インタビュイー:X Mile株式会社 代表取締役CEO 野呂 寛之様物流、建設、製造といったノンデスク産業は、人々の衣食住を支える社会インフラである。しかしそこには、「働き手の不足」と「労働生産性の低さ」という2つの大きな課題が存在している。この双方の課題の解決に挑んでいるのが、X Mile(クロスマイル)株式会社だ。同社は、働き手の不足に対しては、ノンデスク事業者向けの人材プラットフォーム「クロスワーク」を提供。一方、労働生産性の低さに対しては、業務効率化ソフトウェア・AI「ロジポケ」をはじめとするノンデスク経営プラットフォームを展開している。代表取締役CEOの野呂寛之氏は、大学在学中からスタートアップで働き始め、建設業界のDXスタートアップ、EVスタートアップのベトナム支社における事業立ち上げ、フィンテック企業での取締役など、10年以上にわたりスタートアップの第一線を歩んできた。令和元年にX Mileを創業し、「令和を代表するメガベンチャーを創る」というミッションのもと、日本のインフラ産業の変革に挑んでいる。後編では、X Mile株式会社 代表取締役CEO 野呂寛之氏に、創業から4年間あえて表舞台に立たなかった真意や物流から日本のノンデスク産業全体へと広がる未来構想、次世代へのメッセージについて、お話を伺った。 参入障壁を築いた4年間と、事業領域拡大への挑戦創業から約4年間、野呂代表はあえて表舞台には立たず、事業を育て続けた。その背景には、競争環境を見据えた合理的な戦略と、より大きな挑戦に備えるための狙いがあった。 野呂代表:物流領域で事業の方向性が見え始めてから、当社は表立ったPR活動をほとんど行いませんでした。実際、創業から4年ほどはメディアにも出ておらず、前職時代の知人ですら私が起業したことを知らなかったほどです。前職では競争の激しい市場を経験しており、多くのプレイヤーが参入することで価格競争が起き、事業運営が難しくなる場面も見てきました。その経験があったからこそ、まずは十分な参入障壁を築くことに集中したかったのです。資金調達についても慎重に考えていました。スタートアップでは創業初期から投資家の支援を受けるケースも少なくありませんが、事業の方向性が固まる前に株式を放出することには慎重でした。事業モデルは市場環境によって変化しますし、創業初期は経営の意思決定も柔軟に変わります。だからこそ、まずは自己資金と融資を活用しながら事業を伸ばし、本当に勝ち筋が見えた段階で成長投資を受ける方針を取っていました。こうして参入障壁を築きながら、自己資金と融資を活用して着実に事業を伸ばした結果、物流領域で一定のポジションを確立することができました。社員数も増え、売上も伸び、組織の仕組み化も進んでいく。経営者が現場のあらゆる業務を直接見なくても、事業が回る状態になっていったのです。会社が組織として自走し始めたことで、私自身は次の一手を考える時間を持てるようになりました。もともと私は、フィンテックをはじめ新しいビジネスモデルへの挑戦を志して起業しています。しかし当時は、人材支援という手堅い事業を行っていました。志す事業と足元の事業に乖離があること自体は、起業家であれば誰しも通る道かもしれません。そこで私は、人材支援にとどまらず、業務効率化や経営支援といった新たな事業領域へと踏み出すことを決めました。人材という一つの入り口から、ノンデスク産業の課題をより広く解決していく。既存事業で築いた基盤の上に、もう一度事業を立ち上げるような感覚で取り組んでいきました。物流から建設、製造へ。日本のノンデスク産業を支える未来構想物流業界で築いた基盤は、あくまで出発点に過ぎない。野呂代表が見据えているのは、日本のノンデスク産業全体を変革する未来である。 野呂代表:当社はこれまで、物流業界を中心に採用支援から始まり、業務効率化を支援するソフトウェアの提供、さらに経営支援へと事業領域を広げてきました。私たちの中では、「採用支援」「DX支援」「経営支援」という3段階の成長ステップを描いており、物流業界ではその土台が少しずつ形になり始めています。そしていま見据えているのは、この仕組みを物流以外の産業にも展開していくことです。建設業界や製造業界にも、物流業界と共通する課題は数多く存在します。人手不足に悩み、業務の多くがアナログで、経営課題も複雑化している。そうした産業に対して、私たちが物流業界で培ってきたノウハウやプロダクトを横展開できる余地は大きいと考えています。その先にあるのは、単なる人材サービス会社でも、ソフトウェア会社でもありません。