インタビュイー:大和財託株式会社 代表取締役CEO 藤原正明様大和財託株式会社は、「資産価値共創業」を掲げ、不動産と建築領域を活用した事業を展開している。資産価値を共に創る様々なサービスを通じて、お客様に経済的豊かさや心理的豊かさなど、人生の潤いを提供する。さらにその潤いを循環させて、ステークホルダー全員を幸せにすることを使命としている。主な事業は、不動産開発・運用事業、および建築事業である。土地の仕入れから設計・建築、販売、賃貸管理・運用までを自社で一貫して提供し、投資家やオーナーに対して資産価値の最大化を見据えた総合的なソリューションを実現している。また、土地活用事業にも注力しており、デザイン性と収益性を両立した設計・施工を強みに、運用まで見据えた付加価値の高い提案を行っている。さらに、建築機能を生かした事業として、ホテル・旅館の運営や分譲マンションのリノベーション再販などにも事業領域を広げている。金銭的価値だけでなく、安心感や快適さといった情緒的な価値も含めた資産価値の最大化を追求する同社。事業内容や起業までの軌跡についてお話を伺った前編に続き、本稿では、大和財託株式会社・代表取締役CEO・藤原正明氏に、創業期のエピソードや組織拡大期の経営論、今後の展望についてお話を伺った。走り続けた創業期。ゼロイチを支えた圧倒的ハードワーク〈大和財託大阪本社の執務室のお写真〉大和財託の創業期を支えたのは、特別な才能や一発逆転の戦略ではない。先の見えない状況の中で、毎日同じ強度で働き、考え、発信し続けるという、圧倒的な行動量と継続である。その積み重ねが、やがて訪れた機会を確実に掴むための揺るぎない土台となっていった。藤原代表:起業したとき、最初に心に決めたことは「どこまでやったら撤退するか」でした。三十二歳で起業しましたが、三十五歳までに一定の成果が出なければ、やめると決めていました。妻も子どももいますし、無責任な賭けはできません。だからこそ、起業当初から迷いはありませんでした。「やり切る」以外の選択肢がない。ほぼ毎日、朝八時から夜十二時まで働き続けました。休みは基本的になく、起業してから四年間は、ほぼフルで仕事をしていたと思います。二年目くらいから、正月とゴールデンウィーク、お盆だけは家族の時間として数日休みましたが、それ以外は常に仕事のことを考えていました。その中で、特に力を入れていたのが情報発信です。創業当初からブログを書き続けました。最初は毎日更新で、自分が学んだこと、考えていること、不動産投資や資産形成についての知見を、とにかく言語化して外に出す。それを淡々と続けていました。その結果、起業して一年ほどで書籍を出す機会にも恵まれました。時代的な追い風もあったと思います。金融環境が変わり、不動産市場が動き出していたタイミングでもありました。ただ運が良かったかと聞かれれば確かにそうだと思いますが、同時にこうも感じています。 あのとき、毎日書き、毎日考え、毎日動き続けていなければ、その運は目の前を通り過ぎていた、と。ブログを書き、現場で走り続け、寝る時間を削ってでも考え続けていたからこそ、チャンスが来たときに掴めた。 運というのは、何もしない人のところには落ちてきません。動き続けている人のところに、たまたま転がり込んでくるものだと、今でも思っています。ゼロイチの時期は、華やかな話は何一つありませんでした。 ただ、圧倒的な行動量を、同じ強度で継続すること。その一点に関しては、誰にも負けないつもりでやっていました。同じ判断ができる組織へ。価値観を共有し続ける経営論〈大阪本社ラウンジのお写真。全社会議の際や休憩、社員同士のコミュニケーションの場として活用されている。〉組織が拡大するほど、経営者一人ですべてを把握し、判断することが難しくなる。そのとき必要になるのは、制度やルールの完成度ではなく、「誰が判断しても同じ結論にたどり着けるか」という価値観の共有度である。藤原代表は、判断軸を言葉と行動で示し続けることで、組織そのものに思考の再現性を組み込んできた。藤原代表:私自身の経験で言えば、会社が小さいうちは、組織運営はそれほど難しくありませんでした。私が全員を見て、全員が私を見ている状態ですから、考え方も判断も自然と揃います。ただ、人数が増えてくると、必ず壁にぶつかります。いわゆる五十人、百人の壁です。ここを越えられるかどうかで、会社の未来は大きく変わると思っています。その壁を越えるときに一番大事なのは、「自分と同じ考えで、同じ判断ができる人をどれだけ増やせるか」です。 私がすべてを決め続けることはできません。だからこそ、私の代わりに判断できる人、つまり分身をつくる必要がある。そのためにやってきたことは、とてもシンプルでした。自分の考えを、言葉にして、何度でも伝えること。そして、自分自身がそれを徹底して実践し続けることです。そのうち分かってくれるだろうと期待することは、基本的にありません。 分からない前提で、何度でも同じことを言います。理念や価値観、ビジネスに対する姿勢を、会議でも、日常の会話でも、判断の場面でも繰り返し伝える。役員であっても、管理職であっても例外はありません。私の考えとズレた判断や行動があれば、その場で指摘します。特に重要なのが、一次評価者、つまり現場の管理職です。従業員は、日々接している上司の背中を見ています。