233