インタビュイー:テックマークジャパン株式会社 代表取締役社長 長谷川俊哉様テックマークジャパン株式会社は、グローバルに保険ソリューションを提供する大手保険グループ・AIGの一員として、延長保証制度の設計・運営を手がける企業である。1994年に日本で延長保証ビジネスを開始して以来、30年以上にわたり、家電や自動車をはじめとする幅広い製品の延長保証制度を支えてきた。同社は、自ら修理や保険の引き受けを行うのではなく、クライアント企業のニーズに合わせて、保証範囲や修理体制、申し込み・修理受付の対応などをオーダーメイドで設計し、制度の運営まで一貫して担っている。長年にわたり蓄積してきた修理データを分析し、製品の品質改善や部品の在庫管理、販売促進につながる提案を行うことで、クライアント企業の事業成長を支援している点も特徴である。代表取締役社長を務める長谷川俊哉氏は、カリフォルニア州立大学でMBAを取得後、外資系製薬会社を経て、タイの地場銀行で日系企業の新規開拓に従事した。その後、世界的な米系商業銀行のバンコク支店に移り、決済やキャッシュマネジメントに関する専門知識を深めた。2005年にAIGグループへ入社し、財務・資金管理業務を担当。2021年からテックマークジャパンの取締役を務め、2024年12月に同社の代表取締役社長に就任した。前編では、テックマークジャパン株式会社 代表取締役社長 長谷川俊哉氏に、延長保証を企業の競争力へと変える同社の事業モデルや、逆境のなかで信頼を築いたタイでの営業経験、そして安定したキャリアから社長就任を決意するまでの葛藤について、お話を伺った。延長保証の裏側を設計する。30年のデータ蓄積とオーダーメイド設計で支える安心はじめに、同社の事業内容について、お話を伺った。長谷川代表:テックマークジャパン株式会社は、延長保証制度の設計から運営までを担う会社です。たとえば家電量販店で冷蔵庫や洗濯機を購入する際、メーカー保証の終了後も修理を受けられる延長保証を案内されることがあります。当社は、その仕組みをクライアント企業ごとに設計し、実際の運営まで一貫して支援しています。延長保証と聞くと、保険を引き受けたり、修理を行ったりする会社をイメージされるかもしれません。しかし、当社自身が保険の引き受けや修理を行うわけではありません。不具合が発生した際にどの修理会社へ依頼するのか、申し込みをどのように受け付け、修理依頼にどう対応するのか。延長保証に必要な要素を一つひとつ組み合わせ、安定して運用できる制度に整えることが当社の役割です。当社はAIGグループの一員として、1994年に日本で営業を開始しました。当時の日本では、延長保証という考え方はまだ一般的ではありませんでした。いまでは家電量販店などで広く導入されていますが、当時は新しいサービスだったのです。クライアント企業にとって、延長保証は競合との差別化につながります。保証期間や対象範囲を工夫することで、消費者の方に商品を選んでいただく新たな動機を生み出せるからです。近年は、商品そのものの機能や価格だけで差別化することが難しくなっています。一方、消費者の方には、購入した商品を安心して長く使いたいというニーズがあります。そのため延長保証は、単なるアフターサービスではなく、商品の価値を高め、購入後もお客さまとの関係を築いていくためのマーケティング手段になっていると感じています。当社の大きな強みの一つが、30年以上にわたって蓄積してきた修理データです。どの製品にどのような不具合が起きやすいのか、どの部品に故障が多いのか、どの程度の頻度で修理が発生するのか。延長保証の運営を通じて、さまざまな情報が蓄積されています。こうしたデータを分析することで、クライアント企業に対し、品質改善や部品の在庫管理、販促施策などに関する助言を行うことができます。延長保証を運営するだけでなく、そこで得られた情報を次の商品開発や販売戦略に活かしていただくところまで支援できることが、当社の付加価値です。もう一つの特徴は、クライアント企業ごとにオーダーメイドで制度を設計していることです。あらかじめ決められたパッケージをそのまま提供するのではなく、それぞれの事業や商品、顧客層に合わせて仕組みをつくります。保証の対象範囲をどこまで広げるのか、どの修理会社へ依頼するのか、お客さまアンケートをどのように設計するのか。そうした細かな部分まで、クライアント企業と一緒に検討していきます。こうした複雑な調整を当社が担い、クライアント企業とエンドユーザーの双方にとって価値のある制度へと形にしていく。延長保証の裏側には、外からは見えにくい数多くの設計や調整があります。その一つひとつに丁寧に向き合い、制度を安定して機能させることが、当社の役割だと考えています。すぐに結果が出なくても、関係をつなぐ。アジア通貨危機で実を結んだ地道な営業条件面で不利なタイの地場銀行の営業として、日系企業の新規開拓に挑んだ長谷川氏。門前払いが続くなかでも顧客との接点を絶やさず、地道に関係を築き続けた。その積み重ねは、1997年のアジア通貨危機を機に大きな成果へとつながり、現在の経営姿勢の原点となっている。長谷川代表:私は1991年にカリフォルニア州立大学でMBAを取得後、外資系製薬会社に入社し、財務部門を担当しました。その後、1995年にタイへ移住し、約10年間を現地で過ごすことになります。最初の5年間はタイの地場銀行に勤務し、日系企業の新規開拓を担当しました。