その上司の言動が、私の考えや会社の価値観とズレていれば、組織は一気に歪みます。だからこそ、管理職には厳しく向き合いますし、場合によっては入れ替えも含めて判断します。採用についても、創業期から考え方は変わっていません。 能力やスキルはもちろん大切です。ただ、それ以上に重視しているのは、大和財託の価値観を共有できるかどうかです。会社の中で、ビジネスに対する姿勢や判断軸がバラバラだと、同じ方向に進むことはできません。価値観は、組織の中で揃っているべきだと思っています。一方で、人間としては、社長も従業員も対等だと考えています。当社内では、たまたま役割として、私が社長で、指揮系統の上にいるだけです。仕事の上では厳しく言うこともありますが、それは役割の話であって、人として偉いかどうかとは別です。お客さまや取引先に対しても同じです。お客さま起点ではありますが、上下関係ではなく、対等な立場でフェアに価値を提供する。その前提があるからこそ、健全な潤環が生まれると思っています。組織を強くするというのは、人を縛ることではありません。判断の拠り所を揃え、そのうえで一人ひとりが主体的に考え、動ける状態をつくること。その積み重ねが、「同じ判断ができる組織」を形づくっていくのだと考えています。価値の輪を、さらに大きく――お客様ファーストで広げる大和財託の未来大和財託が描く成長のゴールは、上場そのものではない。価値提供の質を高め続け、その価値が潤環しながら社会へと広がっていく輪を、どこまで大きくできるか。その一点に、同社の未来像は集約されている。藤原代表:今後の展望についてよく聞かれるのが、「上場は目指さないんですか?」という質問です。結論から言うと、上場は考えていません。過去に上場を目指して準備していた時期もありましたが、改めて考えた結果、今の大和財託にとっては、上場しない方が合理的だと判断しました。理由はいくつかありますが、一番大きいのは、長期視点で経営判断ができることです。四半期ごとの数字に引っ張られて、本来やるべき投資や改善を我慢する。その結果、価値提供の質が下がってしまうのであれば、それは本末転倒だと思っています。今の時代、企業の知名度や採用力は、必ずしも上場しているかどうかだけで決まるものではありません。発信の仕方や中身次第で、非上場でも十分に勝負できる環境になっています。だからこそ、短期的な評価ではなく、「世の中にとって本当に価値があるか」という基準で意思決定を積み重ねていける環境を、大切にしたいんです。私が目指しているのは、単に会社を大きくすることではありません。 企業努力を重ね、世の中に価値あるものを届け続ける。その結果として、お客様、取引先、従業員、それぞれに潤いが生まれ、その潤環が広がっていく。「大和財託経済圏」をさらに広げていきたいです。不動産や建築、資産形成の分野において、大和財託が提供するサービスの基準が当たり前になる。そうなれば、業界全体の水準も自然と引き上げられるはずです。僕はそれを、社会に対する一つの価値提供だと思っています。これからも、楽な道を選ぶつもりはありません。非上場だからこそできる挑戦を続け、長期的な視点で企業努力を積み重ねる。価値を生み、その価値を潤環させながら、社会に良い影響を与え続ける企業でありたい。それが、僕が描いている大和財託の未来です。インタビュー後記今回は、大和財託株式会社・代表取締役CEOの藤原正明様に取材させていただきました。取材を通して最も強く感じたのは、藤原代表の経営が、戦略や理論以前に「お客さまを起点に考える」という一点で徹底されていることでした。「お客さまが潤った結果として、自分たちも対価をいただく」という順番を崩さない姿勢は、言葉としてはシンプルですが、実際に貫き続けることは決して簡単ではありません。その順番を守り続ける覚悟こそが、大和財託の事業や組織を形づくっているのだと感じました。本インタビューを通じて、経営の本質は常にお客さまを起点に置き続けられるかどうかにあるのだということを、改めて学ばせていただきました。藤原正明/昭和55年生まれ。岩手県出身。岩手大学工学部卒業 。三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発業務に携わり、その後関東圏の不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。平成25年に大和財託株式会社を設立。不動産・建築領域等を活用した資産価値共創事業を東京・大阪をはじめとする全国主要都市圏で展開。【会社概要】会社名大和財託株式会社設立2013年 7月代表者藤原 正明事業内容不動産・建築領域等を活用した資産価値共創事業資産形成に関するプランニング及びコンサルティング不動産・金融に関する市場調査及び情報提供不動産の管理・賃貸及び売買プロパティマネジメント業務及びアセットマネジメント業務宅地造成等不動産事業用地の開発建築物の設計及び工事監理建築工事業・塗装工事業・電気工事業・管工事業その他建築業建物のリフォーム・リノベーションホテル等商業施設及び介護・障がい者福祉施設の企画・運営・管理所在地東京本社 東京都渋谷区渋谷二丁目17番1号 渋谷アクシュ22階サイトURLhttps://yamatozaitaku.com/