企業が経営上の課題に直面したとき、まず最初に相談される存在になりたいと思っています。採用、人材育成、業務効率化、資金調達、設備投資など、経営に関わるあらゆる課題に対して価値を提供できるプラットフォームをつくりたいと考えています。私自身、創業以来ずっとノンデスク産業に関心を持ち続けてきました。それは、これらの産業が社会を支える基盤だからです。どれだけテクノロジーが進化しても、物流が止まれば物は届きませんし、建設が止まれば街のインフラは維持されません。だからこそ、そこで働く方々がもっと活躍できる環境をつくることには大きな社会的意義があると考えています。私たちが実現したいのは、テクノロジーによって産業全体の生産性を高めることだけではありません。現場で働く方々が正しく評価され、より働きやすく、より活躍できる社会をつくることです。物流から始まった挑戦ですが、その先には建設、製造、そして日本のノンデスク産業全体の変革があります。創業以来描いてきた未来に向けて、これからも着実に事業を広げていきたいと思っています。日本から新たな価値を生み出すために。次代を担う使命最後に、これから起業を志す方へのメッセージを伺った。野呂代表:私がX Mileを創業した背景には、日本から新しい価値を生み出す企業を増やしたいという想いがあります。学生の頃に抱いた日本経済の停滞への危機感は現在も変わっていません。日本には素晴らしい企業が数多くありますし、高い技術力や優れた人材もいます。ただ、これから先の日本経済の成長を考えたときには、新しい価値を生み出す挑戦がより一層必要になると考えています。日本のあらゆる産業は、誰かが起業家として立ち上げてきました。現在の大企業も、かつてはベンチャー企業と呼ばれる時代があった。起業家精神が、現代日本の巨大な経済を築いてきたのです。そこから雇用が生まれ、人々の暮らしが成り立っています。だからこそ私は、起業家という存在そのものが、この国にとって重要な資源だと考えています。とはいえ、私は全員が起業すべきだとは考えていません。挑戦のかたちは起業だけではありませんし、ビジネスの領域は年々複雑になっており、生半可な気持ちで踏み出せるものではなくなっています。ただ、挑戦する覚悟を持った人が孤立してしまうことのないようにしたいのです。身近な経営者にどんどん相談し、知見を交換していく。それが日本経済全体の底上げになりますし、私自身も貢献していきたいと思っています。そして、覚悟を決めて踏み出す方に伝えたいのは、経営面での数字の計画は悲観的に、慎重に考えながらも、楽観的な気持ちで取り組んでほしいということです。陰と陽の両方を併せ持つ人は強い。オタク気質だけれど、どこか明るさもある。あるいはその逆で、陽気に見えて実は内気だったりする。経営では本当にさまざまなことが起こります。だからこそ、この両立が極めて重要だと考えています。X Mileの挑戦は、単に一企業の成長を目指すものではありません。日本の基幹産業が再び力強く成長し、その中から新しい挑戦者や新しい価値が次々と生まれていく。その挑戦の先に、日本がもう一度世界の中で存在感を発揮できる未来を創っていきたいと思っています。編集後記今回は、X Mile株式会社 代表取締役CEO 野呂寛之氏にお話を伺いました。16歳で一人アメリカへ渡り、世界各国の若者たちが自国の未来を真剣に考えて、明確な目標を持って学ぶ姿を目の当たりにした野呂代表。その経験をもとに抱いた日本経済への危機感が、後にスタートアップの世界へ進む原動力になった点が印象的でした。日本経済の停滞を悲観するだけでなく、自分自身が新しい産業を生み出し、次世代のリーダーを育てることで未来を変えていく。その強い志から、社会課題に向き合うスタートアップの意義、そして挑戦する人が次の挑戦者を生み出す循環の大切さを学ばせていただきました。野呂 寛之/北海道出身。国際基督教大学(ICU)卒業。在学中、テラモーターズ株式会社のベトナム支社に駐在し、製造拠点・物流網の構築・販路拡大に従事。その後カンボジア拠点長としてEV三輪車の事業立上げを経験。帰国後、FinTechスタートアップ・株式会社ペイミーに2番目の社員として入社参画、取締役COOに就任。2019年(令和元年)、X Mile株式会社を創業し代表取締役CEOに就任。【会社概要】会社名X Mile株式会社設立年2019年代表取締役CEO野呂 寛之事業内容HRプラットフォーム事業DX・AIプラットフォーム事業経営支援プラットフォーム事業所在地東京都新宿区新宿6-27-30 新宿イーストサイドスクエア W7F