インタビューイー:土地家屋調査士法人COLORS 代表 中村章吾様2010年に創業された土地家屋調査士法人COLORSは、土地/不動産の場所や形状、用途といった物理的状況を調査・測量して、図面作成や不動産表示に関する登記申請支援などを手がけている。長年、国の委託業務をはじめ多くの戸籍調査や相続調査に携わる中で、代表社員である中村章吾氏は、よりスムーズに相続手続きを行えるサービスの必要性を感じ、自ら『らくらく相続図』を立ち上げた。これは、戸籍謄本をOCRで読み込み独自ロジックによる解読で、「法定相続情報一覧図」の作成まで行う戸籍解析システムだ。『らくらく相続図』の導入実績は同業者を中心に着実に積み上がり、金融業界や大手企業への導入提案も進んでいる。土地家屋調査士として国や企業の案件を捌く一方でシステム開発もするという前例のない取り組みに挑むCOLORS代表の中村氏に、新規事業立ち上げに挑戦された経緯や想いについて話を聞いた。COLORSが取り組む土地家屋調査士業とソフトウェア開発の二刀流中村代表は、土地家屋調査士の在籍数が日本でトップの土地家屋調査士法人に入社後、神戸支店の立ち上げ責任者を経て、2010年に個人事務所として独立。その後、「土地家屋調査士法人COLORS」とソフトウェア開発や販売を手がける「株式会社COLORS」の2社を設立した。はじめに、2社それぞれの事業内容についてお話を伺った。中村代表:1社目の土地家屋調査士法人COLORSでは、事業内容が主に2つございます。まずは、法務省から依頼される不動産の権利証関連の仕事で、地図の作成や不動産の名義変更を手掛けています。例えば、国が道路を建設する際、予定地の土地所有者がすでに亡くなっている問題が生じることがあります。このようなケースでは、相続人を特定するために多くの時間と労力が必要になるため、国からの委託という形でこれらの調査業務を行っています。もう一つは、不動産会社からの依頼で、購入した土地での家屋の建築に向けた一連の作業を行っています。土地の測量や隣接する土地所有者との境界線の確認、およびその書面を取り交わし、法務局への提出を担っております。2社目の株式会社COLORSは、元々は1社目である「土地家屋調査士法人COLORS」のバックオフィスやシステム関係を担うための会社として設立をしました。土地家屋調査士法人COLORSで戸籍の調査や相続の調査を沢山ご依頼いただくため、その業務を効率化する最適なシステムはないのかと探していたのですが、未だ日本では存在しないことに気がつきました。そのため自分たちで作ってみようと思い立ったことがきっかけで「らくらく相続図」を株式会社COLORSの事業として立ち上げました。新規事業「らくらく相続図」について亡くなった方が不動産を所有していた場合に生じる不動産の名義変更が、2024年4月から義務化される。相続をめぐる制度の変更に伴って、重要な役割を果たす新規事業「らくらく相続図」についてお話を伺った。中村代表:「戸籍謄本」という言葉は、一般的に聞き馴染みがあるかと思います。しかし、戸籍謄本を見たことはあるかと問われると、結婚や離婚といった人生の節目にしか扱わないため、普段から一般の人が目にすることはあまりないですよね。そして多くの場合、次に戸籍謄本が必要になるのは親が亡くなった際の相続手続き時となってしまいます。しかし、昔ながらの縦書き形式から現代のものまで、戸籍謄本の形式は複数存在し、5種類ほどにも及びます。これら一枚一枚の戸籍謄本を読み解いて情報をまとめることがとても大変になってしまうという課題があるのです。テクノロジーが全く介入されていない領域のため、人の目で戸籍謄本を見て、何が書かれているか判断するしか方法がないんですよね。当社にはこれまでの戸籍調査の事例で培ってきた圧倒的なナレッジがありますので、この課題の解決に取り組むことを決心しました。事業の立ち上げは私ともうひとりの役員の2名で。2人で新規事業に向けた社内手続きを進め、「らくらく相続図」の構想を思い立ってからは要件定義の検証を何回も重ねていきました。私自身、プロダクトの開発は未経験であるために手探りで新規事業を進める一方で、我々が相続の専門家だからこそ、良いものができるのではないかという自負はありましたね。完成した「らくらく相続図」では戸籍謄本をアップロードするだけで、専門知識は不要で誰でも相続図を自動で作成ができるようになりました。ご親族の方が亡くなられて銀行口座が凍結した際、必要な戸籍謄本の確認作業を「らくらく相続図」を通せば一瞬で完了することができます。そういった人生の節目で生じる煩雑な手続きを我々の手によってスムーズに、時間や余分な工数をかけずに行える世の中にしたいと考えております。前編では、COLORSの事業内容と、新規事業「らくらく相続図」の立ち上げまでに至った背景について伺いました。後編では、「らくらく相続図」を通して得ることができた成果や、中村代表の実体験を踏まえた新規事業の立ち上げに必要な考え方について伺いました。