当時のタイには、製造拠点を構える日本企業が数多くあり、私はそうした企業に地場銀行との取引を提案する役割を担っていました。しかし当時勤務していた銀行は、日系銀行と比べて金利が高く、サービス体制も十分に整っていませんでした。条件面での競争力が低く、営業環境は非常に厳しいものだったのです。電話をかけても、門前払いになることがほとんどでした。100件電話をしても、話を聞いていただけるのは数件。ようやく可能性のある案件に出会えても、社内で稟議を上げると承認されないこともありました。それでもただ待っているだけでは、顧客を獲得できません。そこで私は、お客さまのもとへ毎日欠かさず足を運び、直接顔を合わせる地道な営業活動を続けました。何度断られ、時には厳しい言葉を受けても、諦めずに訪問を重ねました。相手の話に耳を傾け、一つひとつの対話を積み重ねることで、少しずつ関係を築いていったのです。転機となったのは、1997年のアジア通貨危機です。日本の銀行が融資に慎重な姿勢を取るようになる一方、地場銀行には資金余力がありました。そのため、日系企業の方々も、現地通貨を扱う地場銀行と関係を築いておくことの重要性を強く意識するようになりました。すると、それまで訪問を重ねてきた企業から、次々と連絡をいただき、顧客が一気に増えることになります。すぐに成果が出ない時期にも接点を持ち続けていたからこそ、必要になったときに思い出していただけたのだと思います。この経験は、いまでも私の経営に対する考え方の原点になっています。たとえすぐに結果が出なくても、まずはお客さまに会いに行く。相手の話に耳を傾け、必要なときに思い出していただける関係を築く。地道な関係値づくりの積み重ねが、やがてビジネスにおける確かな信頼につながっていくのだと考えています。安定したキャリアから、経営の最前線へ。若いエネルギーを信じて選択した社長就任世界的な米系商業銀行で培った決済・資金管理の知見を礎に、帰国後はAIGグループで財務管理を担ってきた長谷川代表。安定した環境に留まることへの葛藤を抱くなか、若いエネルギーに満ちたテックマークジャパンの社長就任の打診を受ける。長谷川代表:タイでの後半5年間は、世界的な米系商業銀行のバンコク支店に移り、決済やキャッシュマネジメントに関する専門知識を深めました。その後、日本へ帰国し、2005年に保険事業を展開するAIGグループへ入社しました。AIGグループでは、貸金管理業務を担当しました。保険会社には、大規模な災害が発生した際にも、迅速に保険金をお支払いできる体制が求められます。私は、数千億円規模の資金を確保・運用するなど、万一の事態に備えた資金管理に携わってきました。責任の大きな仕事を任せていただく一方で、次第に自分の中に葛藤も生まれました。長年にわたって同じ領域に向き合うなかで、求められる役割や仕事の進め方も見えるようになっていました。恵まれたポジションと待遇をいただきながら、このまま定年まで波風を立てずに過ごしてよいのだろうか。これまでの経験を、別の形で活かせる機会があるのではないかと考えるようになったのです。そうした想いを抱いていた2024年、テックマークジャパンの前社長が退任することになり、私に社長就任の打診がありました。テックマークジャパンには、2021年から取締役として関わっていましたが、当時からテックマークジャパンには若い社員が多く、常に新しいことを考えようとする活気があり、そのエネルギーには大きな可能性を感じていました。打診を受けた際には、少し考える時間をいただきましたが、心の中ではすでに引き受けるつもりでいました。これまで取締役として見てきたエネルギーを、自ら社内に入り、リーダーとしてさらに前へ進めていく。それは非常に面白い挑戦になると考えたからです。社長就任は、安定した環境から一歩踏み出す決断でもありました。同時に、これまで培ってきた経験を、新しい形で活かす機会でもあります。活力ある組織のリーダーとして社員一人ひとりの力を引き出し、ともに新しい価値を生み出していく。その挑戦に向き合うことに、大きな意義を感じたのです。前編では、延長保証を企業の競争力へと変える同社の事業モデルや、逆境のなかで信頼を築いたタイでの営業経験、そして安定したキャリアから社長就任を決意するまでの葛藤について、お話を伺いました。後編では、社員とその家族の生活を背負う経営者としての責任や、延長保証をノンメカニカル領域へと広げる挑戦、そしてデータとDXを活用して描くテックマークジャパンの未来について、お話を伺っていきます。長谷川 俊哉/米国でMBAを取得後、製薬会社や金融機関を経て、AIGグループで財務・トレジャリー領域を中心に要職を歴任。2024年12月よりテックマークジャパン株式会社代表取締役社長に就任。延長保証業界で30年以上の実績を持つ同社において、「売上の拡大」「サービス品質向上」「データの活用」を軸に、延長保証サービスのさらなる価値向上に取り組んでいる。【会社概要】会社名テックマークジャパン株式会社営業開始年1994年代表取締役社長長谷川 俊哉事業内容・各種延長保証制度のコンサルティングと運営クライアント企業様のマーケティング戦略に合わせた延長保証制度の設計・開発から業務フローの改善、および運営コストや修理コストのコントロールからリスクコントロールに関わる全ての業務所在地東京都墨田区錦糸3-2-1 アルカイースト18階